第237話
――――――黒猫のスバルは笑顔だった。幸せだった。最近は殺意に湧くことも無かったから。猫の形を取っていてもモンスターというものは冒険者たちにとっては殺戮の対象なのだ。
冒険者とは一般人よりも恐ろしいものであり、その者たちから逃げていれば、一般人からはモンスターとして襲われることはない。と、思っていた。そして自分の事で手一杯な日常だったからこそ、過去の自分は人間同士の諍いには無関心であったし、心に余裕が出来た最近では一般人のことはむしろ好きになっていった。
猫のことは襲わない。エサだよ〜と声を高くして言ってタダでごはんをくれる。そしてスバルが一般人で1番好きなのは、家具、小物、などの造作物を作り出す職人の手が好きだった。たまに変なニオイがする者もいる。モンスターや動物よりもクサイので、さすがに水浴びくらいしてほしいと思う。
ここ一番最近で出逢った職人は、目の前にいる食べ物を使って別の食べ物を作り出す、料理人。「猫の食べ物」「犬の食べ物」「ヒツジの食べ物」「キツネの食べ物」などなど、それぞれにあったモノを提供してくれる。スゴイ。
あのモナちゃんに出逢う前からたまにあの店の近くによく行っていた。だからテンクウから「手伝って〜!」と、言われた時、隣にあの一般人がいたので、半分お礼目当ても期待して二つ返事でオーケーした。
だからこそ許せなかった。目の前で仲間の知り合いの首を絞めている光景を見てしまっては。
「うぁぁぁぁっしゃらぁぁぁぁ!!!」
「な、なにっ!?」
フテゥーロは驚いて毛をボワッと膨れ上がらせた。闇猫のスバルは、自身の影からするりと溶け込み瞬時に首を絞められてしまっているミギィさんの影から飛び出した。ミギィさんの首からは手が離れた。
唐突に影から猫が飛び出したら誰でも怯む。ミギィさんはゲホゲホと咳き込んだ。その事象にようやく気づいたテンクウとフテゥーロは、咳き込んでいるミギィに駆け寄った。そして絞めた人物へ威嚇をあらわにした。
ナエは元・妻を愛していた。もう過去の話だ。別れてから随分になる。人生が上手くいった時も、上手くいかなかった時も、その場に居なかった人のことを愛し続けていた。
「愛している。だからこそ・・・・なんだよ。なんなんだよ。僕が、、おれが、、目の前にいるのにっっ!!あの熊の獣人!?ユーグリッド?ユーグリッドんユーグリッドぉぉ??知るかっっ!!!ぁぁぁあああああ!?もう!?なんなんだよ!?さっきから、もおおおおおおぉおぉぉぉぉぉ!!!」
苦しそうにしているミギィなど、自分自身のその歪んだ思いにたいして不躾な物言いだったと怒りをあらわにした、ナエは狂人にでもなってしまったかのように周りに人が多くいることもいとわず、叫びだした。
スバルは叫んだナエに少し驚いたが、先手必勝とばかりに、影に沈み込み、その影から闇を生み出し闇を広げ始めた。ミギィ、テンクウ、フテゥーロに闇が侵食しないように、ナエを中心に取り込むように、どんどんと・・・
「黒猫っやめな!アタイはソイツと話足りないべ」
息を正したミギィはテンクウやフテゥーロに心配されつつ立ち上がった。スバルは影から頭を少し出してミギィを覗き込んだ。
「なぜ」
ナエを見ると目がオカシイ。捉えて殺した方がいい。直感的にスバルはそう思った。
「なぜ?首を。殺されそうになってた。なら、殺されても文句は言えない。」
「捕まえてくれて助かったよ。文句は言えないのは当たり前だけどもね、使い所はあるんだよ」
スバルはよく分からなかった。でも息も絶え絶えだったミギィの目は死んでいなかった。恐れなどで言っているわけではないということが分かるが、人間のことはよくわからない。でもその目はスバルの好きな目だった。職人の目と同じだからだ。
話があっちこっちいっててスミマセン。時系列分解したくないので、時系列のまま書くと、あっちこっち行ってしまうのです。
「数分前」「数時間前」とかはあんまり書きたくないのです。なぜなら過去の話は、if時間だけでいっぱいいっぱい。それ以外のは現在進行系のみにしたいという変なこだわりで作成されています。
なのでストーリーの書き忘れがあるとヒエッてなります(前科沢山有り)
あ、次回は明日予定です。(急)