第28話
テンクウちゃんが恐る恐る近づいて来てくれたおかげで、私は落ち着きを取り戻した。もふもふしています。えぁぁぁ、至福。
「わふっわふっ」
「もぎゅっとむぎゅっとモーフモフモフモフ・・・」
「わふん、わふん」
「テンクウちゃんあのね」
「くぅん?」
「逃げないでくれてありがとう。もふもふしたのってテンクウちゃんが初めてだったんだ。モヤモヤが消えたよ」
「わん!」
さて心の充電すんだし戻るか。頭ナデナデ~とかは友人のワンちゃんとかにしたことあってもそれ以上はしなかった。礼儀です。礼儀。私はペットをほとんど飼ったことがなかったから、恐る恐るになってしまう。
「おいしょっと・・・」
「モナちゃん、それ渡したらお水の追加して回ってるスミコット、休憩に呼んどくれ」
「はーい」
逃げ出した第8王子こと、本名アンドーレリユース。略してアンドレはさっきお店に戻って来た。
「おーじ、じゃなくてお坊ちゃま、ヒドイ。置いていくなんて、ヒドイですわ。」
「す、すまん」
リネアさんが別の馬車で到着した時に鉢合わせして捕まって戻って来たのだ。昼の部のお店も開店してそこそこ忙しい。小部屋とかが無い食堂なのでアンドレは予約席として取っておいた店の奥の席に座っていた。
お付きの人が2人も付いている少年に周りの常連客は興味津々だ。私もそっちから覗き見する方に回りたい。
「モナ!こっちだ。こっち座ってくれ!」
「えー。仕事しなきゃ」
見てください。ちょうど15番テーブルの食事を運んでいるのだ。そこそこ重いんだぞ。おいしょっと。
「それ渡したあとでいいから。な!」
な!って。チラッと周りを見るとスミコットさんもナカバさんもイイヨという合図。むしろ出して欲しくなかった。しょーがないなぁー
「お嬢ちゃん、がんばれよ」
「ありがとう」
15番テーブルの人に励まされた。ミルクの時のおじさんだ。おじさんのまゆ毛下がって大変だなぁって同情のような気持ちが見えるよ。ナカバさんはワクワクした顔、スミコットさんはあらあらって顔。うーーーん!?スミコットさんに休憩に行くように言った。
「来たな。座ってくれ」
「なぁに?注文なら私出来ないよ」
「注文はお任せになっている。お・・・俺の相手をしてくれるって話だっただろ?いいからそこに座ってくれ。うん、そうだ。ありがとう」
私が座っただけで嬉しそうだな。どうしてそうなった。私には全くわからない。ドMでも開花させてしまったのだろうか。やばばばばばば。
「何を考えている?」
「なんでもないよ」
ドMだと思ってる。とは言えない。お口チャーーック。ジーーーーーッ。よし、閉めた。
「さっきのをまた話してくれ」
「え?また喧嘩したいの?」
「違う!!えっと、あのだな、そのっオスカルとかアンドレとか言っていただろう。気になってな」
「お話の中のキャラクターのことだよ」
フィクションの物語、作り物のお話だってことを踏まえて、ザックリだけど愛と友情と戦争の話をした。
「そんな話があるのか!作り話なのに凄いな!」
目をきらっきらさせている。
「その本売ってるだろうか。是非ちゃんと読んでみたい」
「あー、私の居たところでも私のお母さん世代が若い時に読んでた本だったからほとんど無いと思うよ。タイトルも忘れちゃったし」
もしかしたら似たような本がこの異世界にあるかもしれないので、絶対無いと言いきれない。タイトルも忘れて無いけど、忘れていることにした。
「残念だ」
「何の話してるベ」
「本の話だよ~」
ミギィさんが料理を持ってきたようだ。って、あれ?
