ブックマーク700人超えありがとうSS。3人のバレンタイン
更新遅くなりました。
色々ありがとうございます。色々・・・(!?!?)
それは10年後のロッテリーの現在から言うと未来であり、モナの過去であるその世界での1日である。
「愛を伝える日?そういう日もあるのですか。」
ディオさんといつもの車椅子散歩をしつつ話題にあがったのは、祝日、休日、イベントデーなどなどについてだった。春夏秋冬色々あって、まあ普通に、春から説明していって最後の冬のイベントの話になった。こういう話題を今更だけれどしてみると、日本人改めては働き過ぎだと実感する。
冬のイベントといえば、クリスマス、お正月、節分、バレンタイン。そんな話をした。まあ、私の覚えている程度の知識だから、大したことはない。
「たしかバレンタインっていう神父様が結婚式を挙げられない人達に結婚式をあげてあげた?からっていうのが元々の発祥だった気がする。世界では、男性から女性に花束とかをプレゼントしたりする日で、私が住んでいた日本では逆に女性から男性にチョコレートを渡しつつ愛を伝える日、って感じでした。」
「なぜチョコレートなのですか?」
「チョコレート会社が頑張ったからだと思います。詳しくは私も知りません。」
「ふふふっ面白いですね」
「そうですか?」
ディオさんのツボにはまったらしい。時々ディオさんのことがわからない。特に笑いのツボがわからない。まあ、笑顔が神がかってイケメンだから眼福で、ご飯3杯いけそうな・・・・ご飯自体この街にほとんどないからパンをかっこむことになるな?うん。忘れよう。
「姉上、お兄様、こちらにいらしたんですね」
声のする方へ向いてみるとアンドレくんがこちらに来ていた。庭が少し、いやかなり、結構広いので、結構なタイムロスがあるけれどお兄ちゃん大好きっ子アンドレくんにかかればあっという間だ。
「楽しそうに何を話していたのですか?」
アンドレくんの視力は2.0以上なのかもしれない。あの距離から楽しそうってわかったのか。今日は修行お休みになったの?とか考えていたらディオさんがアンドレくんに説明してくれた。
「チョコレートを・・・・なるほど」
アンドレくんがチラッチラッと目線をこちらに向けたり外したりとあからさまにソワソワし始めた。鈍感系の主人公じゃあるまいし、さすがに分かる。
「うーん、ディオさんにもアンドレくんにもお世話になっているし感謝の気持ちもあるから是非ともあげたいけど、この街にチョコレートってあるの?」
王都、王城ではたまーに小さめのお菓子のコーティングで使用されたのを食べたことがあったけれど、このロッテリーの街に移動してきてからだいぶ経ったけれどチョコレートらしきものを見た記憶がない。
日本だったら夜中だろうが早朝だろうが、食べたい!と、思い立ったらコンビニに行けば大抵はどうにかなる。ここは異世界。コンビニなんて無い。ましてや、カカオって南国の物だよね。高いよね。ここは単なる王都からちょっと近いだけのなんてこと無い街。
「そ、そういえば・・・・」
アンドレくんも最近チョコレートを見た記憶がないらしくガーンという効果音が見えそうな顔で絶望しつつもどこかに希望を見出そうとうんうん唸っている。
「そうですね。王城と比べると菓子類の物流は天と地ほど差がありますからね。一応チョコレートも取り扱いしているお店は多数あったと思いますが、調べましょうか」
貴族街の高級レストランから取り寄せれば2〜3日でと、職権乱用待ったなししそうだったけど、冗談が上手なんだから〜と、無理やり止めた。大体、バレンタインの話は出したけれど、今の季節は冬でも無ければバレンタインデー自体が無い世界なのだから、チョコレートにこだわる必要性はない。チョコレート戦線は日本ならではだもの。だものだもの。そうだもの。
「坊ちゃま、原料のカカオの粉なら厨房にございますよ」
いつの間に現れたのかプントさん(霊)とスズちゃんだ。プントさんの肩にスズちゃんが乗っている。やけに仲良しだなぁ。スズちゃんの主は私なのになぁ。いけない。嫉妬した所で無益だ。忘れよう。
「本当かプント!?」
「ええ確か、この館の厨房には少量ですが数ヶ月に1度、カカオの粉が入荷されていたはずです。私の生きていた数年前から何も変わっていなければ、厨房にあるかと。」
ということで、3人で厨房に突撃した。突撃!隣のばんごはん!ならぬ、突撃!カカオは厨房にありますか!?です。
厨房コックのおじいちゃんがびっくりしていた。ごめんね、おじいちゃん。そのおじいちゃんコックさんにカカオの粉の場所を聞いて確認したら、あるにはあった。しかし・・・・・
「少ないねぇ」
少ないから量りで計ってもらったら、20グラムあるかないかだった。大さじ・・・大盛り2杯。もしくは大さじ3杯分くらいだろうか?これでチョコレート作ったら、何粒かしか作れないと思う。ちょっと想像よりも少ない。
板チョコだって50グラムが平均で、大きめのやつだと80グラムから100グラム。知っているだろうか。世の中のチョコレートケーキはさらにその倍以上のグラムのチョコレート&ココア(ココアはカカオ原料である。)が使用されているのだよ?チョコレートケーキにチョコレートとココアパウダーとかカカオ成分全部足してみ?ね?スゴイ量でしょ?ね?
