第12話 ライジングサン
アジトでギャングの下っ端達を迎え撃つドライ、リップ、レオン。必死の攻防が続く中、ある人物らに応援要請をした。
一方、逃げるギャングのリーダーを追うナイト、ロスタ。追い詰めた先に現れた二台の車。逃げられようとした矢先、リーダーは車に轢き飛ばされてしまう。
ギャングの仲間と思われる白い車。リーダーを轢き、減速せず空きテナントへと突っ込み、ようやく停止した。
一方、赤い車からは男女二人が降りて来る。その内の一人、小柄な女性がよろよろとした足取りで歩いて来る。
「……あんた誰だ?」
「う〜ん。レオン、こんな時間に起こすなんて酷いや……」
「レオンって、あんた」
独り言のように呟く女性。灰色のパーカーに黒のデーパードパンツと、ラフな格好で現れる。
「あ、もしかして君が新人の子?」
「おう」
「僕はシープ。レオンの仲間だよ。いや……仲間って言うより部下かな? 僕と、そこの黒くてヤバそうな人と……もう一人居るんだけどね。その子は別のとこに行ったって」
シープと名乗る女性は、大きな欠伸をしながら話す。
「ああ、それよりさ!さっきのアレ、何したんだ?」
「アレはね……えっと。僕が眠らせたんだよ。僕、相手を眠らせる事出来るんだよ〜。【催眠】って言うらしいよ」
「らしい……って」
「別にどっちでもいい気がするよね〜。意味大体同じだしさ。あ、そうだ。僕も君と同じか。僕もヒーローだよぅ」
「ヒーロー……そうか、ありがとうな!」
「ふああ……もう眠くて眠くて動きたくない……助けて新人君……」
「うおお、おい!」
マイペースな彼女の言動に終始振り回されるロスタ。その場に座り込み、目を閉じるシープ。
「せめて歩けよ、な」
その一声ですぐ立ち上がる彼女だったが、ロスタの背に立った途端、すぐに彼の背中へともたれかかってしまう。
「僕、魔法が強すぎてさぁ。僕まで眠くなっちゃうんだよ……」
「そりゃ大変……ってせめて」
歩け、そう言いかけた時だった。ロスタは自信の背中に柔らかい感触を感じた。
(なんか柔らかいのが当たってる……もしかして)
「ううん……っ」
眠気を抑えられないシープは、彼の背中に密着していく。彼女の女性的な肉体が触れる。
(……乳だ!乳の感触!! 凄え……多分だけどめっちゃデケえ!!)
「ししし、仕方ねえなぁ? 今日だけな! 別に毎日でもいいけど!」
「じゃあ毎日でお願い……ううっ」
ロスタは矛盾した言葉を垂れ流しつつ、シープを背に担いで歩いた。
一方、撥ねられて蹲るリーダーの元へもう一人の男が現れる。屈強な肉体を持ち、黒いコートを羽織っている男。傷が入った目元と鋭い眼光、高い身長が合わさり、凶暴そうな雰囲気を出している。
「おいナイトッ!てめえ、増援と言われて来て見りゃ、こんなクソ雑魚相手に苦戦してたのかよ!!」
「『ナックル』……仕方ないでしょ。ただ殺せばいい任務じゃなかったんだから」
「なら逃げられる前にとっととぶっ殺せばいいだろ。こうやって、なあ!」
撥ねられたリーダーの腕を掴み、強引に引き摺って来る。顔が鼻血塗れになり、前歯の殆どが欠けたリーダー。その頭を、ナックルは慈悲もなく踏みつける。
「もうこいつはどうでもいいな、死ねッ!!」
足元に真紅の光が宿る。それは彼の足を枝状に伸びるように光っていき、禍々しいオーラを放つ。
「あああ……ああっ」
男の悲鳴も虚しく、その顔面がゴリゴリと潰れていき……グチャッ、と生々しい音を立てる。顔が惨たらしく変形、脳漿を撒き散らす。もはや男の首は原型を留めず、ただの肉塊と化した。
「……ッ」
男の猛然たる表情が、一瞬だけ緩まったようだ。しかしすぐに彼の調子は戻る。
「【強化】だっけ。使い方エグいね、本当」
「ほっとけよ。で、どこにあんだよ。その薬物ってのは」
「ここよ」
ナイトはジュラルミンケースを拾い、彼に見せる。
「ああン……?」
「お、また誰か増えてんな?」
シープを担いだロスタが到着する。
「てめえが新人とかいうクソか。ま、死なねえようにやれや」
