第210話
舞台にそろりそろりと近づいていった。まあ、そろりそろりと行ったところで舞台に近づいて行く人なんてあんまりいない上に呼ばれた後に舞台に近づいているから、注目浴びまくりなのですけれども。
「君が飼い主?」
「す、すみません。もう、タイモちゃんもセイリューちゃんも勝手に居なくなったらビックリするでしょ」
「キュンキュン・・」
「きゅーん」
タイモちゃんもきゅーんって鳴いた!なんだこのふたり!可愛い!反省が可愛い。
「タイモちゃんもセイリューちゃんも、ほら、帰ろ」
動かない。えっ。
「どうしたの?大丈夫?」
一座のボーイッシュなカッコ可愛い綺麗なお姉さんに心配されてしまった。
「タイモちゃん?」
セイリューちゃんの顔色を伺うようにしてタイモちゃんはその場を動かない。セイリューちゃんどうしたの?なんだかすっごいふてくされてる??・・・あれっ私の肩にスズちゃんがパタパタパタパタと飛んで来てくれた。
「モナ、どうしたの?」
スズちゃんが耳元でこっそり話してくれた。
「スズちゃん?セイリューちゃんとタイモちゃんが動かなくて困ってるの」
スズちゃんはそれを聞くとセイリューちゃんの横に飛んで行って話を聞いてくれた。
「キュンキュンキューンキュン」
「ピピピピチュチュチュ・・・ピピピ、ピチュチュチュ・・・」
おお、スズちゃん、それってスズメ語?タイモちゃんはふたりの会話を聞いたからかその場に座り込んでしまった。えええええ。タイモちゃんもセイリューちゃんと一緒にふてくされてるの?どうしたどうした。あ、スズちゃんが肩に戻ってきた。
「なんだって?」
「スゴい魔法だったからあのお姉さんに師匠になってほしいんだって」
「なるほどぉ・・・っていやいやいやいや」
そもそもセイリューちゃんは魔法とか使え・・・たんだろうか?そういえば知らない。
「うーん、わかった。ちょっとお姉さんに聞くだけ聞いてみるね」
セイリューちゃんはキュンキュンとしかいえないし、スズちゃんもタイモちゃんも人語を喋れるモンスターとしてあんまり人目に好奇な目にさらされたくはないだろうからそう言うことは私がいかねば。見た目は子供、頭脳は大人、おちゃらけ具合はお手の物。迷探偵モナですよ。
「お姉さん、お姉さん」
「なんだい?」
宝塚に居そうな綺麗カッコ可愛いお姉さん。どの場面に出演してたんだろう。服からすると、妖精みたいなもふもふみたいな・・・あれか!妖精4人が女版雪男やってた人の1人か。
「お姉さんはこの公演でどんな魔法をやったんですか?」
「ふふっ、企業秘密だよ」
パチン!ってウインクされたー!プロのオーラだ!まぶすぃ!
「なんてね!隠すことなんてないよ。私が担当したのは巨大なあのネコを作り出した部分だよ。氷の魔法の、雪を作り出すのと、個人的なスキルを活用したんだ。凄かっただろ?」
ニカッと白い歯を見せて笑ってくれた。ビューティーお姉さん。ファンになりそうです。ってあのネコそういうモンスターじゃなくってこのお姉さんが作り出して動かしてたのか!スゴい!えええ!感動!・・・なるほど。セイリューちゃんはそれを見抜いたのか。
「実はこのセイリューちゃんってキツネさんなんですけど、あのネコの時から目がキラキラして舞台をずっと見てて、お姉さんの魔法に惚れちゃったんだと思うんです。だから私のこと置いてきぼりにしてまで、ここに来てしまった。」
いや、私は私で舞台に夢中になりすぎててセイリューちゃんがいつどこで目を輝かせていたのかは目撃してないから、出任せ言ってるけど、当たらずとも遠からずだと思う。師匠にってつまり見抜いたってことだからね。
「セイリューちゃんはお姉さんの魔法のファンになっちゃったので、・・・・握手してくださいっ!」
一応ここは握手会になっている状況だ。そこに並んでいたんだから、師匠に、とまではいかなくても、握手は許される、よね?
「なるほど?キツネちゃんが並んでいたのはキツネちゃんが私と握手したかった、と?」
「はいっ!」
タイモちゃんの上から降りてセイリューちゃんは私の足元に来た。
「キュンキュン」
ふてくされてるのは終わったのかな?
「握手してあげてください。もしくは魔法をこの子に教えて上げてください。」
お姉さんは少しポカンとしたけれど、大人の対応よろしく笑顔で答えてくれた。
「残念だけれど魔法だけじゃあれは完成しないんだ。個人的に発現した“スキルを活用しないと出来ない魔法”だからね。だから口で理論を教えることはできても誰かの力にはなれないよ。スキルは個人個人で違うからね。この子にもし私の魔法を教えてもこの子には出来ないよ。君にもね。だから、なにかスゴいことをしたいのなら自分の能力を伸ばしてあげる事を頑張ってほしい」
そう説明しながら、私、そのつぎにセイリューちゃんにちゃんと握手してくれた。セイリューちゃんの握手をした後セイリューちゃんの頭を撫でて「頑張ってね」とひと言添えてくれた。
セイリューちゃんも納得したのか舞台から客席への道に歩きだした。
「キュンキュン!」
「はいはい、今行くってば、あっ!タイモちゃーん、行くよ~」
タイモちゃんも気づいたら立ち上がってセイリューちゃんと私の後をついてきてくれた。
セイリューちゃんの体は前とほとんど変わらない大きさだったけど、お姉さんの話を真剣に聞くその眼差しは、セイリューちゃんの成長を見たようで胸がムズムズした。
次回は明後日予定です、ええと、23日かな!
ひとまず2日に1度の1日またぎ更新が続く・・・かも?