第199話
や~わらか戦車のこころはひとつ♪生きのびたい!生きのびたい!胸にきざむは、退却ダマシイ、生まれてこのかたあとずさり~。
パパのかかと、ほどにもかたくない。(蚊に刺されたーッッ!たいきゃく~!)
三日に一度、子猫にさらわれる(兄者ーーーーッッ!!)
やわらか戦車、やわらか戦車~他のツイヅイを 許さぬ弱さ♪指先で、つつかれると、そこから♪腐る♪
「お嬢ちゃんカワイイね。小さなテイマーさん」
ハッ。しまった。現実逃避で脳内がやわらか戦車に包まれてた。た、退却~~~!!(わたわたわたわた!)
ハッと気づいてタイモちゃんの体を利用して森林の首飾りの冒険者パーティーから遠退いた。今大人じゃなくって子供だし、知らない人コワイ!で、イケルよね!ね!
知らんオトナコワイ。イケルイケル!
「どこのこだろう。迷子?」
「お祭りこんなに人混み多いだなんて思わなかったもんな。迷子にもなるよ」
いやいやいや迷子確定しないでいただきたい。あっちにみんながおりますゆえ私に構うなお願いします。
「この目の前のヒツジって絶滅したって噂のあった希望ヒツジ?だっけ?」
「違うよ。スノードロップだよ」
「スノードロップでもあってるけど、希望じゃなくて、期待ヒツジね。」
私はずっとタイモちゃんの後ろに隠れながら無言で冒険者達が去るのを待っていた。
冒険者は普通の動物とモンスターの見分けが出来ていた。スノードロップとか言うのはたしかキジンさんがそんなこと言っていたはずだ。そういう花に似ているとかなんとか。タイモちゃんがモンスターとバレた。タイモちゃんの上に乗っているツキノさんとセイリューちゃんと私の肩に乗っているスズちゃんに冒険者の目がいく。
すぐにタイモちゃんを連れてアンドレやディオさん達の元に走って行きたかったけど極度の高まった緊張に足がすくんだ。あれ、こんなにこの人達嫌いで怖くて、どうしようもなく、何も出来なくなるくらい、のどの奥がキュッとなるぐらい・・・・私こんなに緊張する体だったっけ?
この人達は普通にいい人達そうにみえるのに、私はなぜか嫌いで仕方ない。なんでかわからないけど、きらい。だいきらい。もう、はやく、あっちにいってよ。
「ほら他のも、よく知らないけどモンスターだろ?」
「見たことないヤツだけどこれだけ従順なら戦闘とかにも役にたてそうだよね。」
「そこの鳥とウサギはちがくない?普通の動物に見えるよ。あっちの奥の屋台にさばきたての鶏肉・ウサギ肉扱ってる肉屋(さばく前のもの限定)があったからそこから買ったんじゃない?夜ご飯とか用にさ」
「ありうる」
ありうる!じゃなーーーい!そりゃお肉屋(さばく前のもの限定)はあるの知ってたけど、ミギィさんもレフティさんもそういうお店の前は避けて通ってくれたんだぞ!以前は普通に5歳だからって理由だったけど、昨日今日は私が異世界から来たからって血を見たりするのはフィクションとかしか見たことないからそういうの無理だって尋問みたいな時とかに色々話してお祭り中も、避けてくれたんだから!
子供目の前にしてるんだからなんでも明け透けに話せば良いってもんじゃないってわかれよこんにゃろう。子供は本来繊細なんだぞ。私の中身はオトナだから泣かないけど、そんな会話聞いたら泣き崩れるもろもろメンタリティな子だっているんだからな。まったくもう、これだから雑なんだよね。冒険者を長く続けている人達ってば!!
・・・・あれ、私冒険者のことこんなに良く知ってたっけ?まあいいや。あっチェルキョさんがこっちの状況に気づいてこっちに来てくれる。良かった。少しホッとしたのもつかの間、まだ冒険者達は私に構おうとしてくる。
「この子どこかで見たことあるような」
「迷子?私がお母さん達探してあげようか?」
「探したらついでにテイマーとして育てたいって進言してもいいかな」
「えっ?マジーニ子供愛好家だっけ?」
「ちがーう!俺は純粋にだな」
チェルキョさんの後を追ってディオさんも来るし、プントさんも気づいてアンドレと一緒に戻って来てくれている。安心感で、私は声を出せるようになった。
「ならない」
「え?あ、お嬢さん大丈夫助けてあげるからね」
「迷子じゃないし、テイマーなんてイヤだ」
「・・・それは失礼。おい、行こう」
少し筋肉ムキムキぽいシャケノミーと呼ばれた人が私の言葉を聞いて立ち去ろうとしてくれた。しかし、
「いいや素質がある」
横に鹿モンスターを連れたユウージオと呼ばれたテイマーのひとがむきになって答えた。それに、私も反論をかえす。
「素質なんていらないし、絶対なるつもりなんてないよ」
あ、ヤバい。ズクン。ってした。気持ちが悪い。吐きそう。
「絶対なるべきだ」
「絶対に嫌」
頭が痛い。足が震える。体が寒い。あれ?今夏とか言ってたよね?
