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悪役令嬢、国外へ出発
ビュォォォォ。
潮風がエリーの体の熱を奪う。
「ああ。良い風ですわぁ」
「たまにはこんなのも良いねぇ」
エリーと兄のバリアルは、船首で手すりにもたれかかり、落ちる夕日を眺めていた。
出発したのは早朝だったが、まだ島が見えてくる様子はない。
「アーニ王国。どんな国なんでしょうか」
その隣で同じように景色を眺めていた弟のアシルドが、期待のこもった声をこぼす。
エリーは、自分の知っている知識を話してみることにした。
「アーニ王国は島国で、私たちの住むイモート王国より暖かいという話でしわ」
エリーたちの住む国、イモート王国。
もしかしたら初出しかも知れない王国の名前である。
「あっ!あれ!!」
アシルドが大声を上げ、指を指した。
その先には、豆粒のようなサイズではあるが、
「島だぁ!!」




