第229話
《モナの過去(ロッテリーの10年後)》の回想。
呼びにくいので《if世界》と呼んでください。
if世界のモナの続きです
「ではそのご友人にもお伺いしてみてから、というのはいかがでしょうか?」
ディオさんがそう提案してくれたので白イノシシのサイキョウさんは下がった。そしてもう目の前には王城が見えていた。
横竪さんが言っていたイノシシと違って白イノシシのサイキョウさんの体の大きさは普通のイノシシサイズ。たぶん。普通のイノシシは多分このサイズが平均・・・。現代日本でもイノシシってニュースとかでしか見たことないけど、双子用ベビーカーより少し大きいぐらい。ん?それだとちいさすぎるか?シングルベッドサイズ?それだと大きすぎるか?
ええと。まあいいや。私の思う普通のイノシシサイズである!!
あ、カラーBOX3段分かも。
じゃなくて。とか色々考え事してたら前方方向から中学生ぐらいの男の子3人が走ってこっちに向かってきた。3人とも野球少年みたいな短髪。少しだけ髪が長めの爽やか短髪少年達は、西洋の真っ白い法衣みたいな服装をみんな着ていて、なんだか可愛い。
男の子に可愛いは禁句かな。言わないでおこう。心にとどめておこう。可愛い。それにしても本当に野球やってきたわけじゃないよね?ぜーはーぜーはーと息を荒げて私達の目の前で立ち止まった。どしたん。
「ディオールウェリス様!あんな飛び道具だとは聞いておりませんでした!」
「非道いです、僕達を殺人犯にさせるつもりですか!?」
「心臓が飛び出るかと思いました!飛び道具だけに!」
「僕はもう心臓が飛び出るどころではなく、止まりかけました!」
「それを言うなら、僕はちびるかと思いました!」
「僕は今も飛び出そうだった心臓がバクバク鳴り響きすぎて頭が痛いです!」
3人共「僕のほうが驚いた」合戦よろしく、ディオさんにわめき始めた。わー。この子達そうか。さっきのディオさんの飛ぶ前に、一緒に居た子達ってことだね?なるほど?目の前でぶっ飛んだらそりゃビビリーのビビりあん。略してビビり。ますよね。うんうん。
「申し訳ない」
ディオさんが素直に謝るとあーだこーだと言っていた中学生(仮)3人組はあんぐりと口を開けて慌て始めた。
「ち、違うんです!ディオールウェリス様!」
「あ、あ、謝らないでください!1言!1言言ってくれるだけで良かったんですから!」
「僕達は助手なんですから!その身を大事にしてください!」
今度は謝り合戦ですなう。ディオさんは3人に逆に謝り倒されてとてもいい子達で微笑ましくなったのかくすりと笑顔を溢した。
「次からは相談するよ」
「そうしてください!」
「よかったぁ」
「ところでそちらのお方はどちら様でしょうか?それと、フクロウ?」
3人組がようやく私の存在を認識した時には、あのイノシシはどこかに消えていた。おい。案内人だったんじゃないのか。フクロウのタイサイさんもイノシシさんがいなくなっていてビックリしたあと呆れていた。
「こちらのお嬢さんは・・・モナさんといって、他国から来られたお客人です。」
おおっ、それっぽい理由をさっと作りました。ディオさんすごい!
「なるほど!他国から来られたので見たことない様相の服を着ていたのですね!」
「お顔立ちもこのあたりではお見かけしません。可愛らしい方ですね」
「本日ご到着されたのですか?ディオールウェリス様に代わりまして王城の案内をいたしましょうか」
「あ、ええと、私今から行かなくてはならないところがありまして」
3人組はディオさんが作った理由を聞いてすぐに、友好的な態度を示してみせた。ありがたい。ありがたいけど、これは一回王城に上がり込む流れ・・・。
「こらこら、待ちなさい。モナさんは私が案内しますから、君達は研究室に戻っていなさい。あと、今日の実験は終わりにしますから、片付けをお願いいたします。明日も私はそちらに顔を出せないかと思いますから、数日は研究室では君達の好きな事をしていていいですよ。ただし、いつも言っているように爆発関連は私の居ないところでやらないこと。研究室を無くしたくはないでしょう?」
「はいっ!」
「ハーイ」
「はい」
ディオさん研究室なんて持ってるの?凄いなぁ。ん?貴族で元・王子で、領主やってるとかさっき言ってなかったっけ?いい返事をした3人組はペコリぺこりと軽く挨拶をしては去っていった。
「あの子達は?」
「私の教え子でもありますが、本来は領主の侍従見習いの子達なのです。まだ見習いなので時間がある時に色々変わったことも教えているのですよ。」
「侍従見習い。・・・帰しちゃって良かったんですか?」
車椅子に乗ってるからにはそれなりにお世話してくれる人が近くにいたほうが良いはずだけれど。
「これがあるので」
ディオさんは車椅子をトントンと嬉しそうに叩いた。
そうだよね。この車椅子、デコボコ道も何のその。飛んだディオさんを捕まえもしたし。すごいよね。
「それで、モナさん。ご友人はどちらにいらっしゃるかおわかりですか?おわかりでしたら馬車でそちらに向かいましょう。」
私は名前とこの辺りに住んでるんだよっていう情報を横竪さんからおおよそを聞いてはいるが土地勘が全くない。
フクロウのタイサイさんを見ると、飛んでいる時に見る上空からの地図からの位置はわかるけれど、人間の住所の番号などはわからないらしく、ディオさんに伝えておおよそを聞いたら、ディオさん自身が王都キングヴァギアンの街中を案内してくれることになった。
元・王子に街中案内させるのはちょっと忍びなかったけれど、他に頼れそうな人も知らなかったので、甘えることにした。
ディオさんは優しい。車椅子に座っているのに立ち振る舞いがカッコいいし。どういうこと。見続けたら目が腐りおちやしないだろうか。こんな訳の分からない異世界から来た女をエスコートできちゃう不思議な男性。
同情や哀れみからきた心のあれなのか、私にはわからなかったけれど、胸がギュッとなった。
止まれる木の枝が無くなってきたからってフクロウのタイサイさんを胸に抱いたからでは断じてない。むしろタイサイさんはギュッとされて、どうした?って私の顔を心配して見てくれている。
私どうした。
明日にしようかと思って結局今日出した私。数日おやすみ頂きました。再開しまーす。
次回は28日予定です。