悪役令嬢、事実を言うわけにはいかない
「最近、人事異動が非常に激しくてな。私も対処に困っているのだ。エリーよ。原因は分かるか?」
父親に尋ねられ、エリーは悩んだ。
難しい顔をしているエリーを、父親は黙って眺めている。
見た目は原因を考えているよう。
だが、
ーーこれ、どう言えばいいのかしら?本当のことを言うわけには勿論いかないし。だからといって、適当な嘘はつけないわ。どんな嘘なら良いのかしら?
どんな嘘をつくかで困っていた。
というか、父親が火傷蜥蜴のことを知っている可能性も考えられる。
そのため、下手なことを言ってエリーも火傷蜥蜴を知っていることを父親に察知されるわけにもいかない。
「原因は分かりません。ただ、人事異動は教会でも激しく行われているようですので、かなり中枢の何かが変わったと考えられますわ」
こういう程度にとどめておく。
父親も少し納得したような顔になったので、エリーはこれでいいだろうと判断した。
「中枢の何か、か。新しく情報がつかめたら、是非とも私に教えて欲しい」
父親がそう頼んでくる。
断れる雰囲気では無かったので、エリーは大人しく頷くしかなかった。
「わかりましたわ。お父様」




