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第269話

if世界のモナとディオ

息を切らせてディオさんの部屋の前に立った。


ノックしようとすると中からメイドさんが出てきた。私が来たことを伝えてくれようとしたけれど、内緒のポーズをしたら、『なるほど』と何に納得してくれたのかわからないけれど来たことを伝えるのをやめてくれた。


こっそり部屋に入るといつもディオさんと会う応接間として使っている場所には誰も居なかった。その隣に執務室として使っている部屋があるがここ数日間使っていなかったのか書類が溜まったままの部屋は窓も開けずに薄暗い状態だったのでスルーした。


もう1つ先の風がよく通るそこに上、半身をフカフカな枕で支えるように体を起こして座った状態のディオさんが窓の外を眺めているのが見えた。


「おや」と普通に執事さんに声をかけられてしまった。ディオさんの身の回りの世話に執事が部屋にいたので、ディオさんに私が来たこともすぐにバレてしまった。


いや、うん。ディオさんの身の回りの世話にいろんな人がひっきりなしに出入りしているの知っていたハズなのに忍び込もうとした私の浅はかさよ。


春風のような優雅な微笑みでニコって!ニコって!ディオさんのその顔が、いつも見ていた笑顔のまんまでホッとした。


ベッドの横の備え付けの椅子に座らせてもらった。


「聞いたんだね」


「思ったよりも顔色が悪くなくて良かったです。毒だなんて、話して欲しかった。館の人達はみんな知っていて、私だけ知らされてなかった。そりゃ私は客人ですけど、ディオさんの、友人、だし・・・知りたかったです」


私はこの年にしてワガママを口から出してしまった。


言えない理由?分かってる。


私の精神面を考慮して、だろう。


言えない理由?分かってる。


客人だし、一応他人だ。毒を盛った人達と繫がりがあるかもしれない。


言えない理由?分かってる。


私も狙われている可能性もある。


とかまあ、考えれば色々出てくるのは必然。


「毒を飲んでしまったのは、私や周りの落ち度であって、君が心配するべきは別の所であるべきだと私は思う」


「私はディオさんを心配しては、いけない、と?」


感情が私を支配する。ディオさんの言葉は優しいからわかる。そういう事を言いたいのではない。だから私のこの返しは、子供のワガママでしかない。


ディオさんに苦笑された。


「君自身を1番に、君の仲間達を2番に。私達はその後だ。君は強大な力を手に入れて、自分の世界に帰るのでしょう」


ディオさんの言葉で私の頭は冴えた。私が口を開く前にディオさんは言葉を続けた。


「今やるべきことは、勢力争いとかの面倒な渦中にある私達のことではなく、次の戦いに備えて力を付け、蓄えなくてはいけないよ。ミナモのように急に亡くなる仲間がいなくなるように君自身を強くしなくては、ね?」


ニコリと笑う目の前の人は、私とほとんど年齢が変わらないはずなのに、人生経験の差があり過ぎて、ディオさんが本当に本当に本当に本当に大人な対応だ。過ぎる。大人な対応過ぎる。


ありがとう。でも、でもね。


「私、強くなります。でもディオさんの隣で心配したいのはそれとはまた別の話です。私は体ばっかり大人になって心は、子供のまま。とくにこの世界の人からしたら、甘い考えを中心に。私のいた世界では、私のまわりでは、平和でした。人間同士のイザコザとか、私の目に見えていない所ではどうだったかわからないけれど、私が知る限りは平和でした。」


口からペラペラと出てくるけど、本当は頭の中は真っ白で、言いたいことなんて纏まってない。


「そっちを基準にすると、ディオさんのその言葉はね、大人な対応なだけでなく、ただ私を拒絶しているようにも聞こえるんです。ここでは一般常識が自分1番でいいのなら、私は私が今したいことをするべきなんです」


私は言いながら混乱している。もうどうにでもなれ。


「私はディオさんの心配がしたい!!です!」


・・・・・ディオさんの顔がこう、ポカーンしている。うぐっ・・・。子供じみてますよね。分かってる。


「きけんだな」


「え?」


「心配されるのは嬉しいけれど、その心配顔がその、可愛くて・・・」


「えっ」


ふたりして顔が同時に真っ赤になった。少しの間だったけれど沈黙の刻が流れた。ディオが口を開こうとしたその時、年のいったメイドが声をかけて部屋に入ってきた。水差しを新しいのに取り替えに来てくれたのと、部屋のタンスに洗濯した着替えなどを仕舞いに来たところだったらしい。


せっかくなので水を1杯もらって口に含んだ。急に緊張してしまってのどが乾いた。ひと口水を飲むとレモンが入っていたから口がさっぱりした。


他になにか御用がありますか?と聞かれたけれど、特になかった。ディオさんも用が出来たら呼ぶからと老メイドさんを帰した。またもや二人きりに。


でもさっきと違って甘酸っぱいのは口の中だけ。真剣な顔をしてディオさんは窓の外を眺めていた。


「ディオさん?」


「君の事が私は、とても好きだよ。でも、恋愛やらをするには、私はいかんせんあまり、いや、かなり、政治面が強くなってしまう。君は君が思っているよりも特殊な立場だ。私も君が思っているよりも、かなり特殊な立場だ。それこそ、パーティに行って毒を盛られるのが日常となるくらい」


「・・・」


「君を守ると、言い切れない。小説の王子様のような勇気も無ければ、ドラゴンを切り裂く剣もない。しかも、足も動かない。これに政治面までついてくるだなんて、ヒドイ男だろう。」


それは見ればわかる。言われなくても、わかる。私は私。ディオさんは男としては価値がないと言いたいんだろう。


「私、漫画とか小説とか好きで色々読んでたつもりです。」


「?」


頭の中はぐるぐるとしている。伝わるだろうか。


「貴族って家同士での結婚をするのが常識だとか、恋も愛無しで子供をつくるとかは、普通のこと。でもそういうことって、中世のファンタジーの中だけじゃなくったって、日本にも昔からそういう話はあったって、知っています。私が生まれるもっともっともっと前の話ですけど、私の生まれた場所にも、どこにも、どこにでも、本来あった風習も、単に時代が変わって、風習も変わっていっただけなんだって」


まだだまだいい足りない。私の言葉はたどたどしい。そんなの知ってる。


「ディオさんは私のことを政治の道具として、本当は使いたかったら、使えばいいと思います」


私のセリフを聞いてディオさんはギョッとしたが話を続ける。


「愛がなくても結婚はできます。恋をしなくても子供はできます。もし何もなくても、私はディオさんのその隣にいたい。それではダメですか。」


涙が溢れてきた。やはり私は子供じみていていけない。


「それに、ほら、私はいつかはこの世界からいなくなる女です。少しだけのあいだでも、私は。」


いつの間にこんなにも、彼の人が好きだったんだろうかと、私自身もわかっていなかったけれど、濡れるようなキスは爽やかな風が乾かしていった。


インフルにかかってたので年末年始どこもいけませんでした。ちくしょう。39度でもある意味元気でした。私は子供か!?ぐらいに元気でした。治りかけぐらいのほうが具合悪かった。






モナ「ドンマイ!」

テンクウ「どんまい!」

ビャッコ「俺様を出さないからだと思うぞ!」




ちょっとの間、更新日はまたも不定期予定です。更新したときが更新どき。ではまた次回



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