第216話
神官様がきょとんとしたかと思ったら私の目の前にしゃがんで、私の目線に合わせて私の顔をじっと見てきた。なんだろう?
「なにか悪夢を見られるのですか?」
「それが見たかもしれないのに全く覚えていないんです。怖くて飛び起きても、悲しくて涙がでても、嬉しくなるようなことがあっても、夢の内容が全く、一切、何もかも、覚えていないんです。」
しゃがんだまま口に手を添えてアゴをトントンと叩くような仕草をした神官様は、少し考えてから口を開いた。
「ふむ・・・。そうですね、少し怪しいので調べるだけ調べて見ましょうか。ええと、保護者の方はこちらの方でしたよね。少しお嬢さんのことで相談をしたいのですが」
今いる保護者になるのはディオさんだけである。今いないチェルキョさんのお陰でディオさんは第6王子のディオさんには見えないような魔法がかかっているから、もしかすると、実年齢よりももっと大人に見えているのかもしれない。
ディオさんは私とアンドレとセイリューちゃんとツキノさんをその場に残して、人が少ない端でなにやら話し合いが始まったようだった。呪いがかかっているかを調べるのになにか怖いことでもするのだろうか?それはヤダなー。恐いのはちょっとねー。
「モナ、祝福するまでひまだからあっちも見てみたい!行こう!」
アンドレがさっきディオさんに教えてもらった“ヘビ”とか“ウマ”それにビャッコくんに似たのやセイリューちゃんやツキノさんに似た像のところに興味を示していた。
像は遠くから見る分には全体図が見えるのだけれど、近づくとまず、像の台座だけでアンドレの身長と私の身長を足したらようやく台座の板の部分に到達、ぐらい高くて、真下に来ちゃうと像の足元しか見えない罠だった。5歳の身長が憎い。だれか抱っこしてプリーズ。
アンドレもまだまだ身長が足りないから私と同じで、像の真下に来ちゃったもんだから、首がグッキリいきそうなぐらい真上を見上げている。うん。近くに寄りすぎたね。
2人してもうちょっと見えやすい位置に戻った。
「俺こいつに似てるやつ好きなんだ。可愛いよなぁ。」
アンドレがビャッコくんに似たネコの像のあるところで教えてくれた。アンドレ、ビャッコくん好きだったのか!猫派?犬派?ってよくあるけど、アンドレはネコ派なのかもしれない。
「これかっこ良くないか!かっこいいよな~」
ウマの前で興奮している。男の子ってスピードがでるものや強そうなものに憧れを抱くけど、こういう世界だとウマっていわゆるスポーツカー的な立ち位置なのかな?
「これは、恐ろしいな」
ヘビの前でアンドレがいった。ふむふむ。恐いと言っておきながら少しワクワクが隠せない、男の子特有とでも言えばいいのか、冒険家とかのインディージョーンズとかのあのワクワクの顔をしている。うむ。あれかな?ホラー映画を見る時や、ハブとマングース見る時や、血と汗が飛び散る無差別格闘技を見る時とか、のあの、恐いもの見たさ的な感じかな。
私も恐いもの見たさってわからなくもないけれど、でも私としてはヘビと言うと、ヘビの皮は金運が上がるお守り、とか、身がたんぱくで美味しいらしい、とか、毒持ちと毒無しの見分け方が分かりにくいらしいよね、とか、余計なことを思い出したり考えたりしていた。
次にツキノさんやリクゴウくんに似たウサギの像の前に来た。
「可愛いなぁ」
「可愛いよねぇ!ほら、ツキノさんにそっくりだよ」
ツキノさんに教えたけれどツキノさんからは像のあるところが私よりも見えなかったらしく、私も同じこと思ったからこそ、像が見える場所まで行って、ツキノさんを抱っこした
「ほら、ツキノさん。これでみえるかな?」
見えたらしく首を縦に振っている。
「ウサギは色々いるけれど、コイツと、そっちのキツネもそこの像のとそっくりだなー」
アンドレが比べて見ている。
「でもやっぱりここの像のほうがカッコいいよな」
セイリューちゃんが少し自慢気に胸のもふ毛をドヤァみたいに胸張りしてたのに、像のほうがいいとアンドレに言われたとたんにアンドレにたいして怒っていた。そりゃ像は作り物だからね。かっこ良くも可愛くもそう見えるように設計されているものだからねぇ。生き物な当人と比べちゃだめだよ。偽物だからもふもふもしてないからね。
ツキノさん抱っこを長時間するのは初めてだったけど、胸のあたりのツキノさんの体がほっかほかになって生き物の体温の高さと毛のふわふわ感で、私の腕は幸せだったよ。
さすがに5歳の腕じゃ3分が限界だったけどね。
「モナ!モナ!」
アンドレがはしゃいでいるので像以外の神殿の面白そうなところを見て回った。
妹がディズニーシー行ったらしい。いいなぁ。
次回は明日?予定です