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悪役令嬢、頑張って知らないフリ
「さて、アシルド。自己紹介しなさい」
父親が優しく声をかける。
アシルドは緊張したような顔をして背筋を整える。
「はい!アシルドといいます。これからよろしくお願いしましゅ」
最後に噛んだ。
アシルドの顔が一気に赤くなる。
「くくっ」
「ふふっ」
家族たちから小さく笑い声が漏れる。
エリーは優しく微笑みながら眺めていたが、知らないフリをしようと知っていることを質問する。
「お父様。養子をとられましたの?」
「ふふっ。エリー。違うぞ。アシルドは、エリーともバリアルと血のつながった兄弟だ」
そんなことは知っている。
それでも、エリーは頑張って不思議そうな顔をした。
そんなエリーに、父親は説明をした。
「アシルドは病弱でな。生まれたときはかなり衰弱していて、死ぬのではないかと思われていたのだ。そのため、兄弟を失うことで衝撃を与えぬようエリーたちには伝えず、ずっと療養を続けてきたのさ」




