第155話
アンドレの回(終)
チェルキョとモナとはムカムカするが、お兄様とモナとの組み合わせはムカムカはしない。むしろ俺の好きな2人が仲良くしているのはいいことだし、見ていると幸せになれる。
でも昨日は胸がギュッとなった。どうしてギュッとなったんだろう。モナがもし俺より年上でお兄様と釣り合えるくらいの年だったなら、多分、俺はお兄様とモナとが結婚したら喜んで祝福すると思う・・・なのに。
ムカムカとは違う。悔しいに近いような、切ないに近いような、この胸を締め付けられる変な感じはなんだろう。多分、大したことはない、だろう。うん。大したことはないはずだ。いや、でも、うん。
・・・・・・モナは俺と結婚した方が幸せになれるのでは?いやいやいやいや、あんなに完璧なお兄様ならモナを幸せにしてくれるはずだ。・・・・でも、俺と年齢近いから俺の方が・・・・・。いやいやいやいや!
「アンドレ様?お顔が面白くなっておりますが止めた方がいいですか?」
「聞くくらいなら止めてくれ!!」
なんでリネアは変なところで気を使うんだ!恥ずかしいだろうが!!昼食を終えて部屋に戻る。いつもは散歩を少ししてから部屋に戻って昼寝をするように言われているからしているが生憎今は雨が降っている。
「坊っちゃま、雨が止みそうです」
「そうか」
「あら、虹ですわ」
「本当だ。キレイだな。」
モナとこの景色を見たかった。お兄様は領主様との話し合いは上手く運んだだろうか。隣にいるのがリネアとプントか。・・・はあ。1人よりマシだが。・・・そういえばあの髪飾り似合っていたな。明日も付けてきてくれるだろうか。まてよ、俺はモナにネックレスを2個ももらってしまった。魔除けだお守りだと。
明日どっちを付けていこう。というかどんな服装が正解なんだ?今着ているこういう服でいいのだろうか?髪飾りを買ったあの日の格好は俺は何を着ていたっけ!?
「プント、無理だ!お昼寝は出来ない!」
「!?!?何故ですか!?」
「俺にはやらねばならないことがあったことをすっかり忘れていた。寝る間も惜しい!」
「な、なんと。やらねばならないこととは、それは一体なんなのでしょうか?」
「お祭りで浮かないための服装選びに決まっているだろう!!!」
「「服装選び」」
「そうだ!モナに舐められては困る!」
「舐められ・・・え?」
プントはポカーン。
「それを言うなら人に好かれる服装を知りたいと言ってくれた方が・・・」
リネアは若干不満顔。
・・・・・?なんでだ?俺は間違ったことは言ってないと思うのだが???
「とにかく明日のお出掛けの服装を今から決めたい、と言うことですわね」
「さすがリネアだ!話が早い!」
「私は坊っちゃまの成長に涙が出そうです。坊っちゃまのお子様を見れるまで私は死ねません!」
急になんの話だ。熱が入って少し怖いぞプント。
「プントさん、泣くなら私がユーグリッド様と結婚した時にお願いいたしますわ」
「えっ!?いつの間に婚約を!?」
「リネア!?あの熊と結婚するのか!?」
「いえ、まだなにも言われていませんが、お祭りを一緒に巡る約束をしました。きっとプロポーズのためです」
それはまだ時期尚早過ぎるのでは?プントもただのデートでは?と言っているが当のリネアは聞く耳を持ち合わせていない。まあ、知り合いが幸せをつかめたら俺も幸せだ。まさかリネアが兄君が仰っていた“愛の狩人”に変貌してしまうとは思わなかったが。
兄君を追いかけている令嬢がとても怖いと聞いたことがあったが好かれていて怖いものなどあるものかと思っていた過去の自分に言ってやりたい。
リネアの熱ぶりは結構怖い。
でももし、モナにそれを俺に向けてくれたのなら・・・・・・。
「坊っちゃま、お顔が真っ赤ですが体調が悪いのでは」
「ちちちがう!大丈夫だ!うん!さ、部屋に行くぞ、リネア他のメイドの手配を頼む。色々着てみたい」
「かしこまりました。」
ユーグリッドを追いかけ回していなければただの優秀なメイドなんだけれどな。
祭りに浮かれている。俺もリネアも。この館自体も。
「祭りが終わっても帰りたく、ないなぁ・・・。」
雲が切れて窓辺に光が差し込んだ。
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