第154話
アンドレの回です。
初めてモナと顔を合わせて喧嘩をしたあの日俺はこう思った。
ヤベーヤツだ。
王族とは知らなくても貴族らしさはにじみ出ていたはずだ。どんなに俺が痩せこけて性格が悪かったとしても、だ。貴族侮辱罪は誰でも知っているひとつの罪だ。誰でも知っている。なのにモナは知らないようだった。だからこそ思う。ヤベーヤツ。
しかし今ならこう思う。アイツも苦労してきたんだから、あの態度も納得だ。大体、俺が偉そうにし過ぎたのが悪い。お兄様達にも『貴族であれ、王族であれ、周りを見よ。全ての事柄は、自身の糧にせよ。』と言われてきた。俺は子供過ぎた。いや、まだ8歳だけれども。
まだ先の話だけれど、俺はモナみたいな人と結婚したいと最近思う。でもモナとは貴族と平民という差があるから俺が市井に下らないとモナ自身とは結婚は無理だろう。なにか特殊な事態が起きたりモナが貴族にならない限りは、多分。
でも平民も悪くないかなと最近つくづく思っている。あの2人のお陰だ。ミギィさんとレフティさんと出会えたことは俺にとってとても良いことだと思う。これも運命的な出会いとでも言えばいいのだろうか。俺の恩人がモナの保護者なのだから。
・・・今日のアップルパイ、すごく好きな味だ。甘すぎず、回りがサクサクして・・・モナが食べたら「これは止まらない!うままま!」とか言いそうだ。ふふっ。おっと、隣でリネアが見てる。
「トリアンゴロ」
「アンドレ様~いかがデシタ~か~?」
厨房の仕事が一段落して俺の顔を見に来てくれたらしい。
「このアップルパイはとても好きな味だ!明日お祭りに行く前にモナに手土産で持っていきたい。朝焼きたてとか・・・出来ないだろうか?」
「おまかせ下さ~~い!!」
白い歯をキラッと光らせながらニカッといい笑顔で答えてくれた。新しいこの料理長は言葉はカタコトだがとても最高の料理人だ。前任のやつが居なくなって本当によかった。
これを食べたらきっとモナも俺を今度こそ見返してくれるかもしれない。友達なのは嬉しいが、最初の印象が悪すぎて、俺の事を見るモナの目は未だに厳しい目で見ている気がするんだよな。
俺の方が年上だと思ってなさそうな顔を向けてくる時があるんだ。俺はもっとモナと仲良くなりたい!このアップルパイで距離を縮め、られれば・・・ムリか?いや、頑張るんだ俺!
「トリアンゴロよろしく頼むぞ、ごくん!」
うまい!
「ハイ!」
おっと、口にリンゴ煮が・・・プントが口を拭いてくれた。そこまでしなくていいぞ。今日はプントとリネアはここで俺と過ごしてくれる。お兄様にはあの口調が砕け過ぎた男、チェルキョが一緒だ。アイツなんなんだろう。リネアやプントがメイドや執事のデフォルト・・・通常だと思うのだが、チェルキョはちょっと違う。話方が砕け過ぎていて時々戸惑う。
お兄様と幼なじみらしいし一応貴族だけれど、でもなぁ。・・・そういえばモナはチェルキョの事を気に入ってたっぽいな。なんか・・・なんだっけ。そう!「ギンサン」とか言ってた。「ギンサン」に似てるらしい。誰だよ「ギンサン」
チェルキョとモナと話しているとなんだかムカムカしてしまう。
明日も更新します