第260話
if世界ツーのディオさんとアンドレのみの回。
「おはようアンドレ」
「おはようございますお兄様」
ディオは目が冴えて食堂に来ていた。お茶を飲んでいたら、アンドレもやってきた。アンドレも気になって起きてきたらしい。
「モナはもう公園に行ったんだろうね」
「そうですね」
「・・・そう言えばあまり聞いてなかったけれど、アンドレの師匠のレフティさんは、いつも何を教えてくれるんだい?」
「師匠はなんでも聞いたら答えてくれます。俺といつも一緒にいる、カラスと黒猫の接し方も。この街がテイマーの街だった時の名残も。子供の頃は庶民的なお金の使い方も教わりましたし、民達しか知らない伝説の類の話なども」
「王家にも伝わっていないということ?」
「はい。師匠に聞いて初めて知りました」
「どういう話なんだい?」
「ええと印象に残っているのは『三姉妹の伝説』です。――――――――――闇の力を持った長女と何も力を持っていたなかった次女と聖なる力を持った三女は、ある時、ひとりの旅人に出会ってから喧嘩をするようになったそうです。
特に闇の長女は聖なる三女と波長が合わず、殺し合いにまで発展しそうになりましたが、次女が2人から全てを奪って逃げ出したのです。
次女はなんの力も持っていませんでしたが、旅人からもらった特別なもので2人から力を奪うことに成功しました。しかし次女はその奪った力を自分の為に使えないかと、特別なものを毎日見つめては、見えない所に隠して、長女と三女に居場所がバレないように隠れて生きたそうです。
しかしある時、間違えてその特別なものを壊してしまいました。中に入っていた闇の力も聖なる力も、そこから溢れて2人の元へ戻っていってしまいました。
力を無くしていた2人は力を無くしていた間に、力のある時とは生活が一変していました。
しかし力は返ってきたのです。
聖なる力を持っていた三女は特別なものを使って三女を困らせた次女をとんと恨んでいたものですから、三女は次女の元へ向かいました。
闇の力を持っていた長女は特別なものを使ってもらって次女に感謝をしていましたから、力が返ってきてしまって困惑してしまいました。長女は力が無くなっていた今が1番幸せだったのです。力をもう一度特別なもので封印してもらいに次女の元へ向かいました。」
「3人はどうして旅人にあっただけで喧嘩をしはじめたんだい?」
「あ、すみません。そこを飛ばしていましたね。旅人は、3人が思う見た目もとても良い男で、話も上手く、あっという間に3人の心を掴んだそうです。」
「イケメンとかハンサムだったってことかな」
「いえ、お兄様のほうが旅人よりもハンサムでイケメンです!」
「ぶっ・・・アンドレ、真顔で言わないで。」
「本気です!(キリッ)」
「あ、うん。わかったよ。で、どうなったの?3人とも揃ってとうとうスプラッタ展開は、嫌だよ?」
「伝説ですからそんな血みどろ展開はないです。ええと、――――――――長女が遅れてやってくると三女は次女と喧嘩をしている所に遭遇したのですが、長女が2人の喧嘩を止めようと久しぶりに闇の力を使おうとして使うと、今までの制御の方法を忘れてしまっていて、力が暴走してしまいます。
恨みつらみを吐いていた三女に闇の力が取り巻いて、三女は聖なる力をめいいっぱい対抗のために出しました。すると闇の力と聖なる力が渦巻いて、天に登り一匹のドラゴンを生み出したのです」
「ドラゴン・・・」
「するとドラゴンは三姉妹のいた場所に業火を放ちました。三姉妹は業火を放たれたにもかかわらず生きていました。
あたりは焼け野原になり、焦土と化していたのにもかかかわらず、三姉妹は生きていたのです。
三姉妹の行動によって生まれたドラゴンは三姉妹に危害を加えることはできなかったのです。
