第30話
騎士さんこと、クリストファーさんは遅いお昼の食事を済ませて、爽やかに去っていった。レフティさんと一緒に店の前まで見送りをした。遠くに黒い煙と白い煙が見えた。
「ココまで見えるっちゅーこった、こりゃホントに大規模な火災だなあ。あんれまぁ。」
「頑張ってね~~~」
マックドゥの森は貴族街のさらに奥にある森って言ってたもんね。ここから貴族街は結構離れているから、更に先。本当にすごそうだ。
騎士団のある砦はどちらかと言うと、私達の方に近いからこっちまで戻ってきてから砦に戻るって大変そうだ。
「ナカバに休憩行かせるタイミング早めにしておけば良かったかねぇ。せっかく来てくれたんに。裏で寝てたから起こさんで放置したけんど。」
「やっぱりクリストファーさんって、ナカバさんと知り合いですよね?」
「知り合いっちゅーか、あん2人は付きおうとるよ」
「「な、なんだって・・・!?」」
モナの後ろからモナの声と被る人がいた。お客さんの1人だった。この人はどっかで見たことあるけど、常連さんってほど見たことはないな?誰だっけ?
「アイツ騎士団で女性関係噂になったことないぞ」
「あっ騎士団の入り口の所にいた人だ」
「立ち聞きとはよろしくないべ?」
「す、すみません。今日も美味しかったです。俺も砦戻らにゃいかんのでまた来ますね~~」
クリストファーさんの去りかたは爽やかだったのに、がに股全開、だらしなさ全開、本当に騎士なんだろうか?と一瞬でも思ってしまうようなオジさんはシュバッと去っていった。走り方が昭和によくいるタイプとでもいうのか、江戸っ子?あ、両津●吉とかのタイプに似てるかも!走り方が。
クリストファーさんは私達に用事が合って来たけどあの人はわざわざこっちまで食べに来たのかな。
「あれでも子持ちの親だべ」
「レフティさんてば情報通。」
「この年になると喋る事が娯楽になっからなぁ。ナカバ達の事もあの2人以外は大体が気付いとるよ。さっきのはニブイ奴ってだけだべ。」
なるへそ。ナカバさん達のことはいわゆる“公然の秘密”的な事になってしまっているってことか。
「オバン、オジン達の軽口ナメたらいかんべ。子供もそういうトコすごい時あるけんど、結局大人ってーのは下世話な生き物だけんなぁ」
あーね。
「ちょっと早いけども、今日ももう上がっていいべ。あの子の相手して疲れたろぅ?5歳にしちゃ働きすぎだべ。」
「そうなのかなぁ?」
子供の頃の体力を覚えちゃいないけれど、立派な大人だった記憶の方が強いせいなのか、気持ち的にはまだまだ仕事できそうなんだけどなー?
「そっれに子供は遊ぶんも仕事だで。」
おおお!子供特権ですね!それなら話は別だよ!
「えっと!ならね!あの、んふふ!セイリューちゃんとテンクウちゃんと遊んでくる!」
仕事の早上がりって、お給料減っちゃうのになんでか嬉しくなっちゃうんだよねー。なんでだろう。うきうき。
「目をきらきらさせよって。」
「あ、そうだ!テンクウちゃんがね、野良に戻らずにうちの子になりたいんだって。首輪とかえーと、ネームタグ?だっけ?そういうのってどこかに売ってるかなぁ??」
「そーゆーんはナカバが詳しいから後で聞いとくさ。」
「わかった!」
「さってと、そろそろ人も落ちつくし明日の仕込みもやらにゃあな。ナイトフォックスの情報は、やっぱりというか、知らん人ばっかりだなぁ。まぁ、まだ聞き込み1日目だで。根気よぐいがねば。」
レフティさんはモナの走り去る方を見ながらひとりごちた。
「くぁぁあ」
「セイリューちゃん?起きてるー?」
「きゅーん?」
「ワフッ!」
「ポコポン!」
「ぽっぽん!」
「って、うあ!?」
私の後ろから声が!ミニドラみたいな丸々なタヌキ2匹が後ろから付いてきていた。いつの間に。
「驚かさないでよ!びっくりしたなぁ、もうっ」
「ポ、ポコー・・・」
「ぽぽん・・・ぽん・・」
まてまてまてまて、しょんぼりし過ぎ!私は悪者じゃないよ!?
