悪役令嬢、知らないことは沢山ある
《加護『闇の加護』を獲得しました》
「これが、闇の加護」
元火傷蜥蜴の幹部であり、現在はクラウンの幹部であるファーストは複雑な感情のこもった声を、漏らした。
少し前にクラウンの仲間がやって来て、エリーが開発した闇の加護の取得方法が伝えられたのだ。
加護は無事に取得でき、ファーストは、この方法を発見したエリーに尊敬の念を抱いた。
ーーこれで、この老体もまだまだ生き残れるねぇ。ただ、
ファーストは、顔を暗くする。
ーーただ、沢山の罪無き命を奪った私が、生きていて良いのかねぇ。
それは、ファーストの昔からの仲間であった。
火傷蜥蜴の追っ手から隠れるため、魔物の住む森の奥に家を作ったときも、何度も死にたいと思った。
だが、それと同時に、罪を償わずに死ぬのは、逃げているだけなのかも知れないとも思った。
そんな思いを何十年も抱き続け、自分の罪の記憶すら忘れそうなときに出会ったのが、現在の上司に当たるエリーだった。
エリーは、自分の罪滅ぼしの手伝いをしてくれた(エリーにその気は無かった)。
そして、エリーと共に闇の世界を生きることは楽しいと思えた。
それでも、まだファーストの心罪の意識は消えない。
ーー私は、本当に……
「あっ!グラマ様!新たな患者様がいらっしゃいました!」
「はいはい。すぐ行くよぉ」




