悪役令嬢、洗脳を続ける
「だが、じゃあ、僕はどうすれば」
アロークスは困惑した表情になる。
今まで自分が信じてきたモノが怪しくなってきてしまい、何を信じれば良いのか分からなくなったのだ。
「別に、正義など目指す必要は無いのですわ。アロークスは、アロークスにとって大事なモノだけを守れば良いじゃないですの」
「僕の大事なモノ?……それだけで、いいのかな?」
アロークスは不安そうな顔をする。
嫌でも王族という身分で生まれれば、全ての国民に目を向けるように教育される。
だからこそ、自分の大切なモノだけを見るということができなくなるのだ。
どうしても、国民全員と天秤にかけてしまい、そちらを選ばざるを得なくなってしまう。
まあ、国民全員をかけても勝ってしまう例外として、ゲームの主人公という存在がいるのだが、あの存在は周りの知能を劇的に下げるので、エリーは頭から除外した。
「まあ、ロメルはそんなことをしてはいけませんわよ。王はそんなこと許されませんから」
「……分かっている」
途中からエリーたちの会話を盗み聞きしていた第1王子のロメルが、不満そうに呟く。
ロメルは、延々と周囲から王とは何かを説かれ続けてきたので、少しその辺りが煩わしくなっている節がある。
ーーコレをこじらせて、ゲームの時みたいなわがままな性格になったのかしら?




