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第239話



神官は後悔していた。神官は神官であるために、神官としての今日を過ごしていただけに過ぎない。神官とし努め、神官として力を注ぎ、神官として見られていることを念頭に置いて、神官をしていた。


だからこそ、神官は後悔していた。あ、これ、死ぬかもしれない。神官として。


「神官様!?本当に大丈夫なのですか!?モナちゃんの顔色が先程までは戻っていたようですが、神官様の顔色が悪くなってきたと同じくして、モナちゃんの顔色までもまた悪くなってきたように見えます」


そういうのは目の前の少女の保護者の青年。この国の王子らしい。いや、もう、王子助けて!と、思うけど、口には出さない。王子に助けを求める神官がいるだろうか。いない。いや、居たとしても、私はしたくない。私の神官像にそんな神官いない!


助けてとは言いたくないけれど、今かーなーりキツイことは伝えてしまってもいいだろう。


「申し訳ありません。この少女の魔力が一気に減少したらしく、無尽蔵に魔力を吸い取られています」


「ええ!?」


「なんですって!?手は離してはいけないのですか」


「離した後にこの少女が苦しんで死んでしまう可能性が高いです。申し訳ありませんがこの部屋の机の横に、隠された収納戸棚があるのでそちらから魔力回復ポーションを1本、取り出して飲ませていただけないでしょうか」


神官は玉のような汗を頭から噴き出しながら、ふたりに説明した。


目の前の少女のモナちゃんという少女は、そこにいるセイリューというキツネが”光る剣“らしきもので貫いた後、安定した。しかしそう時間が経たずして、急激に顔色が悪くなっていったのだ。そのセイリューもまた“光る剣”で治してくれとディオ様もアンドレ様も説得していたのですが、肝心のセイリューは首を降るばかり。


“光る剣”では効果が足りないのか、もしくはさっきのとは原因が別で全く治せないのか、それともそれを出すのに魔力が足りないのか、はたまた、その魔法を使うのに回数制限などがあるのか、どれなのか分からないが、出来ないというのがあのキツネのセイリューの見解らしい。


ディオ様がさっそく行動を起こしてくれて、机の少し上辺りの壁を叩いてもらった。壁を押し込むとバネが板を跳ね返し、壁板が隠し扉だったとわかるだろう。そこに3つの引き出しがあり、一番下の棚に魔力回復ポーションが置いてある。ディオ様は1本持ってきてくれた。ありがとう。アンドレ様、予備3本も持ってこなくて大丈夫です。落としそう。落とさないで!大事な物だから!


ぐびっと飲むと力が湧き出て、また吸い取られ・・・。苦行かな?久しぶりだなぁ。(遠い目)


「神官様、これ1本、モナに飲ませてもいいですか?」


な、なるほどぉ!!アンドレ様、頭いい!落としそうだとか思ってごめん!


「の、喉に詰まらせないように、少しだけ体を起こして口が濡れる程度に少しずつあげてください。一気に口に注いでしまうと気管に入って窒息死してしまいますので、慎重に!」


「は、はいっ!」


「アンドレ、私が支えるから注いであげられるか」


「ま、ま、まかせてください、オニイサマ!」


やっぱり不安しかないんだけど!?












モナにどうにか飲ませることが出来た。少しだけ顔色が良くなった。気がする。神官様も息を荒げ始めていたけれど、俺がモナに飲ませ始めたら息も整ってきだして今は顔色は悪いけれど、そこまでじゃあない。良かった。


お兄様も心配なのか手や足がそわそわと落ち着きがない。むしろ俺はお兄様のそのそわそわをみて心臓だけドキドキと高鳴って、体は硬直しそうだ。


モナはなぜこんなことになってしまったんだろう。セイリューとウサギの、えーと、ツキノだったか?それらは、大人しい。モナのこの現象についてこいつらは知っているということなんだろうか?いや、単なる動物にそんなことを考えることは出来ない。


つまり?


ただの馬鹿か、モンスターか、だ。


お兄様も神官様もモナから目を離さないようにしてくれている。俺は身長が足りないからさっきのポーションをあげるので首も腕も痛い。座り込むついでにこっそり話しかけてみてもいいだろうか。


「なあ」


「・・・きゅん?」


「お前ってもしかして、その〜」


「・・・きゅん?」


「モンスターか?」


「・・・きゅん?」


今のどっちだ。というか、1回目と2回目と3回目のきゅん?の差が全くわからない。・・・俺は試されているのか?


「えっとー、その、な?モナを起こすにはどうしたらいいのか知ってるか?・・・・・その・・・な、さっき祝福ごっこしようって言ったのは俺なんだ。・・・・んぐっ・・・俺なんだよ。だからな、倒れたのはきっと俺のせいだ。だから、ぐすっ・・・モナを、ぐすっ、助けるために、なにか、できないかって・・・・・うえっ・・・」


お兄様に気づかれたくなくて、泣きべそかいてるのを聞かせたくなくて顔を腕で隠して喋るのをやめた。声に出すと泣きたくないのに泣けてしまう。俺は心が弱すぎる。女々しいってこういう事だ。泣いてる場合じゃない。


「きゅんきゅん。」


「プロパティラッテリーアムーニーマ、アレフリッツメルニアーデ」


「!?」


う、ウサギが全くもって分からない単語を言い始めた!?!?ビックリし過ぎて涙も引っ込んだ。


「きゅんきゅん、きゅーんきゅきゅん、きゅんきゅん、きゅきゅきゅーん、きゅん。」


「全然わからない。」


モナだったら解るんだろうか?・・・・あっ!そうだ。


一縷の望みをかけてアンドレはディオと神官に提案した。それが出れば、新しい力が手に入れば、きっと役に立つかもしれない、と。


「今すぐここで祝福を受けさせてください」


アンドレの目は何よりも力強く、彼女が起きて共に笑い合う未来を求めていた。

次回は18日予定です


アンドレ「神官様、俺、覚醒したいです!」


モナ「そうじゃなくて、“安西先生、俺、バスケがしたいです!”風にもっと涙と自愛を込めて!はいっ!もう一回!納得いくまでやってね!」


アンドレ「えええ、また、撮り直し!?」


ディオ「バスケってなんだろう」


ビャッコ「ワリぃけど、そのセリフ無くなったから」


モナ「ええええ〜」


アンドレ「ホッ・・・」



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