第264話
if世界のお話
大人モナ
野犬だったグロー
イノシシのサイショウ
守護霊スズちゃん
18歳アンドレくん
26歳ディオさん
◆◆◆
「お兄様。何かおかしくありませんか?」
「何かとは? 」
「お兄様の足の件といいモナがテイマーについて教えられていたことを忘れてしまっていた件も、何か策略的なものを感じます」
「足の件は分からなくもないけれどモナさんのテイマーの首輪の件については、そこまでの事ではないのでは?色々なことを1度に詰め込むと物事など忘れてしまうことなど容易い」
「・・それもそうですが、俺は懸念しています。王城ですよ?・・・・お兄様は長いこと離れてる時間が多かったでしょうし、今回お戻りになられた時は何事もなかったのでお忘れかと存じますが『やったのにやっていない』などの噂が流れるのは日常茶飯事ですし “当人に情報を渡さないこと”や“誤った情報をあえて覚えさせる”という情報操作をするのがあの王城でありあの場所に住む人達の日常です」
「そうだな。そうだった。すっかり忘れていたよ。すまない」
(お兄様もそちらの方に意識が向かないということはお兄様も変になってしまっているのかもしれない。何か・・・何かはわからないが・・・注意しなくては)
◆◆◆
「ミナモ・・・ごめん・・・」
ミナモは誰よりも感受性が高かった。イノシシのサイショウもグローも新しく首輪を付けた子達も、ウサギのミナモと比べると私の精神から感じるものは少なそうで、本当に良かったというべきか、どうこの子達を見ればいいのか戸惑っていた。
感受性が薄いということはテイマーとしての繫がり自体も薄い。つまり、女神の仕事をこなすのであれば、本来なら仲間との感受性を強くしていかなければいけない。
しかし、私が何かしらの傷を受けたり、今回のように精神的にショックを受けた際に、いち早く症状が出るのが濃い繋がりをもつテイミングされたモンスターということになる。
どうしようもない。自分の不甲斐なさに腹が立つ。
どこだって害獣・害虫駆除とかやっている。それが日本だと動物や虫なだけで、異世界だからモンスターになっているだけだ。モンスターは魔法が使える。それもあるから捕まえた時に保険をかけるべきなのも理屈としては当然のことだ。考えてしまえば、納得の行く部分も多いにあるのだ。
しかし私の考えは、ファンタジーの世界を見たり読んだりして、ファンタジー脳とでもいうのか、この世界もそういう、幸せしかない場所だと勘違いしていた。ここは異世界だけれど、“異”世界なだけで、日本と変わらず現実なのだ。
ゲームでもアニメでもない。命は有限で、変えなど無いのに。そしてその首輪は特殊な首輪だと聞いていたハズなのに。楽観視していいものではなかったのに。
「モナ」
「・・・サイショウくん、サイキョウさんの所に帰せなくてごめんね」
イノシシのサイショウは首輪を付けた事により、神の使いの上位種である血筋の力の大半が使えない状態になってしまっていたらしい。
「いい、自分で決めた」
とっても小さい体のサイショウくんはこのことについてはもう諦めがついているそう。
「モナちゃん、ごめんね、スズ、ね、知ってると思ってたの、だから、その」
スズちゃんは私が落ち込んでからずっと謝ってくれている。スズちゃんは悪くない、けれど、スズちゃんのせいに全てを押し付けてしまいたい私がいて、せっかく謝ってくれているのに口を開いたら今にもあられもない暴言を撒き散らしてしまいそうで、喉の奥がぐっとなる。
涙と嗚咽をこらえて我慢をして、むりくり声を出した。
「いいから、もう」
毛布を顔まで被って寝た。もう何も考えたくない。そんな日だってある。
「なあ、そのままでいいから、聞いてくれないか?」
グローは布団を被ったモナに語りかけたが返事はない。
「なんの話?」
グローがいった言葉に1番に反応したのはスズちゃんだ。
「あの人間達からどういう説明受けたんだか知らないけれど、この街が最初に変わってしまった時を俺は知ってる。でも首輪のことも知らされてないんじゃ、俺が知っていることは何ひとつ知らない可能性がある。俺はお前達人間が忘れていないと思って行動している奴らばかりなんだ。」
「それってかなり昔のことなの?」
サイショウがグローに問いかけた。
「人間で言うところの10年より前の話だ。」
「俺、生まれたのこの5年ぐらいなんだ。俺も知らないから知りたい。サイキョウ様はそういう話はあんまりしてくれないんだ。」
