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悪役令嬢、王国とは違って
「……おぉ。これが、聖域か」
クレアは聖域と踏み入れる。
いや、地面に足はつかず、宙に浮いて移動している。
彼女も警戒はしていたが、一瞬それが途切れるほどに聖域という場所は美しかった。
「聖域という名には、ふさわしいか」
名前に劣らない光景。
いや、名前に勝るほどの光景。
クレアは立ち止まって眺めていたくなる気持ちを抑えながら、周囲を見渡す。
「転移陣の場所は、もう少し先か」
見える範囲にそれらしきモノは無い。
見えるものは、美しい物だけ。
生き物とも建物とも言えない彼女の周囲にあるものは、
「我に反応はしないか」
意思があるのかもしれないと思うような物なのだが、動く気配はない。
命ガアルのかないのかすら、クレアには見抜けなかった。
「……ふっ。イモート王国とは大違いだな」




