第11話 バイクと魔法
ある早朝。謎の薬物の調査の為、地方のギャング「シュバルツ」のアジトへと攻め込んだヒーロー達。薬を追う者、構成員を殲滅させる者に別れ、戦いを続けていた。
「爆薬……念の為と思っていたが持っていた甲斐があった」
「あー……天井爆破してから魔法で解除って事でいいのかな?」
「そうだ」
「あのギャング……よく押さえ込んだな。向こう戦闘慣れしている筈だ」
後方を見ると、リップの元へ攻め込んだ男が泡を吹いて倒れている。腕と膝の関節が捻じ曲げられ、仮に起き上がっても戦闘は到底不可能な状態だ。
「あんな雑魚……大したことは無い」
「ふふ。流石」
リップは床に転がった死体を持ち上げ、入口へと放り投げる。入口をさらに封鎖していく。
「終わったかな。あいつら……」
「まだだ。足音が聞こえる」
「まだ数は多いだろう……」
「うーん、援軍呼ぼうかな」
レオンは死体を片付けつつ、軽い口調で提案する。
「……《《あいつら》》を呼ぶのか」
「そう。あっちも心配だしね。ちょっと悪いけど呼んじゃおう」
「成功確率を上げるのに越した事はない……リップ」
「私は構わん」
「決まりだね。あっちも大丈夫だといいけどな」
「止ぉまぁりぃやぁがぁれぇ!!」
バイクに跨りギャングの車を追いかけるロスタとナイト。ロスタは敵への威嚇に、小さな血の塊を形成。石ころ程度の大きさにして、車のガラスへと当てていく。小さいながら頑丈で、ボディやリアガラスにヒビをいれていく。
「聞こえてないね。あっちも必死みたい」
「畜生、ちょこまか逃げやがって」
「まずは逃さない事を第一に……あれは!」
等間隔で鳴らすサイレン。前方の踏切の遮断機が降りる。目の先には線路が広がっていた。車はそれに気付きつつも、スピードを緩めることなく、踏切を突っ切る。
「おい!遮断機降りたら止まれ、だろうが!」
「そんな事気にしてるギャングいないだろうけどね……それより、距離を取られるとまずい……ブラド」
「何だッ!」
「ジャンプ台作れる?あんたの血固める力でさ」
「どうだかな……」
「出来ないなら遠回りするわよ」
「わかんねえけど……やるしかねえ!」
「ふっ、そう来なくっちゃ」
ロスタは砲門から血液を噴射、道の先を鮮血で浸す。すると一瞬で簡易な坂、ジャンプ台が造られた。
「これでいいか?」
「上等!」
バイクは道の真ん中を突っ切り、ジャンプ台を駆け抜けて大きく跳ね上がる。同時に、バイクの下スレスレを電車が走り抜けていく。
「うお……おおおおおお!?」
飛び上がった車体はすぐに着地、その反動でバイクが縦に揺れる。
「ぐあっ!?」
「ブラド、大丈夫?」
「舌噛んだァ!」
「そう……あ、でももうすぐ追いつけそうだよ! ブラド、準備よろしく!」
「ひぁ……ああっ!」
敵の車はスピードを落とすこと無く、何度も右左折を繰り返し、視界から逃れようとする。信号を無視し、並行車の擦れ擦れを駆け抜け、轟音をかき鳴らす。
「ナイト、スピードもっと上げられるか!」
「あとちょっとだけ……もう限界!」
「後ちょっとだ……あれ?」
車との距離はあと2、3メートルまでに縮まっている。にも関わらず車のブレーキランプが点灯し、スピードを落としていく。
「あいつ遅くなってんぞ?」
「……兎に角撃とう!」
「ああ、分かったぜッ!」
車の左側へと入り込み、車道と歩道のスレスレを走る。ロスタは右腕の砲門を向け、タイヤへと向ける。
車はスピードの上がり下がりが激しく、狙いを付けるのに時間がかかっている。
「いける!?」
「ああ、そろそろ……ここだッ!」
