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悪役令嬢、逃げ切れ、ない!?
「よし!風上のヤツは剥がせたぞ!」
喜びのこもった声を襲撃者たちは上げる。
風上を押さえていた船を移動させることに成功したのだ。
これによって、盗賊たちは船に追いつけるようになる。
はずだった。
ポンッ!
軽い音が響く
その音だけで、襲撃者たちは背筋が凍った。
何の指示も出ないが、すぐに回避体勢に移る。
ヒュルヒュルと間抜けな音を立てながら落ちる光の球は、船の後ろの海水へと落ちた。
爆発音と共に、海水が波打つ。
ただ、襲撃者たちの船は横や後ろに避けていたので、たいした被害はない。
少し横にいた船の向きが変わり、後ろにいた船が交代させられただけである。
まあ、被害が出ていないだけで、船の距離は離されてしまったわけだが。
光の球を打ち出した船は、爆発の衝撃によって加速したのだ。
「くそぉ!」
襲撃者の誰もが、失敗したと思った。
だが、その目には希望の光が映る。
「あれは!まだ来てなかった奴らだ!!」