「こ、これは」
アンドレが驚くのも無理はない。これは・・・。すんすんと匂いと見た目で何となくだけどわかる。卵とニンニクとキャベツがたっぷり入った、おかゆだ。プントさんもリネアさんも驚いている。ですよね。
「食べる。食事はする。けんども、“元気になる食べ物”かは別だべ。」
それよりもお米あるのにびっくり。この辺りは小麦粉文化圏だと思っていたから。西洋ポイ建物とかばっかりだし。いやはや、私の主観だけの認識だったけど。
おかゆはまぁ朝食として取るところもあるし、日本だと病人食って感じだよね。
あ、そっか。お米って日本だけのものでもないものね。あるのはふつーか。ピラフとかは日本米よりインディカ米のほうが味がしっかりした美味しいものができるって聞いたことがある。
あと、世界のほうがお米の消費量半端ない。中南米とか。国は山程あるからね。ココは異世界だから当てはまらないか。どうなんだろう、異世界。
色々二転三転考えがコロコロコロコロしているうちにアンドレとミギィさんとで会話が繰り広げられていたようだ。
「こんな食事いつもの食事より味がするわけないだろ!!」
「昨日はちゃんと食べたのけ?」
「食べた・・・。」
「今朝は?」
「食べた」
声ちっさ!
「どちらもあまり食べていません」
プントさんも声ちっさ!また背中丸々し始めてますよ
「胃がびっくりするからこういうもんで食欲を調整するのが下町だで。プントも昔この街に居た時はよく食ってたろ」
「そうなのか?」
「はい」
「高級食材も体にはいいけんど、食べ過ぎは結局毒にしかなんねぇし、それで食欲減らしてたんじゃあ、意味ないベ」
「ごもっともです」
リネアさん頷きすぎでは。
「体調が良くなって食欲が湧いたら、今度はおもっきしエエもん食わしてやっからまずは力をつけるべ。」
アンドレは少し口を尖らせながらスプーンを取った。
「やっぱり味なんてしない」
大粒の涙がぽとり
「でも」
声が震えている
「ウ・・マイ・・」
アンドレの両目からは滝の様に涙が溢れていた。もうそれはワンピ●スのル●ィーとかが流す様なドバッと出る涙だ。うんうん。くえくえ。元気になれよ、少年。あ、王子か。どっちでもいいか。
小さい頃は神様がいて~不思議に夢を叶え~てくれたぁぁ~~~・・・
ミギィさんのやさしさに包まれたなら元気になること間違いないです!尊ぇーーーーーーー!!おっと失敬。いや、でも、体の事を考えてくれる存在が1人増えた事ってとっても嬉しいことだよね。
「それに元気になった頃にはお子様ランチっつーのをモナちゃんがお前さんの為に考えてくれてたから、それが食べれるさね。」
「れれれれれレフティさんっっその手の紙は見せないでえええーー!」
いつの間に来てたの!?は、まあ、良いとして!貴族のお坊ちゃんが来るって言うから暇な時にメモ帳にお子様ランチを書いて提案した。
お子様ランチはな、大人も大好きなんだぞ!だけどレストランとかで大人のみだと頼めない。年齢制限がもうけてあるからね!でもココではTHEお子様な私!
この機を逃さず、ガッツリ提案したのはほとんど自分の為なんだぁぁぁ・・・
「お、俺の為に?」
違うんだ!!でも言えない!
「俺の為か。へへへ。」
違うんだけど言・え・な・い☆(心の吐血☆)
「な?はよ、元気になるべ?」
「ハイッ」
テンクウちゃんの元に逃げ込みたいよ~~、もふもふかもーーんぬ!来ないよね、くっそーぅ。
お読み頂きありがとうございます!更新頻度は皆さんの応援の賜物です。
たまにリネアさんの名前を“リアネ”と間違えることが多くてキャラ名間違えていたら下にある誤字報告機能なり感想での誤字報告なりしていただけると嬉しいです。一応何回も確認してても間違いは出ちゃうものなので・・・めそんぬ・・・。
夏コミ、一般でうろうろ買い物しようと思ってる今日この頃。チケット購入・・。ワクワク。
アンドレ「お子様ランチ。楽しみだ」
モナ「それの為にお米仕入れたらしい。オムライス・・ミギィさんは神か」
アンドレ「神が作った食事ということか!?」
モナ「美味しく無いわけがない!」
ミギィ「作りづらくなるべ。おぢづけ。2人とも。」
モナ「星3つですっっ!」
ミギィ・アンドレ「「??」」