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第250話

if世界パートツー10話

「ワン・ツー・スリー、ワン・ツー・スリー」


「そうそう、上手だ」


「いやぁ、ダンスは苦手で・・・うわ、ととと、す、すみません。」


「初めてなら仕方ない」


私とディオさんはダンスを踊っていた。基本的な踊りをと言われるがままにディオさんの手を取ったので、ワルツなのかな?チャチャチャ繋がりでチャチャチャってダンスではないことは確かだ。だってチャチャチャは腰をこう、くねっくねっと踊るラテン系だったから、こんな優雅に踊る系ではなかった・・・はず。うろ覚え。うぅん?多分これはワルツだ。


「ふふっ・・スカートがフワッと舞って、お姫様になった気分」


ディオさんがお姫様にしてくれる魔法でもかけてくれている・・・なーんてことはない。そう思いたくなるほど、ディオさんの踊りは素晴らしかった。


少し踊ったあと、私達はダンス部屋の端にあるソファで休憩した。


「モナ、ありがとう。解除してくれていいよ。魔力を使い続けるのはツラいだろう?」


うっ・・・実をいうと正直ツライというか疲れている。でも、ディオさんが楽しそうだったから解除したくない。


「あまり無理をすると倒れてしまいかねない。大丈夫。元に戻るだけだ」


「・・・・すみません」


オモチャのチャチャチャのスキルをディオさんにかけていたのを解除した。うっ・・・魔力放出がなくなったから、集中力が切れて今にも倒れたい。ううん、ダメだダメだ。


「いいや、私こそ、こんなに気を使ってもらってしまって申し訳ない。ありがとう」


私はアンドレくんと旅をしている最中に、魔力の質を上げるために勉強をしたりしていた。もちろん、馬車酔いしてないわずかな時などで、だ。


魔力が上がったのか急に私の目の前にゲームの通知みたいなものがポーーンと出てきた。新しいスキルが開花したらしく、それを開くとスキルや魔法を自分専用の独自の物が作成出来るという、特殊なスキルだった。


驚いてアンドレくんに報告とともに画面を見せようとしたが、スキル作成画面も、私のプロフィールなステータス画面も、私以外、誰一人として見ることは出来なかった。


それでもアンドレくんは信じてくれたうえで、提案してきたのだ。


『お兄様の足が治る、もしくは、足が動かせるスキルか魔法を開発できないか』


私は張り切った。ディオさんはこの世界で、横竪(オウジュ)さんとタイサイさんの次にお世話になっている。いや、もしかするとディオさんにのほうがお世話になっているかもしれない。


色々こねくり回して、ようやく出来たのが“オモチャのチャチャチャ”だ。別名、蜘蛛糸(オモチャ)踊舞歌(チャチャチャ)。クモ糸のとうまうた、と、書いてオモチャのチャチャチャ、だ。


♪おもちゃは箱を飛び出して、踊るおもちゃのチャチャチャ。鉛の兵隊トテチテタ、ラッパ鳴らしてコンバンワ、フランス人形ステキでしょ。華のドレスでチャチャチャ。♪


つまり、私のスキルはディオさんの足を治したわけではなく、一時的にそれっぽい動きが出来るようになるという、擬似筋肉を外側に貼り付けるものだ。


最近は介助用ロボットとか色々とロボット開発が日本でも進んでいるらしいが、それの魔法・スキル版とでも言うべきか、まあ、つまり、体にロボットまとわりつかせている、みたいなことをしたのである。


「アンドレにもダンスを見てほしかったのだけれど、最初に少し見たらすぐに部屋を出ていってしまって、その後帰ってこないね・・・」


ディオさんがそう呟くように語った。いや、アンドレくんに動くディオさんを見続けさせるのは無理だと思う。


アンドレくん、多分、今頃号泣してると思う。


ディオさんが足が動かせるのを確認した直後に大粒の涙を流していたのを私は見てしまっていたんだもん。ディオさん自身は足に注目していて気づいてなかったけれど、アンドレくんはその泣き顔を見られたくなかったのか、すぐに部屋を出ていってしまった。


スキルを作成した甲斐があったというものだよ。胸がいっぱい。


「ディオさん。このスキルディオさんの為だけに作ったので、使いたい時はいつでも言ってください。どんどん発動していきましょう!それに沢山使えば、魔力もまた増えたり伸びたりして、スキルのさらなる飛躍になるやもしれませんし!」


「・・・・・負担じゃないのかい?」


「いいえ」


「ありがとう」


不意にディオさんの手が私の手に重なる。さっきまでダンスをしてたからか、手が熱い。


ディオさんが私に微笑みかけると鼓動が早くなる。耳に心臓くっつけてしまったんではないかというくらい、バクバクとうるさい。


少し見つめあった・・・気がしたけど、私達は、見つめる事が恥ずかしくなって、2人共目をそらした。


手はもう離したけれど、まだ触れられた部分に熱がこもっている気がした。気のせいだ。うん。


そう、単に感謝を伝えたかっただけに違いない。ディオさんは腰を元奥さんに刺されてからそこまで時間が経っていない。


結婚や恋愛の時期じゃない。


きっとそうだ。


私達のその姿をアンドレくんにも見られていたとは知らずに、私もディオさんも何もなかったかのように、他愛ない会話を繰り広げた。


いつも通りに戻った。これでいい。うん。










その夜、領主の館にも、フクロウのタイサイさんがやって来て、こう告げた


「明朝、マックドゥの森へ。彼女が目覚め、この土地に戻り、お前を待っている」


わかっていたことだけれど、ドキリと胸が鳴る。何か嫌な予感がした。


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