そう考えると・・・20より少ないんじゃ・・・うーーーん。
3人でがっかりしているとおじいちゃんコックさんが一昨日の夜のお肉料理の苦みのあるソースに使用したからと、謝ってくれた。が、謝る必要はない。だって私がバレンタインの話なんてしなければ、ここにカカオの粉なんて見に来なかったのだから。私のせいである。
「一昨日の肉料理は美味しかった。が、まさかあれに菓子の材料が入っているなんて全然気づかなかった。美味しかったからまた機会があれば作ってくれ」
アンドレくんがおじいちゃんコックにそう言った。うんうん。ディオさんもあれは美味しかったと絶賛。私も!私も!乗っかった形になったけれど、絶品だった。
言われてみればカカオ入ってたんだなってわかるけれど、甘くないものに入っていたらカカオは結局のところ種だか豆だかそういう類だから、チョコレートに繋がらなくなるのも無理のない話だ。
おじいちゃんコックはニコニコしている。気を良くした直後で申し訳ない気がするんだけれど、このカカオの粉は今から使い切ります。
「ディオさん、アンドレくん、私今からお菓子を手作りしたいので、厨房から出てもらってもいいでしょうか?」
「え?」
「え??」
「はい?」
ディオさん、アンドレくん、おじいちゃんコックの頭の上にはクエスチョンマークが飛んでいる。
「チョコレートはあげれそうにないけど、手作りお菓子ぐらいならこのカカオの粉使ったもので出来なくもないけど・・・・いらない?」
「わかりました、アンドレ出よう。モナ、楽しみに部屋で待っているからね」
「そうですね、お兄様。姉上、期待しています」
おじいちゃんコックさんがえっえっと戸惑ったまま、私とふたりきりにされた。うん、おじいちゃん。ごめんね。
「スズ、オレオ食べたい!」
「それは無理だと思う」
「がーん」
オレオもチョコレートクッキーだったね。私も食べたい。この世界にはないので諦めてください。スズちゃんはまたプントさん(霊)とモンスター達の小屋に行った。最近、この館にいる時はスズちゃんはかなり自由にしている。
さて、混乱しているおじいちゃんコックには本当に悪いけれど、付き合ってもらおう。
うろ覚えだったからおじいちゃんコックと共同で、ボックスクッキーとココアを手作りした。これなら20グラムで事足りた。
さすが領主様の館。小麦粉は当然のこと、良質なバターに砂糖に牛乳もあり生クリームもあり。そんじょそこらのボックスクッキーとココアでは無くなった気がするけれど、気にしない。
1流のおじいちゃんコックに手伝ってもらった時点で、気にしてはいけないのである。気にしたら負けだ。温かいココアにはアメリカンナイズな感じで生クリームと焼きマシュマロを乗せてある。ココア自体をあまり甘くしていないので、多分いい感じだと思う。
2人に手作りの愛を込めて・・・・いや、これかなり恥ずかしいな。クッキーとココアを手押しカートに乗せて部屋に向かっているけど、勢いが溶けてきたから恥ずかしくなってきた。うぁぁぁぁ・・・・。
こういう時はあれだ。チョコレートの面白かったCMを思い出せばきっと心頭滅却できる!
♪愛してる2人の時間を〜おねがい止めて〜愛のおもをすっまるまるいちご〜フリーズドライ♪
♪過ぎ去った恋の思い出を残しておきたい〜消えたおもをすっ角切りバナナ〜フリーズドライ♪
・・・・途中意味わからない歌詞になったけど、記憶がもう曖昧なくらい前のCMだから仕方ないよね。歌詞とか耳でなんとなく覚えたから、適当に口ずさんでただけだから途中おかしいってのは気づいてたけど、おもをってなんだ!?気にするな!である。・・・・うん!冷静になれた気がする!!!(強制)
その後部屋に入るとむせ返るような2人分の花束が私を持っているのだけれど・・・
忘れられない楽しい日になったのは言うまでもない。
ビャッコ「作者が何故か遠い目をしているから、俺様から!次回は17日予定だ!」
フテゥーロ「なんで遠い目してるの〜?」
セイリュー「キュンキューン」
コウチン「考察はいいからそっとしておくのがいいと思うぞ」
CMソングはチロルチョコの「恋のフリーズドライ」という曲です。歌詞が曖昧なのは私自身がうろ覚えだからです。すみません。検索すれば動画くらいは出てくるはず。気になったら見てみてね。