第184話
コウチンさんは結局、自身で保有している魔法を駆使して私達の近くで見守る、ということになった。
「・・・コウチンさん?いる?」
「見えるか?」
「ぼく、わたしはなんとなーくここかなーって場所分かるけどまったく見えナーイ」
「ボクは風の流れが変だからこの辺かなって言うのは分かるよ!」
「アタチは全くわからないのよ」
「よぐわがらんけんど、つまり護衛ってことだべ。」
「きゅんきゅーん!」
「モナちゃんは見えるか?」
ミギィさんに聞かれた。
「全然わからないのに声だけそっちからするから違和感・・・」
「良かった。俺の魔法の腕が落ちたのかと」
コウチンさんがそういってホッと胸を撫で下ろした。・・・たぶん。だって見えないんだもん。そんなことをしていたら馬車の音がこちらに近づいてくる。止まった。アンドレとディオさんが到着したようだ。
「しっ、ええかみんな、アンドレ様とディオ様と一緒に祭り回るけんど、お二人はモンスターのことは知識程度にしか知らねぇべ。好意的に取ってもらえるかもわがんねぇから、動物のフリを忘れたらお祭り見学さっさとやめちまうからな。わがったな?」
レフティさんが最後の確認として忠告を語ってくれた。人が近づいてくる音が聞こえているのでみんな無言で首だけ縦に降った。ドアの叩く音が家に響いたように感じた。
「おはようございます。ディオ様とアンドレ様をお連れいたしました」
ドア越しに聞こえるこの声は、あっこの世界の銀さんことチェルキョさんの声だ!レフティさんがツキノさんを抱き抱えたままドアを開け、チェルキョさんに挨拶をした。
「おはようございます。アタイらバタバタとしてしまって、もうちょっとだけ待っていてもらえますか」
「そうでしたか。お二人にお伝えしますね。・・・・あの不躾かと存じますが、お祭りにはこの子達も連れて行かれるのですか?」
レフティさんに抱っこされたツキノさんを筆頭に動物大集合しているのがドア越しに見えないわけはなく、当然の質問です。
「そうですよ」
「・・・そ、そうなんですか。」
驚いているようだ。まあね、普通はペットと一緒にお祭りはいかないか。日本だと人混みに蹴られたり潰されたりするから基本的にいないよね。動物同伴。・・・この反応からするに、日本と同じでお祭りに動物同伴ほとんどいないのでは?え、大丈夫なの?でも設営とか手伝ったミギィさんとレフティさんが、連れていったらダメだとはまったくもって一言も言ってない。・・・いいのかな?
チェルキョさんは馬車に戻って説明しているようだ。
「ミギィさん」
「ん?」
ミギィさんはハンカチやテンクウちゃん達のおやつをを手提げバッグに入れていた。
「テンクウちゃん達本当に連れていって大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!いざとなったらアタシらがどうにかすっからモナちゃんは心配せんでいいかんな。ペットとお祭り巡るなんてこの街じゃ普通のことだ。なんせ昔はテイマーの街だったんだべ?この街じゃ日常も祭りもモンスターと一緒にサービス受けれるのが普通だかんな。」
「おおお!なるほど!」
杞憂だったようだ。
「モナちゃん、お祭り楽しみだね!喋らないように頑張るぞ!ワフッ!ワフッ!」
「モナちゃん、お二人に準備出来ましたっつってきてくれな」
「うん!」
夏祭りと言うからには生粋の日本人の私のつたない想像力だと、赤ちょうちん、太鼓、金魚すくい、わたがし、りんご飴・あんず飴、射的、カタヌキ、焼きそば、おみこし、盆踊り、とまぁそういうお祭りを想像してしまうわけで。
「はわわわゎわわ!!!!!」
「モナ!あれはなんだ?お兄様!あれは見たことないです!」
ロッテリーのお祭りは私の知っている夏祭りではないことに今更ながら気付き、感嘆と声を出してしまうほどに異世界だった。もうなんといってもカラフル!これに尽きる。異世界に来て一番の感動を感じたといってもいい!
海外のお祭りはテレビでしか見たことなかったけれど、リメンバーミーの死者の日とか、ラプンツェルのランタン飛ばしとか、エネルギッシュなリオのカーニバルとか、そう言うのに少しずつ似ている気もするけれど、ここのお祭りはココでしかみれない特有のものだとわかる。
アンドレがお祭りを色々見たことないのは年相応だから驚いてるの私と同じだねってなるけれど、ディオさんも少し口のしまりが悪くなっちゃうなんて、ロッテリーの街のお祭りはスゴいってこと!
「カカカカカ!どーだべ!祭りの飾り付けとか設営アタイも毎年手伝ってんだけんど今年は色々あってずれたからな、いつもより気合い入れ直したべ」
「そうなんですね、とても素晴らしいです。」
お祭りはこれから開始の合図とともに開催される。まだなのに目から楽しすぎて目が回りそう!
ねぷたのような立体のハリボテで出来た1つ目のモンスターサイクロプスがスイカみたいな野菜を抱えて嬉しそうにしている物や、野菜や果物を食べても安全な接着剤みたいなものでくっ付けてピカソが描きそうな独創的な絵のようなかんじの立体展示物など、お祭りっていうか、野外芸術劇場といっても過言ではない飾り付けがあったり、たぶん魔道具というものだろう、人が近づくと勝手に風船が生成されて近づいた人がそれを取らないとそこのお店がどんどん風船で飾り付けされていく機械みたいなものがある。今は店員さんが試運転してるだけのようだけれど、その風船ほしいなぁ!
「モナ!モナ!早くお祭り回りたいな!」
アンドレがニコニコしながら私に言ってきた。出会った頃は少し頬が痩せこけていたけれど、こんなにもっちりふんわりして元気いっぱいの普通の少年になった。ニコニコしてるとこちらまでつられちゃう。
「うん!楽しみ!飾り付けに野菜や果物が多いけどなんでだろう」
「あんれ?話してなかったっけか?夏の収穫とこれからの、秋の実りに感謝して祭りするんだべ」
なるほど!
「あれはどうしてサイクロプスなのですか?」
うんうん!気になるよね!
「あれはアレ作ったやつの趣味だべ」
思ってない答えが帰ってきてアンドレがポカンとしていた顔が妙に可笑しかった。
明日も更新予定です
コウチン「このあとも無言だが俺はちゃんとみんなの後をついていっているからな!忘れないでくれ!な!」
モナ「アニメや漫画だとよく人間に変身するのがモンスターの定番だけど、そういう魔法はないの?」
コウチン「無くはないが魔力消費量がハンパないから数分変身したらそれから丸1日動けなくなる・・・たまに死にかけるやつも見かけるぞ」
モナ「ええっ」
コウチン「なんだ俺の人の姿気になるか?」
モナ「このあと倒れられたら護衛の意味がなくなるから結構です」
コウチン「良かった。俺はこの姿が好きなんだ。成れと言われても本当はなりたくなかったんだ」
テンクウ「ボクはその魔法自体使えないから無理~」
こういう会話もあったとかなかったとか。