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閑話、四肢

誤字報告ありがとうございます。

とある日。

エリーに慈悲の加護について伝えた悪魔は、クラウンの拠点へとやってきていた。


「そうか」


「君も来たんだね」


その悪魔の前に座るのは、『左足』と『左腕』。

2人とも、悪魔と仲良く話している。


その様子は、まるで昔からの知り合い同士のよう。

悪魔は、自分たちを見張っているのであろう数人のクラウンの視線を感じながらも、話を展開した。


「ええ。私も来たわ。別に、『脳』に絶対の忠誠を誓ってたわけでもないし」


「そうなのか。まあ、『右腕』は利益でつながってるようには見えたし、そういうことなのか?」


『右腕』と悪魔は呼ばれた。

そう。この悪魔こそ、火傷蜥蜴の幹部の1人、『右腕』だったのだ。


「これで、四肢の内3人はクラウンに入った訳か」


「そうなるな。まあ、クラウンとしては大して気にしてなさそうだが」


「ああ。僕たちはそこまで脅威ではないみたいだしね。……コレで『右足』もいれば、四肢の完成だったんだけど。まあ、思い入れもないし、いなくてもいいか」


『左足』と『左腕』の左半身組がしゃべる。

それを聞いて、『右腕』は悪魔らしい笑みを浮かべた。


「いやぁ。クラウンに四肢はいるわよ」


「え?どういう意味だ?」


左半身組は首をかしげる。

それを面白そうに眺めながら、『右腕』は拠点にいるクラウンの1人に声をかけた。


「ねぇ。ファースト。今話せるかしら?」


「……はぁ。仕方ないねぇ。私も暇じゃないのだけど」


ファーストはそう言いながらも、『右腕』の隣に座った。

左半身組は更に首をかしげる。


「え?なんでファーストさんが?」


「ん?ファーストは、先々代の『右足』よ」


「「「え!?」」」


この『右腕』の発言に驚いたのは、左半身組だけではない。

クラウンのモノたちもそんなこと聞いたことがなかったので、目を見開いて驚いている。


「……ん?ちょっと待て。先々代の『右足』って、まさか」


「まさか、1人で村を1つ滅ぼしたって言われてる、『虐殺の魔女』!???」


周りから向けられる視線の数々に、ファーストは苦笑した。

やれやれと言いたげに1度肩をすくめ、頷く。


「その通りだよ。流石にあれだけやって目を付けられてねぇ。追っ手からここまで逃げて来たのさ」


「そ、そうだったのか。てっきり暗殺されていたのかと…」


「まあ。こんな森に閉じこもっていたんだから、死んでるのと同じさ」


ファーストは事もなげに言う。

だが、拠点は想像以上にファーストの過去の話で盛り上がった。


 ーー私の罪が消えたわけじゃないけど、クラウン様が示してくれた道で、私が殺した以上の命を救ってみせるさ。

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