第221話
横竪さんは、私が聞いてても聞いていなくても構わないとでも言うような感覚で、まるで寝る前の子供に昔話や童話を聞かせるかのように話しだした。
最初は距離を置いて聞いていた私は話が進むにつれ、聞き逃さないように横竪さんについつい近づいていった。
「あれは嵐の夜から始まったと思う。大きな海沿いの砂地に1人の若者が打ち上げられた。その若者を見たものはどこからともなく現れたと言った。泳いで来たわけでもなく、打ち上げられたと言っても溺れた様子がないので苦しそうな素振りもなかったという。」
「その若者は気づけばそこの土地にいる者達とすぐに仲良くなったそうで、そこに住んでいた人達は不思議な感覚にふわふわと楽しくなっていったらしい」
「ある時、急に若者はこの土地を旅立つと言って、いつ出かけるのかと聞きに向かった時にはもう旅立った後だった。あっという間だったという。するとその若者が居なくなったあと、その土地に住んでいた人達はその若者が居なくなった虚無感に襲われ、苦しい思いをしたらしい。」
「若者に関わらないで暮らしていた辺鄙な場所にいた親子連れがその土地にいる友人を訪ねた時、友人の様子がおかしかったと語ったそうだ。“こんなのは友人ではない!おかしな事に巻き込まれてしまった!”」
「親子連れたちは助けようとしたが、治らなかった。そして原因は掴めないままその土地の者たちは虚無感と一緒に何年も暮らしていった。親子連れは絶えられずその友人に会うこともやめてしまった。」
「親子連れの家族のうちの子供達が大きくなった時、環境の変化で住んでいた場所から出ていかなくてはならなくなり、旅を始めた。ある時、子供達は雨宿りで入った洞窟の奥で不思議なモノに出逢った。」
「子供は5人、助け合って生きて来た。しかし見たことが無かった。そこにいたのは喋る異形の化け物だった。胸は岩で出来ていて、腕は付け根がヌルリとしなるのに手の先はウロコがビッシリとついてまるでヘビのようだった。足は布で隠されて見えなかったが、足音は一切せずに何故か素早かった。首から上は木々の細工を人形の頭にしたのかと思うようにシワシワで、髪は海藻のように重たそうなのに雲のように舞う不思議な髪だった。」
「子供のうちの長男が雨が止むまでだけだからここに居させて欲しいと懇願したが異形の化け物は構わず追い出そうと威嚇してきた。それを見た次女が果敢にも飛びかかって討ち死にした。子供は4人になった。」
「異形の化け物は威嚇はするけれど、飛びかかって行かなければ襲って来ることはなかった。それに気づいたのは4番目の3女だった。気づいたところで既に遅く、雨は止み、洞窟を4人は出た。しかし旅先は足元が悪かった為か雨のあとのせいか、3女は崖から落ちてしまった。そして3人になった。」
「ある時3人はいい土地を見つけて住み始めた。しかしそこで、見かけたことのある男を見つけてしまったんだ。その人とは小さい頃に少しだけ見たことがあった、若者だった。もう若くは無かったけれど、また人が集まっていた。」
「よほど口が上手いのか、みんな騙されているのではと3人は話し合った。3人はそれを暴こうと決意した。なぜなら3人にも恋人や家族が出来始めていたからだ。両親の友人達のようになる人を増やしたくは無かった。」
「長男と長女と次男は話し合った。近づいてしまえば終わりかもしれない、と。考えた挙げ句、次男が得意としていたことを使うことにした。」
「そして、あの若者だった男性は3人にその土地から追い出された。被害にあっていた者たちは少なく無かったが、家族や友人は守れた。そして次男はその土地からみんなを守った功績を称えられ、そこの土地の領主になった。」
「長男と長女も最初は喜んでいたが、次男のように優遇されはしなかった。長男は家族を連れて別の土地に移って行った。次男は長女が残った事に喜んだが、長女は次男の得た富と財産を得ようと常に画策するようになっていった。」
「ある時、次男が殺された。あの若者だった男性に心酔しきってしまっていた者が未だ立ち直れずに、次男が原因だと煽られて殺してしまった。長女が煽っていた。それを次男の常に助けになっていたモノ達は気づいた。」
「次男が得意としていたこと、それは動物と仲良くなることだった。次男と共に生き、次男の常に助けになっていて、彼らも次男に助けられ、共存していた。そしてその長女を断罪するために動物達は動いたのだが、長女もこの未来に向けて常に動いていたので、ただの動物では太刀打ち出来はしなかった。」
「次男が死んでしまったと知らずに土地を訪ねて来たのが長男だった。長男は良い知らせを持ってきたつもりだったが、次男が長女経由で殺されたということを耳にしてしまい、長女に会いに行くのをやめた。」
「長男と一緒にこの土地に来た者がいる。なんと3女が生きていたのだ。崖から落ちて、あの、異形の化け物に憐れんで助けられていたのだ。長男がこの土地から離れて、別の土地に行く道中で長男達の足取りを人づてに聞きながら、ゆっくりだけれど兄弟を追いかけて来ていたのだ。」
「次女は仕方なかった。だから1人でも兄弟が仲良く手を取り合ってこのまた会えた幸せを噛み締めたかった。なのに長女は狂ってしまった。こんなに悲しいことはない。」
「長男は旅先で鍛えた勘と耳と足で情報を密かに集めた。3女は崖から落ちたあと、次男とはまた違う特殊な能力が身についてしまった。2人は次男の残した動物達の事を知り、動物に接触することにした。」
「動物を集めたが次男と違って心を通わせることが難しいことは明白だった。そして長女の事もあって、威嚇もされたし、怯えもされてしまった。3女は能力を動物達にかけた。動物達の様子が少しだけ変化した。」
「3女は生き物の知能を上げ、性格を穏やかにさせる不思議な力を手に入れていた。3女は異形の化け物に図らずもそれをかけてしまって、その能力が出来た事に気づいた。それをかけられた異形の化け物は、少しだけ不格好なちょっと変わっただけの人間のようになったのだった。」
「動物達は知能が上がり、喋れるようになった。一部は体が少し変化してしまったが、動物達はむしろ強くなれたと喜んでいた。」
「血が変化を起こし、モンスターと呼ばれる者たちが生まれたのだった。」
とうとう、スマホを新しく替えました。慣れない!パスワードとか登録し直したりしてたらなれるかと思ったけどまだ無理ですね。ガンバルンバ。
でも電池あんまり減らなくなったし、電池パックはもう膨れてないから安心安心(えっ?そこまで使ってたよwwwハッハッハ)
来週はもうチョット更新頑張りたい。といいつつ、次回はまた明後日ですなう。
昔話の続き〜