第281話
昔々、タヌキ種とキツネ種は平和協定を結んで手を取り合って生きていた。
ひとつ、タヌキはキツネになにか起これば気付いて助ける。
ひとつ、キツネはタヌキが助けを求めに来たら必ず助ける。
タヌキ種にもキツネ種にもその文言がちょうど良い塩梅で、長年破られることなど無かった。他から見ればタヌキ種のほうが損をしているように見えるのだけれど、タヌキ自体が繁殖が早く機動力・情報収集にたけていた。キツネはタヌキに比べてかなり数が少ない割合となるが、タヌキ種に比べてキツネ種は古来からひと個体単位で魔力量が高く、そして頭が良かった。
うまい具合で重なり合ってはめ込まれていたハズの2つの種のピースは約10年前に崩壊した。
『タヌキはキツネの子供を見殺しにした、情報は持っていたから助けられたハズなのに!』
キツネ種は叫んだ。
『住処を破壊され狩り尽くされそうになった時、キツネは見捨てた!力があるから助けられたハズなのに!』
タヌキ種は叫んだ。
しかしキツネはタヌキが悪いと思っていないものもいた。しかしタヌキはキツネが悪いと思っていないものもいた。それは不幸な出来事の重なり合いだったと思ったものがいた、だからこそ、タヌキ種もキツネ種も争いの中、内部分裂まで起こして、散っていった・・・・。と、言われている。
「言われている?」
3尾のキツネのテュルフィングは話を続けた。
「どんな種族にも短命なものもいるし、長命のものもいる。そして何より、全てが一箇所にだけ集約されている種族などいない。ここでの平和協定というのは、この街の近くに住むタヌキ種とキツネ種だけの話で、他の土地ではまたその土地事に変わってくる。」
「それもそうか。アナタはここ生まれなの?」
「私も2年前にここに住み着いたばかりの新参者に過ぎません。だからこそ、詳しくまでは知らない。タヌキと違って情報収集より自分第1なものなのでね。」
きっぱりと言い切って清々しい。
「ここにいるモナのもとに集まった仲間はここ数年で生まれたか、移り住んで来たもの達ばかりダヨン」
話かけてきたのはヤギのパンのアイゼンくん。
新しい仲間達はみんな、モナから仲間の首輪のこと、女神に騙されている可能性、そして女神についてはモナと共に戦えるモンスターたちにしか話していないことを語っている。
「だからこそ、きな臭い。我らはそれぞれ新天地を求めた者共だ。こうも集まるとなると、やはり誰かしらの意図を感じずにはいられぬであろう」
「イャンターリ、ゴーレムズ、おはよう」
「うむ、善きにはからえ」
「うん」
なににはからえればいいのかわからないから放置しておこう。
「もーみつけたのー?」
「みつかったー?みつかったー?」
「まだみたい」
グレムリンのディエースとウェスペルが少しからかうようにぴょいこぴょいこと質問してきた。イノシシのサイショウくんが返事をした。まだということはつまり。
「蜘蛛隊赤グループが帰ってきてないから、まだ何もわからないよ」
「わからん!わからーん?」
「くもくもくも〜、早く帰ってこーい」
ディエースとウェスペルはいつだって賑やかだ。
「今日の予定はどうするの?今日も仲間増やして頑張るの?」
ラクダのようなウェールがボソボソと口ごもりながら聞いてきた。この2週間、毎日仲間を増やすを1日の目標にしていたけれど、結構なメンバーが集まったと思う。ここいらで、団結力強化したい。何をすればいいのか皆目検討もつかないけれど。
「ううん、今日は別のことをしたいなーと思っているんだ」
「そうなの?」
スズちゃんが真っ先に聞いてきた。
「みんなが協力してくれたおかげで私かなりパワーアップしたみたいだから、出来ることや出来ない事を把握しておきたくて。」
ステータス画面は結局のところ読んでるだけじゃ単なる知識にしかならなくなってしまうから、実技で体に覚えて慣らして、自分のものにしないとね。
「そうそう、そういえば面白いスキルが使えるようになったんだ。みんなで試してみない?」
「ためすーキャッハハハ」
「ためす〜?ケラケラケラ」
「どんな攻撃なんだ?」
「攻撃・・・でいいのかな?」
小屋ではさすがに狭いので、モンスターように体の大きいものも自由にさせてもらえる広場に移動することになった。広場ではマンティコアのヴァルトスが日向ぼっこをしていた。日に当たって気持ちよさそうだ。
ちょっと短いので明日も更新予定です