第209話
その頃、レフティは。
「だーかーらっ今、騎士団の連中がいないんだよ!お願いだよレフティ!あの酔っぱらいどもにお灸を据えてやっておくれ!」
「そうだ!雷を落としとくれ!」
「大目玉食らわしてやるんだから!」
「アタイは忙しいんだけんど・・・」
お祭りに遊びに来ていたオバちゃんズ5人ほどが「レーフティ!」「レーフティ!」とレフティコールしている。
「卑怯だぞぉぉ、ヒック、レフティ呼ぶなんてなぁ、ヒック、ヒック、俺たちがなぁぁにしたってんだ、ゲェェプ」
「「そーだそーだぁ!ヒック!」」
「ふらっふらじゃないか!」
「ちょっ!げっぷ!きったないねぇ!」
「レフティ!やっとくれよ!」
レフティはそこそこ強い。ロッテリーの街の中では有名な話で“ともだち食堂のレフティは、女の中では街一番に強い。そしてその辺の若い騎士団員よりも強く、街の男でもレフティに勝つのは骨が折れる。勝てない訳じゃないけれど、戦うのはよせ。”という話は有名だった。特に知り合いのオバちゃん連中は暇があれば用心棒代わりにならないかと話を持ちかけるのは多く、今日もそんな感じでたまたま通りかかった道で、いざこざに巻き込まれてしまった。
体は身体強化で強くすることは出来るが、別段、勝負師になりたいわけでもみんなの英雄になりたいわけでもなく、こういうのに巻き込まれるのは苦手なレフティは逃げたかった。しかしオバちゃん連中に服や腕をがっちり捕まれてしまっている。逃げるに逃げられなかった。
(せっかく修理終わらしたってのに、なんでこんなのに今日に限って捕まっちまったんだか。アタイとしたことがやっちまったべ・・・・モナちゃん・・・今なにしてるべ・・・楽しんでたらええけんど・・・)
酔っ払いオジサン3人とわめくオバちゃんズ5人に挟まれてレフティは遠い目をしていた。
アイスショーが終わった舞台上では一座の人達との握手会みたいな事が始まっていた。アイスショー中に投げ貨幣していた人達もいたけれど、握手ついでに直接見学料プラスαのお気持ちなお金を手渡している人もいた。飲みかけだったジュースを飲みながらなんとなしにまだ客席でアンドレ達とそのまま居座っていた。
「アイスショーは1日1回しか公演しないのか。でも祭りは3日。3回とも見れる人はうらやましい。」
「まあでも3回とも同じ公演らしいよ」
「なに言ってるんだ演劇は、気温や、人の体調や、気分やらで同じものは2度と無いと聞いたことがあるぞ!今日の公演と明日の公演が同じ演目だとしても、全く同じ劇はない!と言うことだ」
アンドレがふんすふんす!と聞きかじったであろう話をドヤァと自慢するように言ってきた。間違ってないだろうけど、人の言葉の又聞きかじり言葉だと説得力が薄いですよ、アンドレさん。1回でも見れて良かったじゃんって意味で同じ公演だからねって私は言葉を発したつもりだったのだけれど、ただの慰めにしか聞こえなかったらしい。まあ、慰めで間違いはないけれども、それにしても反論の圧が強い。8歳め。まあ私も5歳だが。
「王都に劇場っていっぱいあるんでしょ?アンドレこんなに今日ので興奮してるってことはたまに見に行ってるの?いいなぁ~」
私は現代日本で劇とかお芝居っていうと、やっぱり劇団四●でライオンキ●グとかシルク・ドゥ・ソ●イユとかの来日公演とかかな?舞台だと個人的には大阪のな●ば花月の新喜劇かなぁ、やっぱり。そういえば、友達のお母さんの友達が風邪をこじらせてしまって余ってしまったチケットがあるからと、是非にと友達に誘われてタカ●ヅカの相棒バージョン見に行った事があったけど、スタンダードなのが見たかったなぁと思ったこともあったなぁ。何がスタンダードなのかも知らないけれど。
