第197話
クリストファーさんがこんなに困っている顔を見るのは初めてだ。どうしたんだろう。
「実は、ユーグリッドさんをお見かけしていないでしょうか?」
「「え?」」
ミギィさんと声が被ってしまった。
「今朝、騎士団の副団長室に来なかったんです。幸い昨日までに今日からの祭りの人員配備などの説明は終わらせていたのでユーグリッドさんが多少遅れても大丈夫だと私は思っていて・・・あの人、人脈が広いので、遅れてくることもたまにあったので・・・で、他の騎士団員達はお祭りの業務に先に当たらせて私は部騎士団内で雑務の手伝いなどをしてユーグリッドさんを待っていたんです。ですが、ユーグリッドさんをいくら待っても現れないので少し心配になりまして先ほど家まで行きました。しかし、どこにもいないようでして。ミギィさんはユーグリッドさんがどこにいるかご存知ではと・・・・。」
「ユーグリッドは昨日の夜見たのが最後だべ。」
「そう・・ですか」
「ミギィさん、ナエさんなら知ってるんじゃない?」
「ナエさん?どなたですか?」
クリストファーさんはナエさんのこと知らないようだ。
「レフティのお兄さんだべ。」
ミギィさんは自分の元夫とは伏せて置いた。うん。こういう場ではその方が単純明快だよね。
「その方がなぜ?」
「昨日ユーグリッドん家に泊まって、朝、ナエがユーグリッドを見送ったと言ってた。ナエに聞けばユーグリッドが変な行動とかしてなかったか聞けるかも知れないなぁ」
「その方は今はどこに」
「祭りのどこかに・・・」
絶望しかない。祭りでなければ人探しが簡単だったのに、その4~5倍の人だかりから1人の人間を探すなんて大変すぎる。そうじゃなくても木や建物と違って人間は動く。迷子はその場で動かない方がいいとよく聞く話だけれど、探されている事を全く知らない人に向けて動くなと言うのは、暖簾に腕押しというかぬかにくぎというか。行動を制限出来るはずもなく。
「ミギィさん、私はその、ナエさんという方の顔を存じあげないので一緒に探しては頂けないでしょうか?」
クリストファーさんはおずおずと言った。それを見てミギィさんはクリストファーさんに渇を入れた。
「騎士団がそんな弱々しくしてどうする。アタシらはこの街で、騎士団に助けられて生きとる。ええか?アタシは一般市民で、クリストファーは騎士団だべ。命令したって誰も怒らん。もしかしたら一大事かもしれないし、なんでもなかったら笑いあえばいい。な?アタシも気になる。もっと自分の勘信じて、堂々とするべ!さあ、アタシはなにすりゃいいべ!」
「ミギィさん!ユーグリッドさんを探す手伝いを頼みます!」
「よく言った!じゃさっさと行くべ・・・って。しまった。ノリでつい言ってしまったけんども、レフティもいないし、モナちゃん置いてくのは気が引けるべ」
「私なら大丈夫!みんなが一緒だし寂しくないよ」
「モナちゃん、イイコだべ。ん。すぐに帰ってくるかんな。あ、待てよ?テンクウ、ナエの匂い覚えてたりしないが?」
「・・・くぅん・・ワフッワフッ!」
テンクウちゃんは少し考えた素振りを見せたがすぐに元気な返事を返した。この反応は覚えてるよ!と、言うことだろう。アンドレ達がいるからこの対応だけど、これは、つまり?
「そったら、テンクウがいた方が早く済むべ。モナちゃん、テンクウ連れていってもいいか?」
「私はいいよ。テンクウちゃん自身が行きたくなかったら行かなくていいけど、テンクウちゃんはどう思う?」
「ワフッ!ワフッ・・!!」
準備万端!行けるよ!とでも言うように見た目ゴールデンレトリバーでモンスターのゴールデンブレッドドッグなテンクウちゃんは背筋ぴーんとおすわりのポーズになった。頼もしい!
『モナママ、モナママ、あのねあのね』
フテゥーロちゃんがとっても小さい声で語りかけてきた。
『どうしたの?』
『ぼく、わたしも行きたい。テンクウと行ってきてもいい?テンクウは匂い敏感だけど、ぼく、わたしならお空から見ることが出来るよ。力合わせたらすぐにクマの人も、昨日の人も見つけちゃうよ』
なるほど。
「ミギィさん」
「どしたべ?」
クリストファーさんやディオさんやアンドレには聞こえないようにこっそりとミギィさんと話をした。テンクウちゃんとフテゥーロちゃんは、ユーグリッドさんもしくはユーグリッドさんの事を知っているかもしれないナエさんを探す手伝いをすることになった。
「助かります!」
クリストファーさんは笑顔が戻ってきた。
「行ってらっしゃい」
レフティさんに続いてミギィさんとテンクウちゃんとフテゥーロちゃんが居なくなってしまった。
遅くなりました~。次回は明後日更新します。
テンクウ「ボクの鼻は一級品だぞ!ナエって人もすぐに見つけちゃうもんね。ユーグリッドさんだってスグ見つけるに決まってるんだから!」
フテゥーロ「あのね、スズちゃんが心配してたの。モナママがユーグリッドさん心配するからもっともっと早く見つけないとって言ってたの。だからそれができるのぼく、わたしだからモナママに言ったんだ!えへへ!」
スズ「スズね、とっても嫌な予感がするの。とっても苦しくなるような、嬉しいこともおきそうな。でも、涙が出るかもしれないような?よくわからないけど、早く今日が終わればいいのにって思ってるの。」
( ・ω・)ではまた