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第98話

部屋のドアがノックされた。


「お兄様、今よろしいですか」


「入りなさい」


「失礼いたします」


2人の王子はどちらも子供らしからぬ言動をしていた。1人はほとんど成人だがもう1人は年端もいかないと言われる年頃。しかしそれは彼らの日常風景だった。疑問など浮かぶものなどいない。王族とはそういうものだった。


「どうしたんだいアンドレ」


アンドレが療養に使用している館の1室にディオのための執務室をこしらえてあり、ディオは視察の報告のまとめや領主の館では出来なかったことなどの処理に追われていて缶詰状態だった。


館についてや帰り支度の主はプントや他の連れてきている執事他にと色々と担当を分け担っている。そう分担しているのでディオには仕事をあまり回さないようにしてくれている。がディオもまだ若い。その為まだまだ効率が悪かった。


「俺になにかお手伝い出来ることなどは本当にありませんか」


「ありがとう。気持ちだけ貰っておくよ。もうすぐ終わるので心配は無用だ。あと、昼はすまなかったね。晩餐は一緒に取ろう」


「本当ですか!嬉しいです。そ、それとは別に、その・・・」


「・・・?」


アンドレがもじもじしたかと思ったらドアに戻って誰かに話しかけたようだった。


「シツレーいたしマース」


新しい料理長のトリアンゴロが食事を運ぶワゴンを押して入ってきた。


「お兄様と少しでいいのでお茶がしたくて。お忙しいとはわかっているのですが、休憩を、いかがでしょうか?」


ワゴンの上には数種類の紅茶の葉とポットと茶器類。それと軽くつまめるとても小さく作ってあるサンドイッチ達。甘いお菓子もあるようだ。準備に時間がかかりそうだが、それが目の前にある。


「気をハリスギると肩コリまース。ほどほどぉ~にリラ~ックス、リラ~ックス。大事でース。」


「かたこり?」


ディオやアンドレは肩こりを知らなかった。医療関係のみ特化して勉強していたら知っていたかも知れないが風習や文化の違いなど大まかに習う機会はあれど、流行り病でもなんでもない一般的な生活習慣病までは知らなかった。


「肩がばっきばきになるんだそうです」


「ばっきばき?」


「ばっキ!バッき!デス!」


アンドレとディオの想像では、肩が本当に石のように濃灰色(のうかいしょく)に変わり肩だけひび割れているという、呪いのような魔法にでもかかったような図が思い浮かんでいたのだが、特に誰も口にしなかったので想像上のコトについて間違いを正す人も居なかった。


「それは怖いな」


「俺も怖いです。なので休憩しましょう」


2人とも真面目だった。


それぞれに好きな紅茶の葉と濃さを指定すればトリアンゴロが手際よくお茶を入れていく。2人とも目の前のサンドイッチの事も考慮して、葉も濃さもあっさりしてすっきりしたタイプの葉を選んだ。アンドレはパンにはミルク派なのでミルク多め、ディオは疲れが取れやすいと聞いたので少しだけ甘めにしてもらった。


「うまい!」


「スゴいな。とても美味しいよ。ありがとう。」


「お礼だなんて、イタミいりマ~ス」


普通お茶入れはメイドの(たしな)み。料理全般が出来る料理長という役職についていたとしても、他の役職が得意とする所までを出来る料理人はそうそう居なかった。そうトリアンゴロはなんでもそつなくこなす料理長だったのだ。


「いつもの葉だよな?な?えっと、あれリネアはどこ行った」


よく見るとトリアンゴロの後ろにメイドが2人ほど控えていたがリネアは居なかった。


「oh、スミマせンお伝え遅れました。先ほどプントさんにお呼ばれしていま~した。」


「ああ、それならさっきプントに私が頼んだ事をやってもらっているのだと思うよ」


「何をさせているのですか?」


「新人教育。今後アンドレ、ひいては、私の為にも。遅いかも知れないけど気づいた時にやっておかないとね」


「なるほど!さすがお兄様です!」


実は新人教育という名のリネアと同じような暗殺者もものともしない精鋭メイドを育てようという新たな試みが始まっていたのだがアンドレは知るよしもなかった。


(アンドレやリネアに来た奴らの黒幕は、私達の身内だ。戻るまで時間はないが対策を少しでも講じないとね。リネアの身辺を調べ雇用をわざわざ薦めてくれたお兄様達に帰ったら会わなくては。敵か味方か・・・。)


「お兄様、モナの話をしてもいいですか」


「ふふ、毎日毎日飽きないね。」


「あんな奴初めてで!」


「こらこら、小さくてもレディ。その呼称は頂けないよ?」


「も、申し訳ありません。えっと、彼女のようなヒトは初めて出会いました!」


「ふむふむ」


紅茶の美味しさも相まってディオの笑顔がとても晴れやかだった。









「よくお越し下さいましたん。」


到着してすぐぽん吉とポンポコ丸がキジンさんを呼んで戻ってきた。テンクウちゃんの頭にケセランパサランちゃんが乗っかっている。


「キジンさんこんにちは~」


「モナ連れて来たよ」


「助かりましたわん」


「キジンさんこんにちは!急に呼ばれて飛んで来ました(←物理)。セイリューちゃんこっちこっち」


「きゅんきゅん?」


リンゴの匂いで周りをキョロキョロしていたセイリューをモナは呼んだ。


「きゅん!」


「あっ!」


先ほどキジンさんが出てきた小屋からセイリューちゃんよりもだいぶ大きな個体が2体出てきた。セイリューちゃんにそっくり。こちらをジッと見て動かない。セイリューちゃんは私とその2体を交互に見て首をひねって困惑した声を私に向けてきた。


「きゅーーーーん?」


行ってきてもいい?とでも言うようにこちらの反応を求めている。


「大丈夫だよ。行っておいで。」


それを聞くやいなや、セイリューちゃんの足はそちらに進んだ。セイリューちゃんと2体が顔を会わせるとお互いに身体の匂いを嗅ぎだした。キジンさんに聞いてみた。


「あれってちゃんと親子か確認してるんでしょ?」


「それもありますんが、怪我や病気の匂いがしないか、ストレスがかかる環境にいたかどうか、お腹の減り具合、など調べていますん」


ほぼ健康診断だった。


「きゅん!」


「「キュン」」


「きゅん、きゅんきゅん」


「キューン」


「キュー・・ン」


「きゅーんキューン」


全く何を喋っているのか皆無だけれど、なんだかほんわかした雰囲気だけは伝わった。


「おんや、コウチンは結局居なかったということでよろしいでしょうか」


「ポコポン!」


「ぽっぽん!」


「そうだよ~」


ケセランパサランちゃんがポヨポヨとテンクウちゃんの頭の上で跳ねた。


「コウチンって、えっまさか、オオカミのことだったの!?」


「あれ、ぼく、わたし、説明したよ~」


「・・・ごめん、聞いたけど理解まで追い付かなかった」


「モナがんば!」


何故か慰められている不思議。解せん。ということは謎だったタイモもセイリューちゃん絡みなのかな?



飛んで来た(物理)はせっかくだからグリフォンにライドン!したいよなぁ、普通なら。と思いを馳せた作者です。不死鳥の足に獲物感覚で連れられる(高速移動)のは恐怖だと私も思う。




リネアさん実はメイド内では性格もそこそこクールで通っていてあまり人付き合い良い方とは言えなかったんですが(メイドとしては致命的)、前に回り回ってアンドレの命を助けたという功績が噂になったんで周りのメイド達に認められて、今回の精鋭メイドの話が進むことになりました。


・・・あれ、これって閑話で書いた方がいい?


ま、いっか??。






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