第206話
「「「「「ワアァァァァァァァ!!」」」」」
辺りが拍手と歓声でアイスショーを出迎えた。胸が高まりつられて私も拍手する。中央の男性がペコリと頭を下げると被っていたマジシャンハットのような帽子がポロリと落ちた。みんなが“あっ落ちましたよ”と言いたくなった。ところが言わせる隙もなく、それも演出だったのだとすぐにわかる。
その帽子がコロコロと風に吹かれたかと思うと、帽子の頭を入れる穴から煙が少しずつ吹き出してきた。煙が徐々に量を増していくと同時にそのマジシャンハットの穴からは、その帽子を中心点として渦を描くように地面が凍り始めた。水がないと地面が凍るだけなら冬に見る霜がおりたような形になるはずなのに、氷の板が出現していく。
吹き出した煙と辺り1面を氷の板が地面を多い尽くすと、いつまでもお辞儀していた男性がマジシャンハット的な帽子を宙に蹴りあげて頭に被り直すと、帽子を被った男性はガラス細工のようにパリンと弾けるように割れてその場から消えた。
「氷のゴーレム!?」と近くの席から聞こえた。そんなゴーレムあるの!?「いや、きっと幻影魔法だよ」とも近くから聞こえた。えっどれなの。わからないことが面白い。ワクワクする。目が離せない。楽しい。まだ序盤だ。
男性がパリンと弾け消えると煙でおおわれてしまっていた舞台には約20人ほどの女性が舞台を埋め尽くしていた。どの人もスラッとしてスタイルが良く水着のような踊り子のような生地の薄くて肌の露出の多い服を纏っていた。地面は氷の板が張ったままだけど寒くないのだろうか。客席にまで冷気が来るのにその服でいいのかな。
舞台の外郭に近い約14人が踊り始めるとそのリズムに合わせて、地面の氷が歌を歌うように色の波が広がる。中央の6人がそれに合わせて歌い出すと踊っている人達の足元から氷が生まれて、一人一人をせり上げていく。踊る度に氷も移動するので、ただたっていれば普通の氷の柱になるところを、ケルト文様のような複雑な形を作り出して行っている。
「キレイ・・・」
心の底から言葉が溢れた。中央の6人は歌い続けあっという間に首を上に向けてももう上に乗っていて踊り続けているであろう人達はもう見えない。高い。小さなコロッセオ?みたいな柱のようなものが完成すると6人は歌い終わったようでどこかへはけて行った。
するとその柱の一片からヒビが入っていった。そのヒビには紫の液体が上から染み込んでいったようで、雷か木の枝わかれのように模様を新たに加えていった。ひび割れが地面まで届くと、どこからか男性の笑い声が響いた。低い良く通る悪役レスラーみたいな声に聞こえた。その男性の笑い声が止まったと同時に「ハアッ」と気合いでも入れるような声がしたかと思うと、氷の柱はヒビ以外の全体も紫の柱に変えてしまった。
柱が幻のように崩れていくと、上にいたはずの女性達は1人も居なく、代わりに本当にレスラーみたいな体格のいい男性が現れた。映画のミニオンのエルマッチョみたいに見えた。その男性が柱の消えた氷の板の張っている舞台に軽くしゃがみ、手を当てると、水滴の落ちた水面のように外郭が水滴の王冠を作り出した。
水滴の王冠はまた凍り、大小様々な逆さ雫は氷の妖精のようなものを作り出した。彼らはオーロラのように薄くてキレイな羽を羽ばたかせ、私達のいる客席にきてきゃらきゃらと笑いながら飛んでいた。
その氷の妖精達に気を取られていたら悪役レスラーの男性が大声で叫んだ。びっくりしてそちらを見ると少し毛の長い真っ白な毛皮を全身に着込んで鹿の角のようなものを頭に飾りとして生やしている、着ぐるみのような衣服を着こんだ男性に幻の氷の矢のようなものを打ち込まれた。幻のとつけたように、氷の矢は悪役レスラーに当たる手前でキラキラと消えたのに、悪役レスラーは倒れる演技を続けていた。
これはきっとどこかの昔ばなしや伝説を元にしたショーなのだろう。ショーはまだまだ続いた
明日も更新予定です。
なんか気づいたらショーを詳しく書いている不思議。どうしてこうなった?まあいいか。