「いいもなにも行ったことなどないぞ」
「基本的に落ち着きのない子供は野外劇場はともかく、室内の大きな劇場にはほとんどが入れないよ」
ディオさんが教えてくれた。そりゃそうか。急に「トイレ~!」ってなったりでもしたら、劇の興が覚めてしまうもんね。あと、ショーによっては恐ろしい雰囲気のシーンとかもあるかもしれないし、そんな時に「コワイヨ、ママ~!」なんて叫ばれたら、舞台の人達真剣なシーンで笑っちゃいそうになるかもしれないもん。うむうむ。
「でもアンドレ大人しいよ」
「そうだね、王都に帰ったらそのうち劇場巡りでもしてみるかい?」
「ほんとですかお兄様!」
「おっいいねぇ」
「父ちゃ、ゲキジョーメグリってなぁに?」
ヨコシャルさんとトウシャくんも私達の会話に夢中だった。
「兄上達もたまにお忍びでアクション多めの劇を見に行ってる時があるから」
「兄上もですか!一緒に参りたいです!」
なんだか盛り上がってるけどディオさんの言う兄上が誰だかわからないのでスルーなう。・・・ってあれっ!?タイモちゃんとセイリューちゃん!?
舞台の握手会の列になぜだかヒツジのタイモちゃんの背中に乗ったナイトフォックスのセイリューちゃんのふたりが、ちゃんと、列に、並んでらっしゃる!?
「この子達も握手しに・・・来たのかな?」
「キュンキュン!」
「誰かのペットかな?飼い主さんいませんかぁ~??」
よ、呼ばれてらっしゃるぅぅ・・・。はーい!私です・・・。は、恥ずかしい・・・・。アンドレ達は話に夢中だからこっそりと、トイレにでも行くふりをして、そろりそろりと舞台に寄っていった。
一座の人達めちゃくちゃ戸惑ってる。ううう、セイリューちゃん、目がらんらんで一座の人達見つめてる。どうした。なんで。教えて、セイリューちゃん!
ミギィ「ナエどこだべ」
カメーリャ「あれ、ミギィ。何してるんだ、って、クリストファー。お前も何してるんだ。」
クリストファー「団長!実はですね」(解説中・・・)
カメーリャ「あ?ユーグリッドがいない?そんな馬鹿な?」
ミギィ「んで、ナエを見つけ出して朝の事をもう一回聞こうとおもっててな。」
カメーリャ「なるほど、じゃあ俺もさがすの手伝・・・」
祭りの実行委員「団長さん!こちらに来てくださーい!」
カメーリャ「そうだった。俺でなきゃいけないイベントが・・・これ、抜けられないんだよな。しまったな。とにかくわかった。俺もそのふたりをイベント会場とかから探してみる。そんなことくらいしか出来なくてすまんな。」
バタバタとカメーリャは立ち去った。
ミギィ「イベントなんぞ騎士団の仕事の方が大事じゃないんか?」
クリストファー「騎士団の宣伝も兼ねているので、寄付金補助や支援者への今後のアピールとかしてほしいって色々な利権とか絡んでて絶対出ないといけないって言ってましたよ」
ミギィ「これだから団体は・・・。もっかい探しに行くベ。行くぞテンクウ、フテゥーロ。」
テンクウ「ワフッワフッ」
フテゥーロ「はぁい」
クリストファー「あれっその子喋ったんですね」
ミギィ「なに言ってるベ、最初からフテゥーロは喋ってたべ」
クリストファー「あれっそうでしたっけ????まあいいか??」
ちょっと仕事がドタバタしててお疲れ気味なので次回は明後日予定です。うーん、当分の間は1日またぎでもいいかな?今週ずっと疲れてて栄養剤とお友達だった。
ではまた明後日!