第173話
「ナエ、モナちゃんだべ。モナちゃん、このダメ人間はナエだべ。」
「こ、こんにちわ」
「よ、よろしくぅ~・・・ミギィ~いつの間に子供を・・・俺というものがありながら」
「いつの話してるべ。別れてから一体何年経ったと思ってる?モナちゃんはアタシの子供にしちゃ若すぎっだろが。まったく。」
「うそだうそだうそだぁぁ。あっレフティはどこだ!レフティに聞けばわかるハズ」
元・奥さんを嘘つき呼ばわりしているなんだかもっさい男性、ナエさん。元・夫婦・・・と言っても夫婦だったのは20年近く前だそうだ。
こんなもっさい人がミギィさんの元・ダンナさんな上、レフティさんのお兄さんとか信じられない。まるでダメなオトコ。マダオにしか見えない。マダオ。ホームレスに片足突っ込んでそうなイメージ。ギャンブルして身ぐるみ剥がされるのが日常になってそうなイメージ。つまり、マダオ。もうマダオにしか見えない。髪がなんだか長いマダオ。
「あれ?おかしいな?」
「臭いが消えたにゃ」
テンクウちゃんとビャッコくんにはもう一度嗅いでもらっていた。2人ともスゴい子達だから、何か“ネズミ”について新しい情報でも引き出せないかと思ったからだ。
「モヤも消えちゃった」
「でもこの人どこかで見たことあるから、あんまり近づいちゃダメだよ」
「う・・・・うん。」
「ところでケンティーキーはどっちだったっけ」
「あっちだべ」
「あちゃー、今からそっちは遠すぎるか~。」
「んなん、聞かなくてもわかることだべ?」
「なーなー、今日泊めてくれないか~会ったのも何かの縁だし!な!」
「いつも野宿して慣れてるヤツがなーにを抜かしとるんだが」
「いいじゃんか~、な?昔のよしみだろ~?」
私、ネズミのこととか無くてもこの人の言動とか見ててあんまり好きになれないなぁ。うーん。このぐにょぐにょしたような不思議な動き。まさかとは思うけれどお酒呑んで酔っぱらってる?もしくはムンクの叫びの動きのマネ?動きがキショイ。言葉には出さないよ。心の中だけでも言わせて。私は苦手ですこの人!!
「他当たってくれろ」
「えええ~」
「こんな大人、子供ん教育によくないべ。だっから本当は挨拶もしたぐながったけんど、モナちゃんが構わねーよっつったから会わせたんだベ。」
「そーなの、ほーん。モナちゃん、改めてちゃんと見るとカワイーねぇー。オジサン愛でたくなっちゃうなーははははは」
「・・・・」
「こらぁミギィー、ミギィがそゆことゆーから、モナちゃんは冷めた目で俺を見つめているじゃー、あーりませんか!な!モナちゃん!俺は別に悪い大人じゃーないんだよー?だからね!屋根のあるところに泊まりたいなーダメかなー、いいよねー?」
「モナママ、うめぼしみたいな顔になってる」
「モナちゃんコイツは泊めないから安心せぇ。っったく!ナエ!ちょっとこっち来い!」
「ちょ、なんだよーー、ゴマすりしてたのにってイタタタタタ!耳!千切れる!止めて!耳!引っ張るの!止めて!」
おお、ドラマとかアニメとかでたまに見る耳を引っ張って裏に連れてく光景だ。はわー。スゴいもんを見たな。またミギィさんはナエさんと2人きりで話始めてしまった。
「テンクウちゃん、ビャッコくん、どうだった?」
「ダメニャ。さっきと全然違う臭いがまとわりついてる感じで鼻がダメになったような気がする。」
「ボクもわかんない。臭い急に消えちゃった。おかしいなぁ。」
「おねがぃだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
スゴい大声で地面に突っ伏したナエさんがソコに。
「今日だけだから!もう来ないから!今日だけだから!泊まらせて下さいミギィさまぁぁぁあ!!!」
スゴい大人がいたもんだ。あぜ道というか土の地面にズガシャァァとスライディング土下座するかのごとく、突っ伏している。ミギィさんも呆れて口が開いてる。
周りは結構民家が多いからあんまり声を張り上げたんで、家の中にいた人達が何事かとそろりそろりとこちらを伺っている。夕方だし、帰宅してる人が多いからだろう。このままだと野次馬に囲まれそうな気配。
これはあれだな。もうこのめんどくさそうな男性、ナエさんを泊めなきゃいけない方向に行きそうだなー。
「わがった。ただし、条件だべ」
「泊まれるならなんでも聞く!!」
「それはな。」
ナエさんの名前はレフティさんのお兄さんなので、“左”を分解して“ナ”“エ”にしました。ナエ。
サウスポーとか、クズ、ニート、ダメオトコ、ゴミカスとか、しか出てこなかった。さすがにクズとかは思い付いたけど思いつくだけで本当にしようとは思ってない。思ってないけど、頭から離れなくていい案が出ない変なループというか、なんかもうワケわかんなくなっていた今日。
どうにかなれ~(ハチワレ)
さて、結局ナエに見えたネズミは一体なんだったのか次回につづく。
明後日更新予定です。