「スズも聞きたい。スズはモナちゃんと一心同体だから。」
「そうか」
「うん」
聞こえてはいた。布団は被ったまま耳をそばだてた。
「今から10年以上前。前の前の領主だった時。テイマーがこの街で全盛期だった時、起こった事件。人間にも事件として残ったって聞いたけれど、俺達モンスターにとっても大事件だった」
このロッテリーの街は人で溢れかえっていた。今ではそんな面影もないくらい寂びれている一般居住区と呼ばれる場所も、商店街と呼ばれる場所も、あの中央にある大きな公園も、いつでもお祭りのようなぐらい毎日毎日人だかりが耐えなかった。
この街がテイマーの聖地と呼ばれていた頃、俺もテイマーに沢山狙われていた。モンスターを見つければすぐに戦闘。それがその時の普通だった。でもみんなこの街からあまり離れなかった。モンスターの好きな食べ物や、草木が生え、ここに来るだけでモンスターは生きるのに困らなくなったから。
唯一の懸念は人間に捕まるか、逃げるか。それの選択を自分ですることだけだった。多くのモンスターは人間と友達になると言って、手を取り合った。
しかしなんでも増え過ぎは良くない。バッタだって集まれば辺りを食い散らかすモンスターのようになることもあるし、モンスターが集まり過ぎればスタンピードというのが起こるときたもんだ。
テイマーは増えすぎた。増えて増えて増えて増えて増えて増えて増えて増えて・・・・。
テイマーは優しさだけでは食べていけなくなった。テイマーが増えすぎた弊害がそこ各地で起き始めたのだ。強そうなモンスターを持つものが見た目だけで優遇されることも多くあった。なぜなら、一般市民はモンスターの強さなど知らない人の方が多かったからだ。
モンスターが友達?そんなことじゃ食べていけない。
モンスターが沢山湧いてくる、それなら、その中から珍しいものだけテイミングしよう。
とにかくモンスターを見たらとにかく捕まえてテイミングして、珍しい魔法が使えたりするやつ以外は瀕死だろうがテイミングを解除して野に捨てた。
珍しくて、大きくて、強そうで、自分に得のありそうなのを仲間にしたいから、他は切って捨てる。それがテイマーの常識になっていった。
テイマー達の“黄金時代”はテイマー達の“恐慌時代”になった。
テイマーが増えすぎた代償は全て、モンスターの血の多さが物語っていた。
俺は逃げようとした。でも街にはもう逃場なんてなかった。足音を立てようものなら、彼らの糧になるしかなかった。
「どうやって助かったの?」
「おばちゃんって呼ばれてた女性と、びんぞこメガネっていう物をかけた男性、あ、がくしゃせんせーって呼ばれてたな。そいつと、その2人がな、この状況を作り出したこの街の前の前の領主をとっちめたらしい。」
「らしい?」
「だって俺その頃まだ子供だったんだぜ。全部をこの目で見る度胸なんて備わってなかったよ。今もし、そんな大層ことが起きたらすぐに逃げ出すさ。首がもげてもな。」
「もげるのはヨシて」
「んで、その後全てのテイマーは職を強制的に辞めさせられた。この街のモンスターはテイマーによって狂暴化させれていたからほとんどが粛清させられた。テイマーも罪が重いものはもちろん粛清された。だからこの街は1度テイマーの街としては完全に終わった。」
「なるほど、つまりその時に人間は言ったんだね」
サイキョウは勘が良く納得した声を上げた
「ああ、俺達に誓った。誓ったはずなんだよ。だから人間達はアレを忘れていないと俺達は思って行動している。『もうモンスターに酷いことはしない、誓う。人間とモンスターの不文律を作り守ろう』そんなのもう守られてすらいない。だから俺等はこの街を襲うんだ」
「どういうことなの」
私は気づけば布団から這い出して腫れた目も関係なくグローくんを見つめていた。
師匠以外にももう一人おばちゃんっているのをお忘れかな!?
そうレフティの相方で、ネズミ達の仲間になっちゃっててユーグリッドどっかにやっちゃったスゲェ元旦那の元妻であり、ともだち食堂の料理長こと、ミギィさーーーん!
モナ「何この解説」
アンドレ「知らん。しかし、悪くないな、俺も何かそういう出てくる時のセリフをば・・・」
ディオ「本篇が暗いからっていう作者さんの叫びだってこの紙に書いてあったよ」
モナ「本篇にミギィさんの名前を濁したのにオマケで叫ぶとは・・・隠す意味って」
アンドレ「ないな」
ディオ「だねぇ」
次回は明後日の予定です