第196話
イベント会場に来た。来ました。ディオさんの気になったトンカチゲーム!
「ふむ、ハンマーですね」
「ハンマーだなぁ」
「ハンマーだね。」
「だから言ったべ。ハンマーだって。」
「そっすねー」
トンカチゲーム大会って言うから日本でも見る工具用のトンカチ・カナヅチぐらいのサイズを想像していたけど想像の何倍も大きかった。なるほど、ドワーフハンマー大会って付けたかった意味がわかるよ。うむうむ。ピコピコハンマーのサイズの大きめな木鎚のハンマーだ。
「そっちは大人のやつでな、あっちが子供用だべ」
教えられた方を見ると普通のトンカチサイズが置いてあった。え?子供に本物のトンカチ握らせるの?凶器持たせるの?狂気の沙汰じゃない?ワニワニパニック的なもっとこう木鎚の本体にハンドグローブのガワを被せたようなのを期待していたのに、単なるトンカチ。
「モナちゃん、顔すごいことになってる~」
チェルキョさんにケラケラ笑われた。いや、だってさぁ。まさかあんなにトンカチトンカチしてると思わなかったんだもん。
「安心し。あれには魔法がかけてあるべ。」
「そうなの?」
「そうなんですか!?」
私もアンドレも興味津々。どういう魔法だろう。プントさんとチェルキョさんはミギィさんと同じで知っているらしく、ディオさんとアンドレと私はそのトンカチの前まで進まされた。テンクウちゃん達も後ろから着いて来てくれているけどトンカチには興味無いみたい。
「よぉミギィ。大勢引き連れてんなぁ」
「トンカチゲーム初めてだもんでこの子達に触らせてやって欲しいべ」
「いーよいーよ、是非ビックリしてくれ。」
そんなこと言ったら身構え過ぎてビックリなんてしなくなるだろうに。このオジサン素人だな?と、思った自分ごめんなさい。触って見たらビックリ。
「おわぁぁぉぉおおぉ??」
触ったら変な声が出てしまった。ふぇぇぇ。
「はっはっはっはっはっ!」
「にゃははははは!そんな声出したの初めて見たべ」
トンカチゲーム係のオジサンもミギィさんも爆笑。いやいやいや、だってさぁ。
「そ、そんなに変な感触なのかい?」
つられ笑いしそうになってるディオさんが聞いてきた。触ればわかるよ。触れば。
「・・・俺、触りたくない」
逃げないで欲しい。男だろ!アンドレ!
「大丈夫大丈夫、大したことねーべ」
ミギィさんがなんてこと無く私の手からアンドレに手渡した。
「んっ~~~~っく・・・!」
「はっはっはっはっはっ!お兄ちゃんも苦手か」
「ミギィさん、私にもお願いいたします」
アンドレが耐えたのを見てディオさんがミギィさんに
向かってこの手に乗せて欲しいと、両手のひらを差し出した。めっちゃ目がキラキラしている。未知との遭遇に沸き立つ冒険者のような目をしているディオさん。やっぱり男の子だなぁ。高校生ぐらいだもんね。
ミギィさんが、はいよ。とアンドレからディオさんに渡すと・・・。
「・・・・ん?こんなものですか?」
「お兄様!普通に持てています!?」
「なんでぇ!?」
「え?いや、私にもサッパリ。これに悶絶してたのですか、アンドレもモナちゃんも?」
「んだべ」
「だっはっは!」
オジサン笑ってばっかだな。
「大した加工魔法してないんだけんど、子供にはくすぐったく感じるらしいんだ。大人にはほとんどわからんくてな、手の皮の厚みで感じ方が変わるらしいべ」
なんだって!?私がこの中で一番不利じゃん!子供用のトンカチなのに子供になればなるほど不利ってどういうこと!?
「んだけどな、ちゃーんと小さい子になればなるほどこのゲームには有利になる加工してあるんだべ。もっかいモナちゃんこれ持ってみ」
「んぇぇ・・・」
またもにょもにょするような独特のくすぐったさがあるアレを握らなきゃダメなのか。ツラタン。
「持ってから5~10秒ほど待つと、ホレ。な?」
「な!?」
「おお!?!?」
「おー!これはまた、素晴らしい」
アンドレ、私、ディオさんは、私の手に持ったトンカチの変形具合におののいた。
「くすぐったく感じるのは加工を施す魔法の粒子がトンカチにまとわり付いているからでそれと子供の中の血の巡りを感知すると、トンカチの周りに大きな灰色の膜が現れてなぐんぐん、ほら、ぐんぐん大きくなってくべ。」
持ち手のサイズは変わらないし重さも変わらないけれどトンカチの周りに現れた灰色の粒子はトンカチの叩く部分の鉄槌がピコピコハンマーなど目じゃないぐらいに大きくなっていった。フテゥーロちゃんとスズちゃんの目が見開いていく。目が飛び出ないか心配だ。
「すごい!すごいぞ、モナ!これはモナの魔力が出してるのか?」
「いいえアンドレ、魔力をこのトンカチが吸っている気配はありません。加工、と、言っていましたが、魔道具・・・ではないのですよね?」
ディオさんの頭の上に?が見える。気がする。私もハテナだよ。
「これはだね」
「あれ?ミギィさん!良かった。お聞きしたいことが」
説明がオジサンから放たれようとしていたけどそんな時に限って知り合いが近くを通りかかるというミラクル。
早足で横切ろうとしていたけれどミギィさんや私達を見つけたその声をかけてきた人はナカバさんの恋人のクリストファーさんだった。
「なんだべ?」
「それが・・・知っていたらいいんですが。」
遅くなりました。また明日も更新予定です。また遅くなるかも??