悪役令嬢、洗脳する
「あら?アロークスは、彼を悪だと思いますの?」
エリーはアロークスに尋ねてみる。
まずは現状把握だ。
「うん?当たり前じゃないか。あれが正義な訳がないでしょ」
ーーこれはいける!
エリーは、アロークスの思考を誘導できると確信した。
「アロークス。その考え方はどうかと思いますわ。彼にとっては、彼こそが正義なのですから」
「はぇ?どういうこと?」
アロークスは首をかしげる。
隙を出したアロークスに、エリーはたたみ掛ける。
「正義とは何かは人によって違いますわ。彼にとっては、その辺りの貴族や平民より自分が上であるということが、正義でしたの。そして、アロークスにとっては、全ての民が平等であることが正義であると。違います?」
「い、いや。その通りだけど」
「正義の違いは、考え方の違いですわ。正義とは人によって変化するモノですの。私だって、発展した漁村のモノたちにとっては正義かも知れませんが、私の計画に参加できなかった貴族たちにとっては悪なのですから」
エリーがそう言って小さく笑うと、アロークスは難しい顔をした。
ーー少し難しかったかしら?まあ、まだ自分中心で世界がまわっているように考えてしまう年齢だものね。




