悪役令嬢、気づかれない指示
「それじゃあ、あの件。考えておいて下さいね」
「あ、ああ。考えて、おくよ」
エリーの言葉に、イルデは歯切れ悪く返事をする。
難しい表情のまま、イルデは教会のモノたちと共に帰って行った。
「お疲れ様ですエリー様。もう少しゆっくりした方が疲れないと思われますが、残念ながらお時間となってしまいました」
「あら。結構話し込んでしまったんですわね。お父様たちを心配させるわけにも行きませんし、急ぎましょうか」
専属メイドのメアリーがエリーに時間が無いことを告げ、エリーは急いで立ち上がる。
そのまま、メアリーと共に部屋を出て行った。
扉から出たところで、メアリーは視界に何か映ったような気がして振り返る。
だが、そこには、誰もいない部屋が映っていた。
ーーあれ?エリー様が座ってた椅子に、紙が置いてあった気がするんだけど。
気のせいだったのだと思って、メアリーはすぐに視線を帰り道に戻す。
メアリーは、エリーたちを見つめている少女に気づくことはなかった。
その少女の頭には獣のような耳が生えており、手には小さな紙が握られている。
「教会を調べるように、か。私が入るとしましょう」
そう言って、少女は姿を消した。




