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悪役令嬢、顔を覚える
「エリー。お客様が来たわよ」
そう言って、エリーの母は、彼女を抱き上げる。
エリーは気合いを入れた。
赤子に会いに来るのは、エリーの家と仲の良いモノたちなのである。
つまり、重要な繋がりであると言うこと。
ーー気合いを入れて顔と名前を覚えましょう。
名前と顔、相手が貴族の場合は、爵位も覚えることができれば完璧である。
「初めまして。エリー様。私、ザック・アントル・ヘバールでございます。以後お見知りおきを」
赤子のエリーに深々とお辞儀をする、口元にひげを生やした中年男性。
ザックという名の彼は、エリーの家と仲の良い男爵である。
「フフフッ。ザック。一応姪なのよ。そんなにかしこまらなくても良いのではないかしら?」
おかしそうにエリーの母親が笑う。
彼女が言うとおり、彼にとってエリーは姪なのだ。
ザックはエリーの母の弟である。
姉弟仲も良く、お互いの家で共同して事業を行ったりするのだ。
ついでに、エリーの家の爵位を伝えておこう。
ハアピ家。公爵家である。
そして、公爵家の娘であるエリーは、
公爵令嬢である。