第182話
コンコンとドアを叩く音がした。レフティが出るとそこには。
「おはようございます」
「あっナエ。」
「お兄ちゃんって呼んでくれよぅレフティー」
「んだっけそんなん、年齢1桁の時ぐらいしか読んだ覚えないべ。」
「つれないなぁ」
「それよかなんだべ?こん朝から。家には入れねぇべよ?・・・ユーグリッドは?まっさか、ナエ追い出されたーとか言わねぇべ?」
「はっはっはー!まっさかー。家に入れてくれないのは悲しいけど、追い出されたりはしてないよ。口は悪いけれど親切に部屋を貸してくれた。ぐっすり眠れたよ。忙しいみたいで、もう朝起きたらいなかったけどね。」
ナエはウソは言っていなかった。
「・・・んじゃあ、何しに来たんだべ?」
「お礼だけ言いに来たんだ。ミギィにお礼言っておいてくれる?朝はいつもバタバタしてるの知ってるから伝えといてくれるだけでいいよ。屋根のあるところで寝れて本当に良かった。」
「わかった」
ナエはその返事を聞くとすぐにそこを立ち去ろうとした。しかしレフティは何か違和感を感じ声をかけた。
「ちょいまち」
「ん?」
ナエはにこりと振り返る。レフティは昔とは見た目も喋り方も変わってしまった兄に思うところがなかったわけではない。
「昔、アタイらを捨ててまで王都で始めた店は今は休暇中なんか?」
仕事への意見の違いなどよくある話で、ナエも店という物へのこだわりがあった1人だった。レフティと同じだった口調は王都と同じものを使い、ミギィと離婚してまで始めた店はその後に軌道に乗ったようだと人づてに聞いていた。その兄が着の身着のまま迷子になったとして、心配して付いてきてくれる人くらい1人くらいはいるだろうにと昨晩思ったからだ。
「そうなんだよ。ながーい、ながーい休暇さー。」
ニコニコしながらその言葉にはトゲがあるのがよく分かる発音だった。
「それって・・・」
「またなんかあったら1泊させてくれ。今日の祭り楽しんだらケントゥーキー向かうよ。じゃなー。うぇへへへ」
レフティはナエの後ろ姿を少し見てから静かにドアを閉めた。
「レフティ?さっきのナエだべ?なんだって?」
レフティは後ろから声をかけられて少しびっくりした。
「どったべ?」
「いや、すまんすまん。屋根のある部屋で寝れて良かったってゆーとったよ。そんことよりも、ナエの店、潰れたってしっとったか?」
「えっ、そーなんか?それでここに戻って来たんか?」
「いやーここに来たのは慰めて欲しいからとか言うんは絶対違うと兄妹の血が違うと言っとるべ。」
「そんな血あるのかぁ?」
「騒ぐべ?」
「兄弟居ないから分からんべ。」
「そらそーだ。」
そこにモナが2階から降りてきた。
「ミギィさん、レフティさん!おはようございます!」
「おはようさん」
「おっモナちゃん朝から気合い入っとる。かわええカッコしてるべー」
「ほんれ、テンクウ達も朝ごはん食べてるべ。モナちゃんも食わんとアンドレ様達来ちまうよ。」
「あわわわわ!」
「モナママ来るの遅いよ~ぼく、わたし食べ終わっちゃうんだから~」
「フテゥーロちゃんまで!?あわわわわ!」
バタバタとしていたらミギィもレフティもナエのことはまた時間のある時に考えればいいと頭のすみに追いやった。
「もうすぐアンドレが来るからね。みんな!今日は一緒に行動するけど、ミギィさんとレフティさんの言うことをちゃんと聞いて行動する事!いいね?」
「ワフッワフッ!」
テンクウちゃん、いい返事。
「わかったのよ」
タイモちゃんもなかなかだ。
「ぼく、わたしが一番のいいこになる!」
海賊王に俺はなる!テイストだね。
「・・・」
「このツキノさん言うんは、大人しいからアタイが常に抱えとくから安心しといてええべ」
ツキノさんは首をたてに振ってモナの目を見つめた。うん!大丈夫そうだ!
するとドアを叩く音がかすかにした。アンドレ?にしてはちょっと音が小さすぎるような?
「アタシがでるべ」
ミギィさんが玄関を開けるとそこにはアンドレではなく、3匹の動物モンスターが居たのだった。
明日も更新予定です




