悪役令嬢、嫌だ嫌だ!
「エ、エリー。ここは、はい。お受けします。って言う所よ」
母親が急いでエリーに注意する。
が、それでもエリーは首を縦に振らなかった。
「王よ。王子の婚姻は、他国と我が国の繋がりを作る大切なモノ。アロークス殿下には他国の貴族と婚姻をし、関係を安定させる役割があるはずです。私が婚約したばかりに、他国との関係が悪化したとなっては困ります」
エリーの言葉に、貴族がまたもざわめく。
この言葉が、子供から出てくるとは誰も予想できないし、驚くのも当然だろう。
怒りを示していた王も、面食らったような顔をしている。
そして、しばらくして正気に戻ると、
「ふ、ふははは!素晴らしいな。そこまで幼い身で考えるのか。優秀。優秀すぎるぞ。ははははっ!!」
どうやら怒りは収まり、エリーは許されたようである。
だが、エリーは安心できなかった。
ーー怖っ!?公爵の目線怖っ!
父親である公爵の目が笑っていなかったのである。
エリーと王子の婚約は、公爵家にとってとてつもない利益となる。
そのため、公爵という立場からはエリーを許せない。
そんな父親の心のうちを察してエリーは、後で怒られないような手を打つことにした。
父親に説教をされたことはないが、怒れば怖いのはなんとなく理解できる。
保身第一。
「エリーよ。ただ、褒美を何も与えないわけには行かない。何か欲しいものはないのか?」