ロスタの砲門から光が集まっていく。いよいよ砲撃を喰らわせる。そう確信した時だった。車の後部座席から、拳銃を構えた男が顔を出した。
「まずい!」
反射的に頭を下げるナイト。
「いっけぇッ!」
それに気づかず、砲弾を発射したロスタ。タイヤの直撃とほぼ同時に、乾いた発砲音が響く。
「うわッ!?」
バイクの前輪が銃弾で撃ち抜かれ、制御が効かなくなる。耳を劈くような轟音を鳴らし、スピードが下がっていく。
「……ブラド!ジャンプ台!なるべく高く!」
「あ、おう!」
咄嗟の指示に対応するロスタ。前方に巨大なジャンプ台を創造し、バイクを跳ね上げる。バイクから二人が放り出され、空中で回転する。
しかし、すぐに状況を判断したナイトは体勢を変え、着陸の姿勢を取る。
「ブラド!」
腕を掲げ、ロスタへと手を伸ばす。
「……ッ!」
どうにか状況を理解した彼は、伸ばされた手を掴もうともがき……パシッとナイトの手を握る。二人は地面へと靴底を擦り付け、ギャリギャリと音を立てて着地、数メートル引きずった後に停止した。
「ううっ、足痛ってえ……!」
「生きてるだけマシよ、それより」
当の車は右後輪がパンクしており、車体にもダメージが入り使い物にならない。ギャングと同乗者の男一人が車から脱出、徒歩で逃げて行く。
「追うぞ!」
「うん!」
逃げた先は、周囲に何もない広大な空き地。地面がコンクリートで出来ており、周囲にはコンビニの跡地と思われるテナントが置かれているのみ。
逃げるギャングの一人が拳銃を構え、何度も発砲する。二人はジグザグに走り、射線を避けながら進む。
「てめえが撃つなら……俺も!」
ロスタは右腕に力を溜める。普段のべらぼうに放たれる砲撃とは異なり、力を一点に集中し敵によく狙いを定める。
ナイトも短刀を投げる。命中はしなかったが、敵の意識を逸らす事に成功する。一方、ギャング達は弾を撃ち尽くしたのか、背を向けて逃げようとする。
「ブラド、今!」
「行くぜ……今の俺はスナイパーだッ!」
赤い砲弾が、高速で一直線に伸びていく。周囲を巻き込む事なく、敵の下半身を消し飛ばす。その反動か、ロスタは大きく仰け反る。
「へっ、名付けて……ブラドキャノン・スナイパーモードだ!」
「凄いね。そんな力あったなら使ってくれれば良かったのに」
「こんな力使っちまったらバイク諸共死ぬぜ……」
走りながらもその実力を賛辞するナイト。疲労しながらもその言葉を有難く受け取ったロスタ。敵はすぐ側に来ている。
しかし、その近くに現れたのは二台の車。
「チッ、増援かよ!」
現れた白の車と赤の車。二台とも追い詰められたリーダーに駆け寄るように近づいていく。
「逃がすかよッ……!」
白い車がスピードを落としていく。どうやらギャングの仲間のようで、白のボディ目掛けてリーダーが走る。
「お前か。おい、俺を載せろ!」
「チッ、こんなとこで……ッ」
ナイトは、赤い車の方をふと見つめ……ふふっ、と笑った。
そして、赤い車から伸ばされた、白い手。
「おやすみなさ〜い」
およそ戦場に似つかわしくない、可愛らしい女声。その手は白い車へと伸ばしているようだ。
「……えッ」
ロスタはその光景を一瞬理解出来なかった。白い車はリーダーに駆け付け減速するかと思いきや、そのままリーダーを撥ね飛ばした。ジュラルミンケースを落とし、肉体がルーフを回転しながら転がり落ちた。
ヴァンジン市裏観光案内③
ヴァンジン市には色々なモノが落ちています。
ファストフードの袋、吸い終わったタバコ、中身が不明な注射器、明らかに不審なモノが入ったビニール袋、拳銃。
上を向いて歩こう歩くのも良いですが、たまには下を向いてみるのも悪くないでしょう。
興味が湧いたら拾ってみましょう。