「テイマーになるべきだ。こんなにモンスターを従えられるんだ。従えさせる力が強い。それは人間にとって強みだ」
「ならない」
体に力が入らない。その場でへたりこんでしまった。
「お前達何してるんだ!」
チェルキョさんが、顔と声だけ銀さんに似てるけど性格全然銀さんに似てないチェルキョさんが私に寄り添ってくれた。
「モナちゃん!」
「お、おい。どうした。顔が青いぞ。すまん、その、俺たちは!」
パーティーリーダーのマジーニと呼ばれた人が今来たばかりのプントさんに慌てて今話した内容を聞かせた。迷子だと思って声をかけたとかそういう話だ。
「嫌だ。なんでテイマーなんかに」
私は誰に言うわけでもなく地面にへたり込んだまま呟いた。タイモちゃんもへたり込んだ私にあわせて地面に座って私の顔を覗こうとしている。タイモちゃんの背中に乗っていたはずのツキノさんもセイリューちゃんも下にいる。スズちゃんも、いる。
ああ・・・ああ・・・・
見たことないハズなのに知っている。私の目の前に、モンスター達の死骸の記憶が蘇る。ああ。ああ。ああ。ああ・・・・・・・・・・・。私が作った、作ってしまったモンスターの死骸だ。
「私は・・!私っ・・・っ!!絶対にテイマーになんて、なったりしない」
も・う・二・度・と・な・り・た・く・な・ん・て・な・い・
地面に倒れこむ瞬間にミギィさんとレフティさんが叫ぶ声を聞いた気がする。見えたのは冒険者達に鬼のような形相で走って向かってくる熊獣人。
違う。
ミギィさんもレフティさんも、今はここにはいない。でもこの叫び声は昔に聞いた。私が忘れた記憶の音の1つ。
熊獣人・・・あれはユーグリッドさんじゃなくって・・・。トウシャくんのお父さんの・・・。
「モナ!」
「モナちゃん!」
アンドレ、ディオさん、私ね・・・・・。
▼モナは気絶しました。▼
モンスター達は喋らないように頑張っていたけれど心境は・・・。
スズ「もなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!いやぁぁぁぁぁ!!!」
タイモ「えっえっええええ、あのっええええええなのよ」
ツキノ「!!!!・・・!?!?!?」
セイリュー「(倒れたことに驚きすぎて絶句)」
ロッテリーの街についての捕捉。
現代ではさばいたお肉を売るのがお肉屋さんですよね。コロッケとかお惣菜売ってたりもする。でも冷蔵保管が難しい場所などでは鳥とか生きてるものをその場で絞めてその日食べるものだけを購入。もしくは生きてるまま購入して、後日食べるときに自分で絞めてさばくのが、昔スタイルです。
ロッテリーでは途中まで大きな街に発展していたので、冷蔵管理できているお店があるのですが、昔ながらのそういうスタイルもまだたくさん残っているという街になっています。おばちゃんおじちゃん多いから昔ながらのスタイルの方が新鮮だし好きだ!という人がそこそこいるのです。
むしろ貴族なら新鮮じゃないと!が強いので貴族街に近いほうが多いです。それもあってかモナはここに来てから貴族街方面にはミギィやレフティに連れていってもらったことはありません。
冒険者は食べ物がないところにも行って食料調達とかしてきたのでスズメも食べたことがありますが、基本的にこの世界の肉屋でスズメは売っていません。冒険者の勘違いです。大きくなる前の小鳥だろう、ぐらいの認識で喋った。
ちなみに肉屋で主に売られる鳥は、ガチョウ、アヒル、ハト、です。
なんでこんなことここに書いたかって?本編にたぶん出さないからだよ!
(^ω^U)ふぅん。
次回はまた明日!