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第282話

遅くなりました。眠い・・・

タヌキの里なるものを蜘蛛隊赤グループに探してもらってから2日経過。今のところ情報は上がってきていない。私達は館のモンスター小屋の近くの広場に、小屋にいたメンバーを連れてぞろぞろとやってきた。元々この広場は馬車の臨時駐車場だったり、大きな家具を購入した際の搬入用のための庭なのだそう。


今は表の駐車場で事足りてしまうので、あまり利用しないからと、使わせてもらった。マンティコアのヴァルトスが大あくびしている。


館から人が出てきたのがこちらから見えた。プントさん(霊体)にも私のスキルの検証に付き合ってほしかったので、ハシビロコウのミョルニルに呼びに行ってもらっていたはずだけれど、そこの付いてきた人は呼んでない。


アンドレくんがプントさん(霊体)についてきたらしい。


「おはよう姉上。朝食前に運動ですか?」


「ん、まあ似たような所かな」


広場にはみんなが揃っている。居ないのはディオさんとメイドさんや執事さんだ。朝のこの時間はメイドさんや執事さんは忙しい時間なので居ないのは当たり前だけれど、ディオさんはいつもゆっくり目におきるので通常だ。


アンドレくんは落ち着いているけれど、最近急に行動が変わった。ここ2日間、アンドレくんが外に出ない。


出ない?それって館でゆっくりしているだけでは?


のんのん。アンドレくんは毎日毎日師匠さんの所に通っていた。『今日は修行はなし。休日になった』といっている日も、アンドレくんは1日1度お師匠さんに会った上で言っている。


なのにその行動を急に取らなくなった。どうしたんだろう?お師匠さんと喧嘩でもしたのかな?


「姉上?どうしました?」


おっと、考え事をしてしまっていたようだ。


「使えなくなってしまったスキルが、みんなが仲間になったおかげで使えるようになりました。だから、どんなものか試すから、ちょっとの間うるさくなるかもしれないけれどよろしくね。」


「わかった」


いつのまにかアンドレくんの足元にカラスと黒ネコがまとわりついていた。黒くて見えにくいけどどちらも愛嬌があるなぁ。


「まずはもののためしに、“音娘千神(おんこちしん)”」


足元から印刷の機械にスキャンされるように線状の光が頭のてっぺんまでスッと通り過ぎた。


「あ♪」


「あ♪」


「あーーーーーーー♪」


プントさんがボソリと声に魔力が乗っていると呟いていた。そう声に魔力を乗せて、私はこれから歌うのだ。


「紙を重ねて♪指を重ねて♪物語は動き出す♪ギャグの隙間に♪本当の事を祈るみたいに隠して♪


インクが瞳に染みた涙では流れぬもの♪


今を捲って♪命動き出す♪見えない四角の間飛び越えて♪」


いつものスキルとは違って歌った事象(じしょう)がそのまま起きるというものではなく、声が発せられると音波が発生するのか、空気に揺らぎが起き私の立っている足元から波紋が広がるように空気が波打つ。広がった空気は仲間を包んではかき消え、包んではかき消えをくり返し、仲間に力を、活力を、与える。


つまりは、音娘千神(おんこちしん)、私が放つバフのスキルだ。このスキルはバフ以外にも使えるけようだけど、今は次のスキルを発動する。次はそのまま“泥の城”を発動させる。


