悪役令嬢、知っているシナリオ
さて、まずは加護について説明しよう。
この世界で加護とは、神から受ける才能のようなモノである。
もちろん加護を持つモノはごく少数で、加護を得るにはかなりの努力や、複雑な手順が必要とされる。
そして通常、加護は1人に1個しか持てない。
だが、その1人1個という制約を壊すことができるのが、称号の『力の器』だ。
この称号は、国王の冠を分解したモノのみ、得ることができる。
さて、そして今回手に入れた『光の加護』なのだが、こちらは王冠を分解することで得られるわけではない。
王冠の中に入っていた、小さな紙に触れることで獲得できるのだ。
エリーの幼い手には、シッカリと四角い紙が握られている。
だが、今回光の加護を得たのはエリーだけではない。
「寄るな!」
国王が声を張り上げ、エリーの母親や、エリーを引き剥がそうと動いた兵士たちを止める。
彼も気がついたのだ。
この王冠の関係で、自分が光の加護を得たことを。
もちろん、国王としては加護を得る方法は秘匿しておきたい。
奪われたら大変だから当然である。
「エリーよ。よくやった」
そう言って、国王はエリーを撫でた。
そして、エリーを母親に預け、人払いをさせ、国の重鎮たちを集めた。