悪役令嬢、兄に感心される
「さて、私はとりあえず、支出の大半を占める村長への賄賂のカットをしたいと思っておりますが、お兄様は何かご意見がありますか?」
一応エリーは兄に意見を聞いておく。
今まで、父親の指示に従ってずっと黙っていたので、流石にかわいそうだと思ったのだ。
「え?あっ。僕かい?僕は……特に、ないかな。僕にはよく分からないや」
そう言って、バリアルは寂しげに笑う。
だが、すぐに首を振って、笑みを浮かべた。
「でも、エリーは凄いね。僕には分からないことも、エリーには分かるんだ」
「いや。私も、たいしたことは分かりませんわ。とりあえず支出が大きな所を見ただけですし」
「いや。それでもだよ。僕には、まず何を見れば良いのかすら分からないからさ」
そう言うバリアルの言葉には、エリーへの尊敬が感じられる。
バリアルとしては、エリーは将来守るべき対象だった。
だが、現在、その思いが揺らぎ始めている。
もしかしたら、エリーは自分が守る必要など無いのでは、と思ったからだ。
バリアルから見た限り、エリーは自分よりも頭が良いし、貴族社会でも問題なく生きていけるはず。
だから、エリーをどの場面で守れるのか。
それが、バリアルには分からなくなったのだ。




