第244話
モナのif世界パートツー、4話目
ミナモ以外をテイミングはこの日出来なかった。時間がある程度かかって疲れて少し休んでいたらあっという間に時間が経過していたのは大人としては通常運転な話である。
あとは部屋に帰るだけということでフクロウのタイサイに連れられて、モナが連れられてきた出没地点に舞い戻ってきていた。彼女はまだ寝ている。
いるんだか居ないんだが分かりづらいけれど、女神横竪はその場の空気に溶け込むように、まるでここの精霊ではないかと思うような透き通った神秘さを兼ね備えつつ、眠っていた。
「初めてテイミングしたよー。おーい」
「起きたら伝えておいてやる。」
「ありがとう」
タイサイさんの見立てでは数日もすれば起きて、その時に元の場所に飛ばされる。運命なのかなんなのか、横竪さんの飛ぶ場所もロッテリーだ。
「あの王子について行くんだろう。彼女も後から追いかける。すぐに会えるさ。」
「そうだね。」
不思議な縁だ。モナがそこに行くことが、モナが出会うことが、まるで定められていたのかのように、そこへ向かうべくして向かう。誰かの手のひらで遊ばれているような気さえしてくる。
聞こえていないはずの横竪に挨拶をしてからその場を離れた。
ロッテリーというディオさんが領主を務める街に、ディオさんが帰路の馬車に乗る直前に、テイマーとして足を踏み出したことを伝えると、ディオさんは複雑な顔をしていたが比較的褒めてくれた。
複雑な顔をしていたから嬉しいというより褒めることに従事していたように見えた。日本人は童顔だけれども、一応ディオさんは私とほぼ同い年・・・ほぼ。だから、気を使ってくれたのかもしれない。
テイマーのルールを見る限り子供でも可能だと私は思ったからだ。きっと子供が出来るようなことで喜ぶなんてと言えなかったんだろう。
山川谷トリオも馬車に慌てて乗っているのを横目で見て、余計にそう思った。異世界に来てたった1週間だからもしかしたらあの子達よりも庇護対象だと思われていても仕方がない。
挨拶もそこそこにディオさんは出発した。
庇護対象だからなのか私の後ろにアンドレくんがいらっしゃいます。後ろに。
私が挨拶する前に散々「お兄様!追いかけますね!」ってディオさんと抱擁かわしてたじゃぁぁん。私は普通に会話ちょこっとしただけだよ?抱擁とかもしてないし、握手だってしてないし?ね?ね?あのさ、なんで後ろから睨まれてる気配がするんでしょうか。
うぎぎぎぎ・・・後ろを振り返ってみると・・・ジトーー・・・っと・・・・。睨まれてる理由が全然わからない。もやもやしちゃうよ?モヤモヤさ●ぁ~ずしちゃうよ?ショウくんしちゃうよ?『ナンなんすかねぇ?』
「くっ」
え?クッコロ?
「負けた。次は勝つ」
何に?
ちょ、“ザッ”って感じでいい感じに立ち去ろうとしないで。
「ちょちょちょ、お姉さんと話をしないか少年」
引き止めたくなる後ろ姿だよ。ついつい少年と言ってしまったけれど、それにも思うところがあるのか また、ギロリとこちらを睨んだ。アンドレくんはため息をひとつ吐いて「話を聞きましょう」と言った。
アンドレくんと私は2日後にディオさんの後を追いかける形で数日一緒に旅をする仲間である。このままでは良くないだろう。お兄さんのディオさんがいる時だとネコを被ったように私に接してくれていたみたいだけれど、唐突に現れた女=私に、いい気はしない。うんうん。普通そうだよね。
だけど、だからこそ、変な空気で一緒に居続けるのは大人だろうと子供だろうと、キツイでっす。
・・って話をしようとせっかくアンドレくんを引き止めたけど・・・・・腕に抱いたままのミナモがウサギ特有の、バイブレーションみたいな小刻みな震えが始まったんだけど、ブブブブブ・・・って、こ、これって、す、ストレス?ストレスなの??
ウサギ詳しくないんだけど!?寒い!?どうした!?どうしよう!?
アンドレくんも私の腕が震え始めたから目線がそっちに。
「どこか部屋で話がしたい、です。」
「そ、そうだな」
なにやらわかってくれたようだ。アンドレくんに着いて行って改めて話をすることになった。
ブブブブブ・・・・。ナンなんですかネェ!?