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悪役令嬢、兄に勝利を譲る
「それでは、今日はお二人に手合わせをして頂きたいと思います」
ヒューズールからの稽古の2日目。
突然、エリーとバリアルの手合わせが決まった。
「痛かったらごめんね」
バリアルが、心配そうな目でエリーを見る。
エリーは不安そうな顔をしておき、普通の女の子を装った。
「始め!」
ヒューズールが、手を振り下ろす。
それと同時に、2人の戦いが始まった。
まず、エリーは手加減をするため(一撃必殺が発動しないようにするため)、先手を打っておくことにした。
よろよろとした足取りで近づき、ゆっくりとした上段からの振り下ろしを行う。
「ほっ!」
バリアルが体を横に動かして攻撃を避け、それと同時に剣を横になぐ。
剣はエリーの脚に当たりそうだったが、エリーは必死そうに剣で防ぐ。
カツンッ!
軽い音で、木剣が打ち合わさった。
ただ、エリーはその衝撃でよろけ、そこにバリアルが追撃を行う。
「やめ!バリアル様の勝ち!」
こうして、エリーの積み重なる手加減の末、バリアルは勝利を手にした。




