第286話
帰ってきてヤギのパン達は小屋に返したけど返さないほうが良かったかな。
「手紙?」
手紙と言ったらヤギ。ヤギと言ったら手紙。
♪黒やぎさんからお手紙着いた♪白ヤギさんたら読まずに食べた♪仕方がないのでお手紙書いた♪さっきの手紙のごようじなぁに?♪
だよね。うんうん。
あの手紙って昔はヤギの好きな草や糊で紙を作ったりしてたからついつい食べちゃってたらしくて昔の自然派な紙だからやっちゃってても笑い話になってただけらしくって、現代日本でヤギに紙を与えたら窒息やら病気になったりとかして死ぬ可能性もあるからやめようね。動物虐待反対。
「手紙。というか、招待状ですね」
「え、なんの」
「6ヶ月後の王の生誕祭のパーティの招待状が今日届きました。」
「早すぎないか招待状」
「モナのいた世界ではそうかもしれませんがこちらでは普通ですよ。遠方からもはるばる日程を合わせて来てくれる方もいますからね。パーティ自体もまる3日間、パーティが終わったらすぐに帰る人達は早めに王城に滞在するので、ドレス自体も王都に来てから発注するのは当たり前だから早い人だと3ヶ月以上前から滞在なんてのも多い」
早く来すぎだよね、仕事はいいのか仕事は。貴族とか本当に一般市民の自分からしたら意味わからない部分が多すぎて目が点になる。頭からメエメエ聞こえる気がしてきた。
「でも生誕祭って毎年あるのにそのペースだと毎年は来れないんじゃ」
3ヶ月前から滞在するってことは遠方から来る人ってことでしょ?遠方がどこなんだか知らないけれどこの世界に飛行機はないからそれ以外の文明の利器をどうにかこうにか駆使しても、片道1か月以上かかるから、3ヶ月も滞在してるとみた。往復で2ヶ月+滞在3ヶ月・・・生誕祭のために1年の半分近く地元に居ない貴族ってどうなの。
「まあその辺りはちゃんと調整しているよ。そうでなくても隣国から呼び出すときは節目の時や、両方の国が大きく関わっていた時に限定して呼んだり、地方貴族は3年から5年置きに招待状を送ったりしている。細かい取り決めなどはそれぞれにしてあるから、この早めの招待状の返信を元に招待を組み直したりもする。」
「ほえー」
貴族・大変・デスねー。
「で、本題なのだけれど、私と一緒に出てほしい」
「んぇい??」
変な声出た。
「な、なんですと??」
「モナは私とお付き合いしていますよね?」
「うん。ディオさんの彼女だよ。」
「私はこの街の領主です」
「そうだね」
「ではパーティに一緒に参加してくれますね」
・・・・・・・言いたいことはわかる。わかるが、即決でウンと言えないなにかがある。あっそうだった。
「ダンスとできないし社交辞令な挨拶とか(とくにこの世界のことに関しては絶対的に)不十分だから出たらディオさんに恥をかかせてしまいそう。」
「時間はありますから練習しましょう」
デスよねー。
この街から王都まではそんなに離れていないからドレス作成やマナー講座はこの街にいる間に色々やることになった。山川谷トリオが部屋に呼ばれて、ディオさんが、ドレス職人の手配と、マナー講師の手配と、レストラン貸し切りを手配するように言った。
「レストラン貸し切り?」
「あっ、こういうのはモナの居ない所で行うべきでしたね。すみません。モナに切羽詰まった用事がないようなら、レストランデートをしてみたかったもので。嫌だったら、手配は取り消します。」
「デー・・・・」
理由を聞いてすぐに顔が真っ赤に火照ってしまったので2人してとても気まずくなった。嬉しすぎてどう返事していいのか声にならないとはこういうことだ。
沈黙が続いたけれど、ハッと気付いて見ればこの空気に当てられた山川谷トリオがまだ部屋にいた。3人まで真っ赤に。ごめんよ。ええい!ままよ!
「デート!楽しみです!」
ふんむー!・・・よし。
「はい!」
ディオさんの笑顔が可愛すぎて尊い。いや、男性に可愛いはだめか?私の彼ピッピ可愛い。死語かな?うっさっきの火照りがぶり返してきそうだ。キュン死にしてしまうかもしれない。
しーかたがないので、忘れることにしーた、さっきの手紙のごようじなぁに〜?(byモナ)遠い目。
ディオさんの部屋を退出した。用事思い出したって言い訳は苦しかったかな??
「あっ!そうだよ、すっかり忘れてた」
聞き覚えあると思ったら、レフティって名前、こないだアンドレくんの師匠の名前とか言ってた・・・気がする・・・・?ん??
アンドレくんもまさか敵側の人間?いやいやいや、まさか。横竪さんに顔合わせした時、ディオさんにもアンドレくんにも、さらに弟くんのカカロットくんにも、敵判定なんてなかった。・・・はず?
でもあの女神、普通にウソもつくしなぁ。
でもでもでも・・・・それなら、大したことないなら、アンドレくんからなにか1言あってもいいのでは?今日だって私のスキル確認の場に来てたし話すチャンスはいくらでもあったよね・・・・。
そんなことないって信じたい。
けど、ふと思ってしまったら止まらない。
アンドレくんは信用していい人間なのだろうか・・・・
このあと悩みすぎたモナはモンスター小屋に行って、グレムリンの2匹をもふもふして、サイショウくんをゴワゴワモスモス(ちょっと固めのもふもふ)した。
グレムリンはすぐに逃げられたけどサイショウくんは優しいので付き合ってくれた。良い子。
明日も更新予定です