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第102話

そういえばまだタイモちゃんについてちゃんと聞いてなかったな。


キジンさんは忙しそうにタヌキとキツネの話し合いをしている。そしてタイモちゃんはキジンさんの横だ。たまにこちらをチラチラ見てくるけど私がタイモちゃんを見ると目を反らす。・・・あれ?さっきは友好的だった気がしたんだけどなー。


地下に来てから掛けた魔法だか幻術だかの効果はあれど、身を潜めるという意味でみんな静かに過ごしていた。時計がないのでわからないが10分も経っていないように思う。そこに口火を切ったのはキジンさんだった。


「そろそろ効果が切れますん。ぽん吉。」


「ぽっこぽーん」


シュパタタタタタ・・・軽い足音が響いた。ぽん吉は数匹のタヌキを連れて地下への出入り口に向かったようだった。


「モナさん」


「ふぇいっ」


呼ばれると思ってなかったから変な声が出てしまった。


「ぽん吉に地上の偵察にいかせましたん。あの者達はまだいらっしゃるとは存じますがモナさん達を帰しますん。もうすぐ暗くなりますん。」


手元でセイリューちゃんが顔を上げて私を見つめている。


「あの、タイモちゃんを連れていく話は?」


「今回は急いでお呼びしたのに申し訳ありませんがまた次の時にタイモを連れていって貰いたいと思いますん。明日と明後日は予定が入っていると伺いましたんで本日急遽お呼び立てしましたがそれ以降にしましょう。逃げる数が増えればあの方々に見つかりやすくなりますん。」


セイリューちゃんは子猫サイズと小柄だったがタイモちゃんは日本の平均的な枕サイズぐらいだ。そこそこ大きい。リスクを減らすと言う点ではキジンさんの言うことはもっともだった。というか。


「いつの間にか個人情報駄々漏れ」


「エライ?ぼく、わたし、キジンに伝えたの!えへん!」


「なるほど。理解した。」


ケセランパサランちゃんが丸いボディをプリっと膨らませてドヤァした。えへぇん!と凛々しい。そしてキジンさんの隣にいるタイモちゃんの目から光が失くなるような、ガッカリした感じが見てとれた。個人情報の流出先はわかったけれど、タイモちゃんについては納得をまだしていない。


「どうして私に頼もうと思ったのかだけでも聞かせてほしい。」


キジンさんは今連れていけないのにという理由もあってかうーん。と悩んでいたが仕方なしと心を決め、教えてくれた。


「タイモは特殊なモンスターでしてん、仲間か、お世話をしてくれる人間がいないと体が汚れて最後には腐っていってしまいますん。モンスター名は期待(エスポワール)ヒツジ(ムトン)、通称寂しがり羊、もしくはスノードロップ。花のスノードロップがモンスターに変化したのではと言われているモンスターですん。」


「アタチはタイモよ。スノーなんとかじゃないわ。」


「お可愛らしくて、真っ白でそっくりだと思いますん」


おお・・・スノードロップ。この世界特有の花かな?それともあっちにもあるかな?どんな花だろ。気になる。


「それでですねぇ、モナさんのいたところでもあると思うんですんが、絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)ってわかりますかね。この子、あたくしの調べた所によりますと、最後の1体かと思われますん。もう仲間がいないのですん。」


な、なんだって!?!?衝撃で背景に雷が落ちた気分だった。


「ここに来てからあたくし達もタイモのお世話をしてみまんしたが、体を洗おうがなにしようが汚れは消えず、むしろ増えるばかり。仲間がいないのですん。唯一助けを借りれそうなモナさんをお呼びした、というわけですん。」


なんだかマド●マギカのソウ●ジェムを思い出すなぁ。タイモちゃんの体の汚れは泥でもなんでもなくって体が腐っていっていたのか。これは・・・早く手を打とうとするのも頷けた。急いで私を呼んだのは食い止めたかったからだ。私だってそんな姿をぼーっと見ていられる程、無頓着な人間じゃない。


「時間あるし、その。お世話、今してみてもいいですか?」






「す、スゴい・・・」


私も呟く。ゴクリと唾を飲み込んだ音がどこかから聞こえた。驚愕な顔がずらっと並んでいる。タヌキやキツネ達も見学していたのでみんなびっくり顔。


「モナ!スゴいね!」


ケセランパサランちゃんが褒めてくれた。ふふん!


「タイモちゃんがっっ!キレイにっっ!なっったーーー!!」


ワアッと歓声が上がった。大したことはしていない。本当にただただお世話しただけだった。体の汚れが目立つからホコリを落とす感覚でブラッシングして、顔や足を濡れタオルでサッパリさせて上げて、おやつをあげた。それだけ。


ブラッシングし始めたらドロドロしてた部分が固まってボロりと、こ削げ落ちた時は焦った。濡れタオルでサッパリさせようと吹き始めたらタールみたいなドロっとしたものがタオルに引っ付いて少し経ったら途端におかず海苔みたいにパリパリになった。5秒くらいでの変化だったとおもう。おやつを食べ始めたら体がキラキラし始めて毛が本当の本当のほんとーーーーーっに!真っ白でキレイになった。この毛でウェディングドレス作れそうなぐらいキレイ。


なんなんだ異世界。不思議すぎる異世界。ワケワカメである。


「スゴいね。不思議だなぁ。この体、一体どうなってるんだろう。」


そう言いながらテンクウちゃんがタイモちゃんの体をフンスフンスと嗅いでいる。嗅いで理由がわかるなら私も嗅ごうかな。


「これで少しは生き延びられますん。次は1週間後ぐらいに・・・」


キジンさんもタイモちゃんもほっとしたように見えた。


「ヤダ!」


「「「えっ?」」」


ケセランパサランちゃんと、テンクウちゃんと、キジンさんと、タイモちゃんが声をあげた。セイリューちゃんはパパママと一緒にこちらを見ている。他のタヌキ達もキツネ達もまだ私達を囲んで解散していないから、注目の的状態。ちょいと恥ずかしいけど大きく息をスーハー・・・ファイっ


となりのト●ロのメイちゃん直伝。


「やだやだやだ、やーーーだーーーー!」


私はタイモちゃんを一緒に外に連れていくことに決めたのだ!!むむむ・・・難しくても!!きりっ・・!


あっだめ、恥ずかしくなってきた・・・・くぅっ!にゅぎぃぃ・・

次回は25日予定です



あとがき間違えて消してしまっていたので追記します。






タイモちゃんのイメージ。は白雪姫(白と黒と赤)と人魚姫(泡になって消える)を足したイメージ。芯のある女の子。


スノードロップは実際にある花です。知りたい方は検索検索ゥ!


スノードロップという花を引き合いに出したのは、スノードロップが死に向かう時の花だとか、花言葉が“希望”“期待”だったので。


タイモちゃんうじうじしがち予定なのでモンスター名にメランコリーとか、寂しい・切ない・困る子・などなどのイタリア語とかフランス語とか調べまくりました。いまいちピンとこなかった。


最終的にエスポワールムトンに。いつも大体そうですがみなさんが聞き覚えのないモンスター名だなと思うものが出たら大概オリジナルモンスター。エスポワールムトンもゴールデンブレッドドッグもナイトフォックスも私の考えたオリジナルモンスターです。




(追記.23.1.24)

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