11 貴族の二男三男
貴族は、領地からの税金や王家からの支給金と言う限られた収入で生活をしている。
それ故に、予算的に家族や家臣、使用人や私兵を安易に増やす事はできない。
基本的に嫡男である長男が家督と全ての権利を受け継ぎ、二男三男は長男に万が一の事があった時の為に産むだけの予備でしかない。
だがそれも、嫡男が更なる後継者をもうけた段階で無用の長物となってしまう。
この様に嫡男と成れなかった者は、他領の一人娘に婿養子として迎えられれば良いが、その他の成れの果ては、自領や他領の無位の家臣や兵士だったり、平民落ちだったりと、貴族の権利を剥奪されて、嫡男とは雲泥の差となってしまう。
これを無くす為に貴族が分家などを作ってしまうと、税収などの収益を分けなくてはならず、個々の生活水準を下げなくてはならなくなる。
それは、見栄やプライドで貴族間の社会的立場が変わる者にとっては、死活問題となるのだ。
他の問題として、金の無い領主は家臣や兵を養えず、それでは領民を支配する事ができなくなる。
領民を支配する事ができなければ、税収を取り立てる事もままならなくなり、金が無くなると言う悪循環を生む。
こうして、無闇に権力や財産の分割が行われない貴族の家では、多くの家臣が長男につこうとする。
だが、それに食い込めなかった家臣は二男以降に付き、支配権を欲して嫡男などの暗殺を画策したりするのだ。
例え嫡男と仲の良い兄弟でも、周囲の家臣は関係なく陰謀を巡らすものだ。
この様に、陰謀渦巻く貴族の家庭内では、例え兄弟親戚であっても気を許してはならない。
貴族の兄弟達は個々の使用人や側仕え、護衛や家臣を、親から支給された各々の生活費から雇い入れ、身を守らなくてはならなくなっている。
事故や病死は勿論、常に御家騒動による暗殺や誘拐などの危機にさらされている貴族の子息令嬢は、トイレや夫婦の営みさえ側仕えがなどが必要となり、一人で行動するなどもっての他なのだ。
仮に貴族のお家内で陰謀が行われた場合は、全て事故死や病死、行方不明として処理される。
跡継ぎをめぐっての殺し合い、末弟ゆえの誘拐の放置などが王家に知れれは、貴族としての能力や品格を疑われ、御家断絶を言い渡される可能性すらあるからだ。
一般的に貴族は、華やかな生活と権利が持て囃されるが、実際には義務と自衛に忙しい事の方が多い様である。
さて、特に御家騒動を起こすでもなく、巻き込まれるでもなく、他領に婿養子にも行けず、兵士と言う貴族の次に権力を持つ者にも成らなかった二男三男は平民落ちする訳だが、これ等の者を婿養子にしたがる者に、商人が居る。
貴族には、御用商人と言う専属の取り引き商人が居るが、その付き合いを貴族側から切られない為に、商人の親族の娘の婿養子にと、貴族の二男三男を迎い入れるのだ。
親としては、例え嫡男になれなくとも、親子関係まで切って邪険に扱うわけにもいかないからだ。
貴族と違い商人は、親族が増える事による損失はあまり無く、むしろ労働力や店舗を増やす責任者として登用できるメリットがある。