「そうか、宜しくなあ、先輩」
「ケッ。てめえと馴れ合うつもりはねえ、離れろ血ィ臭え」
「何だよ……」
「はいはい。開けるわよ、ケース」
険悪な二人を宥め、ケースを開ける二人。そこには確かに白い粉末状の薬物が入っていた。
「ふうん、見た目は普通のドラッグじゃん……ってこれ!?」
一方、ドライ達は更に増えた増援達と交戦する。
「ザン」
リップは豪快に鉈を振り回し、四人同時に斬撃を喰らわせる。鮮血が四方八方に飛び散っていく。しかし、その中に軽傷だった者が居たようだ。
「てめえはダメだ……死ね女!」
軽傷だった下っ端の一人は、レオンに向かって突進する。その細い肩目掛けて腕を伸ばした。ガッチリと腕を掴んだかと思いきや、その手は空を切っている。
「うおりゃああっ!」
レオンが男の膝くらいの高さで屈んでいる。下っ端は彼女が立位した際、その身長が明らかに縮んでいる事に気が付いた。声質も心做しか幼くなっているようだ。
「何っ!?」
彼女は壁に蹴りを入れ、大きく飛び上がってから下っ端の顔へとへばりつく。体型に合わせて小さくなったナイフを、彼の鼻へと差し込む。鼻血がぽたぽたと垂れる中、彼女は本来の肉体へと戻る。
「はあッ!」
肉体を戻した後、回し蹴りを喰らわせる。ヒットする一歩手前、その足は成人女性のものから、屈強な男の軍人を思わせる筋肉質なものへと変容。猛烈な蹴りが、男の顔面へ直撃。壁にもたれ掛かる男に、さらに蹴りを入れ、気絶させた。
「やるな」
「このくらいはね」
ドライは彼女の実力を賛辞しつつ、下っ端の足を光鞭で引っ張り、その場で転倒させる。その身体を引き摺りつつ、靴で鼻を思い切り踏み付けた。
「やった?」
「くっ、足音が止まん!」
「限界が近付いている。退避を提案する」
「……クッ、止むを得んか」
退避命令を出そうとした途端、下っ端達が流れ込んでいく。しかし、攻める目的で流れたのではなく、強引に押し流されたようだ。
彼等は、砂と泥に塗れている。死んでこそいないが、まともに身動きが取れない。
「『ソイル』。来てたんだね」
「はい。彼等は封じ込めました。止めは」
ソイルと呼ばれた女性。多数のポケットが付いた、ベージュのジャケットとカーゴパンツを着た女性。桑色の長い髪を靡かせつつ、冷静な態度で指示を待つ。
「こいつらを砂で封じておけ。あとは警察に任せておけ」
「ま、妥当かな。これ以上戦うのも厳しいし」
「承知しました」
手から砂を生成するソイル。彼らの脱出を許さないよう、徹底的に固める。
「【砂土】。便利な能力だね」
「汎用性はあるな……ん?」
ドライの携帯に着信が届く。ロスタからの着信だったが、やけに慌ただしい。
「どうした」
「薬が……薬が消えてやがる!?」
「冗談は止せ。何があった」
「違うんだよ、本当に薬が消えてんだ」
「本当ですドライさん。薬が段々と消滅していってます」
「何……!?」
「ああ、ケース開けてみたら、薬が光ってよ、消えてくんだ!」
ケースの中にあったのは、違法のハーブと錠剤、そして例の薬物こと白い粉末。その小袋に入ったモノが、小さな緑の光を出しつつ消滅していく。
「冗談じゃねえぞコレぁ」
「消えてる〜。証拠撮るねえ」
「なんてこった……!?」
後に合流した二人も、同様の事実を述べている。ドライは珍しく動揺しているようだ。
「とりあえず持ち帰ろ、その薬と報告をね。こんなとこに放置してたら……ねえ」
「……そうだな。全員撤退。ケースを持ち帰れ」
レオンに諭され、ドライは落ち着きを取り戻す。ギャングを追った四人のヒーロー達は、その場から離れて行く。
「チッ、収穫無しかよ」
「消える薬物……ね」
「ねむうい」
「俺も眠くなってきたぜ……」
皆が思い思いに心象を語る中、朝日は昇っていくのだった。
イカれた登場人物紹介⑨ナックル
口も悪いし態度も悪い、おっかないお兄さんだ!
己の足と拳で、敵をスプラッター映画みたいな光景にする!
今日も今日とてすれ違う人を怖がらせる!
ロスタとの相性は最悪だけど、なんやかんやで似た者同士だ!