長女は力もドラゴンもいらないと言いました。三女は不幸になったのでそのツケをそのドラゴンで支払ってもらいたいと言いました。次女はなんの力も持っていませんでしたから、2人の言う通りにすることにしました。
ドラゴンは三姉妹をどうにも出来ないと悟ると三姉妹に言われた通りに三女に付いていくことにしました。しかし三女はドラゴンを連れ帰ってしまったことで、三女が住んでいた人々に魔女だと恐れられてしまうことになりました。
三女が弱るとドラゴンを生み出した聖なる力も弱くなりました。するとドラゴンは闇の力に染まり、よく暴れるようになりました。
三女は仕方なく長女を頼りました。闇の力をドラゴンに制御させようと教えてもらいに行ったのです。
しかし長女は力の使い方を忘れてしまっていました。
ドラゴンは苦しみました。苦しんで苦しんで、ある時三女はドラゴンを自分の子供のように思っていたことに気づいてしまいました。
三女は次女が壊してしまった特別なものでドラゴンの力を吸収出来ないかと次女を訪ねました。次女を訪ねると旅人がそこにいました。次女はいません。
旅人は次女を『常世夜の闇』へ連れて行ってしまっていました。いわゆる、あの世のことです。三女と長女の力を奪った特別なものは次女の命と引き換えに作った特別なものでした。なのでもう壊れてしまったので、次女ももうこの世にとどまれなくなったのです。
三女が喧嘩を売った日は最後に次女に会える日だったのです。
次女は三女も長女も力を過信しすぎるきらいがあったのでと、旅人に依頼していたのです。
三女は後悔しました。恨んでいた次女が三女と長女に相談していれば、もっと違う未来があったのに。しかし当時長女も三女もお互いに聞く耳を持っていたとは言えませんでした。
して、ドラゴンを助けたいのか?と三女は旅人に聞かれました。ドラゴンの力は元を辿れば長女と三女の力なので、封印すると二度と三女の欲していた聖なる力はドラゴンを通じて元には戻せなくなります。長女はもう要らないと思っているので、いいでしょうが、三女は困ってしまいます。
しかしドラゴンは苦しそうにしています。近くにいるからこそ、三女の力とドラゴンの力の聖なる力は共に引っ張り合っているので、ずっと不安定なのです。
三女は力を封印してもらいました。ドラゴンは力がなくなり、三女とのつながりも消え、結局天に羽ばたいて行ってしまいました。」
「あらま・・・」
「三女は何も得られませんでしたが、旅人から最後に1つ贈り物をされました。それはタネでした。そのタネを植えると、草木が生え、花は咲き乱れ、木々は勢いよく伸び、そこの土地には動物があふれるようになりました。そこは森になったのです。
この街の森はそうして生まれたのです」
「えっ?」
「マックードゥーイーナという三女の名前を略してマックドゥの森と言われたこの街の森の伝説だそうです。」
「し、知らなかった・・・領主なのに」
「憂うお兄様もかっこいいです」
「アンドレは目のクマをそろそろ改善しようね」
「はい。まあ、そのうち」
「・・・・この街は色々なことがあり過ぎて不思議な街だよね。」
「人口はかなり減っていますが、一般市民よりも貴族街が廃れないのも不思議です」
「モンスターも多いし、さっきの伝説のように私達の知らない重大な秘密でもまだまだありそうで怖いよ」
モナは・・・大丈夫だろうか
(ifじゃない方の)テンクウ「伝説とかって人のいいように、ねじくれたりして伝わったりするよね。つまり今回の話は半分ぐらい嘘で出来ています。だって伝説だもん!」
(ifじゃない方の)モナ「しょんな!?っていうか、この手前のカッコのイフじゃない方のってなに!?」
(ifじゃない方の)テンクウ「だってほら、ボクif世界だとやさぐれてるからさー」
(ifじゃない方の)モナ「わかるけど他に言い方なかったんかい・・・」
次回は明後日の予定です!