「まさか今日も迎えにきたの?今日ダメって言ったよね?」
「ポ!!ポコォ!!」
「ぽっぽーん・・・」
なに言ってるかわからないけど、え!ダメだったっけ!みたいな反応と、お手数おかけしてすみません、みたいな反応、な、気がする。
「うーん、どうしよ。」
「ぽんぽこ」
「ポッコポッコ」
「ワフンワフン」
「きゅんきゅん」
「ニァァァアア」
「ハッ!ボーッとしてたら今度は猫が増えてる!?」
気がつけば窓から入ってきたのか、その位置にいつもの縞模様の猫がいた。
「タヌキさん、明日必ず声の人の所に行くって約束するから、今日は一緒に遊ばない?」
「ぽ・・・ぽこ?」
「ポコポン?」
なんか2匹でゴニョゴニョやっている。
「ぽこーーー!」
おっ?いいよ!ってことかな?よしよし。
「猫ちゃんも一緒に遊ぼ」
「ニャア」
てなわけで、ここにちっちゃいものクラブ発足!(by、おじゃ●丸)小さきモノ達胸を張れ~雄々しく手を~ふれぇ~足音た~かく声高く、明日をめざ~して~。(以下略)
家から程近い、林の公園みたいに空間の空いた場所がある。ボール遊びとかするにはちょうどいい。そんな場所が合った。テンクウちゃんと散歩にいった時に見つけたんだよね。いい場所を見つけたよ~。
「よぅーし、みんな!まずはアッチの端まで競争だー!」
よーいどん!と走ってみたら、うおっ!?動物はっやい。そりゃそうよね。って、セイリューちゃんやる気無いな!私より遅い。キツネちゃまはマイペーーーース。
「1番はテンクウちゃん!2番は縞々の猫ちゃん。ま、そうなるよねー」
テンクウちゃん鼻高々。他の子も見てたからちゃんと見てなかったんだけど、テンクウちゃんの足は本当にもう心配しなくていいみたいだ。よきよき。
「クゥン・・クゥン・・」
ん?もっと?走りたいのかな?
「よし!じゃぁもう一回ダーーーッシュ!」
「ワンッワンッ!!」
それから3往復しました。も、もうむり。横腹痛くなってきたよー。猫ちゃん達は1往復半で飽きたらしく、最終的に私とテンクウちゃんのみで走る会になってた件。
「きゅーん」
「くぅん・・・」
「ごめん、休んだらなおるから。次なにして遊ぼうか。ん?」
「ぽっこ!」
「くれるの?」
「ぽんぽこ!」
「ありがとう?なんの実だろう??」
って、まん丸なタヌキちゃん達、その実むしゃむしゃ食べてらっしゃる!?!?
「お、おいしいの??」
とか少しビビリーのビビリアン、略してビビリ。ビビっていたら他の子もみんな美味しそうにむしゃむしゃ・・・。ごくりんちょ・・・。
「ん!すっぱあまーーーー!」
サイズは木苺だけど味はスモモっぽい。さっぱり美味しい実!うまっ。走って疲れた身に染み渡る美味しさだ〜。
「にゃー」
「今度はなんだ?」
縞の柄の猫ちゃんに呼ばれてぞろぞろとついて行ってみると、なんとそこには。
「これは、まさか。秘密基地!?」
おままごとセットを発見したのだった。
お読み頂きありがとうございます!
*公然の秘密(意味:秘密にはしているが、広く知れ渡ってしまっている事柄)
次回は19日更新予定です