広場の中心部に沼地が出現する。


「紙を重ねて♪サンハイ!」


泥がひとかたまり浮き上がり、グニョグニョと変化をもたらす。


「指を重ねて♪といやー!」


この国の城ではなく、ディズニーのお城のような城が泥で出来上る


「物語は動き出す♪ゴーレムズお願い!」


ゴーレムズ2体は泥の城の門番のような立ち位置に並ぶ


「ギャグの隙間に♪“風遊び・回転木馬”」


風で出来た回転木馬が城の前に現れる


「本当の事を祈るみたいに隠して♪“蜘蛛糸(オモチャ)踊舞歌(チャチャチャ)”」


回転木馬の、馬だけを操り、城の兵士のような役割にさせゴーレムズのさらに左右に割り振る。


「インクが瞳に染みた涙では流れぬもの♪イャンターリ、来て!」


城の真ん前、ゴーレムズの間、城の入口の辺りにイャンターリに立ってもらう。


「今を捲って♪命動き出す♪見えない四角の間飛び越えて♪」


配置は完了だ。イャンターリは中心に行ったので魔力の流れに気づいたようだ。ワクワクした顔つきになった。


他の周りで見ているモンスターはこのあと起きることの予測はついていないだろうが、1番近くのゴーレムズならイャンターリまでとは言わないけれど、少しは気づくかもしれない。


「モナ!スキルを駆使して面白いことを考えたものだ!我は感謝するぞ!」


イャンターリの肩のヘビ達もニコニコしている。ヴァルトスはその言葉を聞いて私の方に顔を向けている。おい、ちょっとまて?って顔に書いてある。ヴァルトスはゴーレムズより先に何が起こるかに至ったようだ。


広場に向かう前は実は他のスキルを発動しようと思ってたんだけど急に思いついちゃったんだもん。あれ?組み合わせたらいけんじゃない?って。


「見えない自分の殻を飛び越えて♪弱さ飛び越えて〜〜〜♪」


泥の城が中から光りだした。イャンターリが手を挙げるとグッと(くう)を掴み、言った。


「我は王なりけり!!」


泥の城が爆散した。急に。だけれども、イャンターリのタイミングで爆散したので被害は少ないと言える。爆散したのはいらない部分だ。


中から出てきたのは、この世界での希少金属、シデイトーキで出来た城だった。そして爆散した一部はゴーレムズとイャンターリの体につき、それぞれに合った装備をシデイトーキが瞬間的に形づくった。


そうこの一瞬でイャンターリは王の風格を手に入れた。


希少金属の鎧を見に纏い、威厳のある返事。イャンターリは最高のバフをかけてもらった状態になったようだ。計画どおり。


「ターリかっけー」


「ターリおーさまー」


王様ムーヴが発動したらイャンターリは無敵だ!と自分で語っていた。ディエースとウェスペルがやんややんやとはやし立てた。


希少金属の城が立ちゴーレムズも心なしかさっきよりキリッと佇んでいるように見える。


「攻撃を空に放ってみてもいいか!?」


イャンターリは王様なんだから、もうちょっと落ち着いてください。多分敵がいたなら即決で攻撃してもらうけれどもさ。


スズちゃんが私の代わりに良いよーって勝手に答えた。ってちょ、まって!


「全力で放たないで!!」


「わかっておるわーー!はーっはっはっはーーー!」


ドゥンと不思議な音があたりに鳴ると、音娘千神(おんこちしん)と同じく空気が波紋を作った。


攻撃を放った空からは雲が姿をとどめていられなくなるようにして消え去った。ああ、空は今日も青かった。


とか考えてた時もありました。いきなり体にGがゴッとかかった。立っていられないほど強烈な。ごめんみんな、アンドレくんも。これはあれだな、最後の切り札として置いておけば、次の第4波で敵が瞬殺かもしれないね。


それをマンティコアのヴァルトスは呆れたように眺めているのが見えた。うん。次はどのスキルを試そうかな。

モナは思いつくまま、上手く組み合わせたらラッキーぐらいのノリでスキルを実験するのがデフォルトです。


今回モナが歌ったのは星野源さんの「ギャグ」という曲です。


“ギャグの隙間に本当の事を祈るみたいに隠して”の部分はモナのことをいっているような気がしたので、歌っています。モナもなにか親近感があるので好きな曲です。


モナが今回何がしたかったのかというと、使えるようになったスキルの作動確認です。

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