第251話
if世界ツー11
ロッテリーの街に到着してディオさんのいる領主の館に落ち着いたその日にまさかタイサイさんから、横竪さんが目覚めたと聞かされると思わなかった。
だから私はタイサイさんの指定したマックドゥの森自体もわからなかったし、本当に眠りから覚めたら土地神だから土地に引き寄せられて来たのだとビックリしていた。嘘だとは思ってはいなかったけど、イマイチぴんと来ていなかった。神様のそれってどういう仕組みなんだろう。
タイサイさんがいつもと違って“神の使い”に見えた。タイサイさんは神の使いだってことはわかっていたけど、今夜のタイサイさんは神秘的さを兼ね備えたというか、とにかく、いつもと雰囲気が違った。
「明朝と伝えさせたはずだと思ったのだが」
「嫌な予感がしたので・・・」
部屋にイノシシのサイキョウさんの子とウサギのミナモを置いて、私とタイサイさんだけで夜中の森に訪問していた。
横竪さんは少し気だるげな雰囲気があるが、私の訪問に嬉しそうだった。
「すまない、まだ少し眠気があって。くぁ・・・」
万全じゃない時に来てしまった私が悪い。
「ごめんなさい。」
心臓が何故かバクバク鳴っている。
「いや、いい。お前もここに来てまだ慣れていないだろう?大事ないか?」
よくわからないこの心臓の早鐘は急いでここに来たからだと、言うことにしたい。
「タイサイさんに無理を言って連れてきてもらってしまって・・・本当に・・」
「異世界人だなぁ。なにか感じているんだろう?その違和感や焦燥感は、この森に入ってから強くなったか?」
気づけば私は汗がビッショリと体を伝っていた。胃が悪くなった時に出るような、アブラ汗だ。馬車酔いよりも具合が悪い。
「うっ・・・」
「テイマーになってくれたそうだな」
「まだまだですけど」
「私の為にありがとう」
「・・・いいえ」
「第一波が来る。明日には」
・・・・・?
気持ち悪さも相まって言葉が呑み込めなかった。
「えっ・・・と・・・」
「こんなに早く来るとは思わなかった。この森にはもう、荒くれたモンスターがそこかしこに潜伏しているだろう。その怒り、苛立ち、悲しみ。蠱毒で生まれたその最後の毒のようにこの森に今負の感情が充満してしまっている。今モナが気持ち悪くなっているのは、ソレに当てられているんだ。」
そうなのか。つまり、私はまだ魔法やスキルの使い方を中途半端に覚えた状態で、横竪さんに頼まれた事をやらねばいけない事になる。
「・・・・・・無理では?」
もう、色々と。無理では。こんなに気持ち悪くなった状態が戦いのときに付くのなら、不利すぎる。
「今は帰って眠れ。私も眠い。また明朝会いたい。いいか?」
「はい」
帰路もタイサイさんに送ってもらった。いろんな話を横竪さんとしたし、だからこそ、なにか手助け出来るかもと多少希望があった。
こんなに悪意に満ち満ちた空気があっただろうか。ここまでのものは27年間生きてきて初体験だ。王城の地獄が可愛らしい。・・・ああ、安請け合いし過ぎだな。
いつもそうだ。子供の頃から変わらない。
いつも失敗する。
・・・・・違う違うダメだダメだ。
ハッ・・・!森から出たら、変な気分が全くなくなった。
・・・朝にまた入らなきゃいけないんだよね?・・・・ううう・・・今夜早足で来なきゃよかったかも
いやいやいや!来るって言うことが早く聞けたから対策を練れる時間が増えたんだ!良かったということにしよう!そうしよう。
色々と考え事をしながら領主の館にこっそりもどったのだけれど、夜間警備がいたので多分2人には情報が行ってしまっただろう。私本当に、立ち回りが下手くそである。くっコロセ・・・。
私は、最悪の事態についてを頭によぎらないように、それにばかり頭を支配されないようにと、心の底ではそう思いながら、手前はフザけた思考にして紛らわせていた。