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第224話

オウジュの話④

横竪(オウジュ)さんが語った次女さんは想像よりたくましかった。違う。そうじゃない。・・・いや、私がどうこう言えるあれじゃないから、素直に話の続きを無心で聞こう。そうしよう。


「襲いかかられては(ほふ)り襲いかかられては(ほふ)り、そして食らいついた。手元にあるのは手頃な岩と枯れ枝だけだったが、次女にとっては腕1本でも倒せる自信があったので、むしろ武器があるだけで死体の山を量産していくのは容易(たやす)かった」


「襲われわれる度に屠り続けていき、ある時、人語を喋るケモノに出逢った。いつも通りに首を腕の力で締めようと力を入れようとしていたのに“降参するから命だけは助けてくれ”とそのケモノはのたまったのだ。」


「次女は(おのの)き、手を引いた。冷静になってみると目の前のケモノから家族のニオイがしていることに気がついた。家族のことなど時間が経ち過ぎて忘れてしまっていた。その時に、思い出したのだ。」


「次女は兄弟達のことを思い出した。1番目の長男。2番目の長女。4番目の3女。末っ子の次男。兄弟達がどんな生き様、死に際だったのかなど、次女は見当もつかない。ただ勝手に思っていた。子供の頃のように笑い合って暮らしているものだろうと。」


「そして次女は気づいた。自身が死んでしまってから一体どれほどの月日が過ぎていったのか全く知らなかったのだ。次女を蘇らせたあの若者は月日の概念など、どうでもいいものだったので次女にそういうことを、教えることすら思いつきもしなかった。」





「話の途中ですけどちょっとだけ質問いいですか?」


「なんだい?」


「その現れた人語を喋るケモノって・・・オオカミとか、ネコとか、イヌとかですか?」


「ああ、言ってなかったね。ケモノは、赤黒く大きなイノシシだよ。」


「イノシシ」


「そうだな。あぁ、あのくらいのサイズだ。」


横竪(オウジュ)さんが指を指した先にはこの神社近くの道路脇に止まっていた、2トントラックだった。・・・・いや、動物の範疇超えてますけど!?


いやいやいやいや、ファンタジーだからってちょっと設定盛りすぎだよ?そう!もののけ姫!に出てくるタイプのサイズ感。


まって?そんな大きなイノシシを軽々と屠ろうとしてたの?おかしくない?次女さん、もののけ姫のサンよりめちゃくちゃ強いのでは?ファンタジーはファンタジーでも、次女さんは世紀末覇者のほうだった??


“うわ、ようじょ、つよい”ではく、“うわ、じじょ、つよい”である。うわぁ(遠い目)


「・・・どうした?大丈夫か?」


「あ、はい。お話の続きをどうぞ。」


「うむ。」








「次女はその大きなイノシシと共に町に降りた。町からつかず離れずな場所に住み始めたが、兄弟についての手がかりは月日が経ち過ぎてしまって何もわからないということだけしか分からなかった。」


「次女がそこに住み始めるとイノシシが仲間に声をかけ始め、次女の家はケモノ達で溢れた。ケモノ達も気づいていた。次女から似たようなニオイを感じていた。それは血が本能が、全てが。彼女達を家族だと認識していた。彼女もまたモンスターだとも言えた。」


「ある時、知恵のあるモンスターが次女の家族について知っていることがあると、訪ねて来た。国王の血筋にも私達と似たようなニオイがする子が現れる。彼女の家族は王様に会えばわかるのではないか?という事だった。」


「次女は兄弟の事が少しでも知りたくてケモノ達の力を借りて城に忍び込んだ。沢山の絵が飾ってあった部屋にたどり着いた。それは絵で見るこの国の歴史だった。次女の目の前にひときわ大きく目立つ額縁に飾られた絵には、英雄になった長男が魔女のように描かれた長女を倒している場面だった。」


「次女は信じることが出来なかった。しかし一緒に来たケモノの中にそれを知っている者たちもいて、色々な情報が錯綜した。別の絵には次男が動物に囲まれて喜びに溢れている絵と、もう1枚には3女が男性と一緒に赤子を大事に抱え笑顔を絶やさないようにしている絵だった。」


「それを見ていて気づくのが遅れた。面白くなって帰ってきたと喜ぶ声がした。次女の後ろにあの荒野に次女を捨ててきた、若者がまた少しだけ老けて立っていた。」


「若者だったものは、今日の記念にと、次女の体をまた作り変えようとした。抗うと力は跳ね返されて若者だったものは、呆気なく砂と化した。しかし作り変える途中で抗った為に次女の体も保たなかった。」


「次女は魂だけになり住んでいた町に光となって土地に染み込んだ。城に一緒にいたケモノ達は半分近くはモンスターだったのでそれを認識していた。次女と共に過ごしたモンスター達は魂だけになった次女の姿も声も聞こえた。そう、次女はそこの町の土地に司る神になってしまった。」


「若者は砂になったがその砂は舞い、長女が亡くなった土地に染み込んだ。そこからは絶え間なく混沌が生まれる場所になってしまった。しかし誰も気づかない。」


「魂だけになってしまった次女は若者に作られた者だったので気付くことが出来る唯一の者だったが土地に縛り付けられてしまい、(ほか)へ何かをするには、モンスターを使うしか無かった。しかし打開策としては機能が弱かった。」


「そして数百年の月日が過ぎていった。混沌は土に染みて、草木になり、それをモンスターが食べて、狂暴化するモンスターが徐々に、しかし確実に増えていっていた。このままではこの土地は全てモンスターに飲み込まれて、この星丸ごと狂暴化した者たちの殺し合いしか生まない場所に変貌をしてしまうだろう。」


「次女は知恵のあるフクロウのモンスターに力を借りて、他から救世主を連れて来れるようにしてくれた」


ん?


「助けて欲しい。テイマーの素質のある子よ。私は横竪(オウジュ)。王都キングヴァギアン創設の王の妹にして、次女。ロッテリーの土地の守護者の戦闘女神。」


え?え?えーーー???

やっとここまで来ました感。


( ^ω^ 三 ^ω^ )ヒュンヒュン


明日と明後日はお休みします。ではまた次回!17日予定。

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