第198話
大きくなったトンカチというかハンマーというかいや、やっぱりトンカチだなっていう魔道具じゃないけれど魔道具っぽく見えちゃう魔法のかかった謎のトンカチXをブォンと振り回した。
ボフッン!バチコーン!バチコーン!かーーーーーん!
おお、良い音したなぁ。2回音が鳴ったバチコーンは、ゴングに行くまでのメーターのような物に当たった音だ。妨害ほどではないが、トンカチの威力が衰えるようになっていて、その試練を乗り越えて行け!的なゲームなのだろう。私は1回で出来てしまったけれど。
「やるじゃねーかボーズ!」
「私女の子だよ」
「いいんだよ。ガキはみーんな、ボーズだ」
どういうこっちゃい。
子供用のトンカチゲームのゴング部分がカーンと鳴ったので私は名前を記載出来る権利と賞品を貰えるようだ。ゴング部分が鳴らなくても参加賞が貰えるらしい。参加賞は飴ちゃん1個。賞品はというと。
「好きなの1つ選んでくれ」
魔道具は大人用の賞品としてしか置いてないようで、子供用の賞品は、ぬいぐるみ、お菓子の詰め合わせセット、ジェンガらしきおもちゃ、お絵かきセット、発明家ごっこセット、砂時計、鈴のキーホルダー。
うーん、ゴングは鳴ったけど私はどれも要らないかなぁ。体はしんちゃんと同じ5歳だけれど頭脳は大人コナンくん。俺には必要ないぜバーローとまでは言わないけれど、ここは無難にお菓子の詰め合わせセットにでもしておこうかな。
「キュンキュン~」
手をお菓子の方に伸ばしたらナイトフォックスのセイリューちゃんがタイモちゃんの背中からキュンキュンと抗議。こっちか?そっち?どっち?あっちか?そっかそっか、ここかー。ぬいぐるみだった。
「セイリューちゃんにあげる!」
「キュンキュン!」
ぬいぐるみは子キツネのセイリューちゃんとほぼ同じサイズだけれどとっても気に入ったようでぬいぐるみに抱きついている。おっとっと、その体制だとタイモちゃんの背中から落ちちゃうよ。可愛いけれども。
「俺も!俺もやる!」
アンドレが次にやるようだ。子供用は10歳までなのでディオさんは大人用のトンカチゲームに参加中だ。アンドレにはプントさんが隣について、ディオさんはチェルキョさんと一緒にあっちに行っている。
私はタイモちゃんとスズちゃんとセイリューちゃんとツキノさんと一緒にそれぞれを応援だ。
「がんばってー!」
アンドレのトンカチは膨れ上がったけれど私のより幾分か小さく見える。気合いを入れて、ひとふり。あらら、あんまり勢いがでなかったみたい。残念。もう1回って叫んでる。これは長くかかりそうな予感。
ディオさん達の方は先にチェルキョさんが振りかぶって打ち付けた。ボッフン!バチコーン!バチコーン!までは行ったけどゴングまではいかなかった。ありゃりゃ。次はディオさんだ。どうなるかなー。
「あれカワイイ。小さいテイマーだ」
通りすぎる人だかりの1人がそう呟くとその1人の言葉で足を止めたようで、その場でその人の知り合いはみんな止まった。それは私の真後ろだった。
「どれ」
「本当だカワイイ」
「将来有望だね・・・どこかで見たことなあるような?」
アンドレとディオさんがきになるけど、それ以上にこの声の方が気になって私は振り向いた。あっ、しまった。振り向かなきゃよかった。この人達は領主様に雇われていた冒険者、“森林の首飾り”の人達だった。
あばばばばば。
冒険者パーティー、森林の首飾りメンバー
〈マジーニイヒート〉パーティーリーダー
〈シヨトヒオ〉仲間。
〈ユウージオ〉仲間。テイマー
〈シャケノミー〉仲間。
〈ヒイカ〉仲間。
〈メルト〉ユウージオの鹿のモンスター。
ではまた明日。